【2023年最新版】テレビ業界図鑑~キー局のアニメ事業の最近の動向まとめてみた~

2023年9月21日、ビッグニュースがありました。日本テレビがスタジオジブリの株式約42.3%を取得し子会社化しました。

日テレは金曜ロードショーでジブリを放送していたりと両社の間で長い歴史があったので、今回の子会社化という結果になったそうですが、日テレ含むキー局のアニメ事業に対する投資や動きが活発だと感じています。

今回は各キー局のアニメ事業について紹介していきたいと思います。

補足ですが、『【2023年最新版】テレビ業界図鑑~業界の仕組みからキー局の動向を全部まとめてみた~』というテレビ業界やキー局の動向等をまとめたnoteを書きました。是非、ご興味のある方は読んでいただけると幸いです!

1.日本テレビ

1-スタジオジブリの子会社化

冒頭でも書きましたが、まずはスタジオジブリの子会社化がホットトピック。 議決権ベースで42.3%のジブリの株式を10月6日付で取得しました。決算短信から株式の取得原価は155億円。42.3%の取得持ち分なので、ジブリの評価額は366億円程度。

今回の子会社化の背景の1つに、両社には1985年からの歴史があります。ジブリは1985年に吉祥寺で"スタジオ開き"をします。同年、日テレはに『風の谷のナウシカ』をテレビ初放送。以降、日テレは金曜ロードショーで200回以上もジブリ作品を放送してきました。「金曜ロードショーとジブリ展」も今年やっていましたね。

1989年公開の『魔女の宅急便』に日テレは映画製作費を出資。その後もた「三鷹の森ジブリ美術館」の設⽴を⽀援するなどの歴史を歩んできました。公開前の宣伝施策をやらないことでも話題となった「君たちはどう生きるか」が今年2023年に公開されたわけですが、宮崎駿氏、鈴木敏夫氏の後継者問題に悩んでいたそうです。

これまで、スタジオジブリを受け継ぐものとしては、創業者である宮﨑駿監督の⻑男であり、自らもア ニメーション映画監督である宮崎吾朗の名前が何度か候補に上がってきました。しかし、宮崎吾朗自身 としては、「⼀人でジブリを背負うことは難しい、会社の将来については他に任せた方が良い」との考え から、それを固辞してきました。

20230921.pdf (ntv.co.jp)

宮崎吾朗氏が後継者候補に上がっていましたが、本人が固く断ったことも子会社化のもう1つの理由のようですね。

日テレのジブリ子会社が気になることの1つが、ジブリ作品の配信サービス解禁となるか?ですね。ジブリ作品は海外の配信サービスでは配信されていることもあるようですが、国内はそうではありませんでした。日テレはHuluがあるわけですが、「金曜ロードショー=ジブリ」というブランドも出来ているのでこのままということもありそうです。

2-スタジオポノック「屋根裏のラジャー」共同幹事

長編アニメ映画を手掛けるスタジオポノックという会社があります。『思い出のマーニー』『かぐや姫の物語』などのプロデューサーを務めた元ジブリの西村義明氏が立ち上げた会社です。

ポノックの初作品『メアリと魔女の花』は興行収入32.9億円と大ヒット。この作品で日テレはポノックと共同で製作幹事でしたが、メアリから6年ぶりの新作『屋根裏のラジャー』でも製作幹事を務めます

ジブリに引き続き、ポストジブリのような長編アニメ映画に挑むポノックとも関係を構築しているのは注目ですね。

3-葬送のフリーレン、金ローで初回2時間放送。31年ぶりの全国放送枠「フラアニ」新設

ジブリ作品を200回以上放送してきた金曜ロードショーですが、新しい施策を打ち出しました。週刊少年サンデー原作の『葬送のフリーレン』の初回2時間スペシャル放送です。

放送枠で新しい取り組みをする、できるというのがテレビ局の強みの1つだと実感します。『葬送のフリーレン』は金曜ロードショーで初回放送後、新枠の毎週金曜よる11時「FRIDAY ANIME NIGHT (フラアニ) 」にて放送されています。フラアニは日テレ31年ぶりの全国放送のアニメ枠の新設

かつて日テレは水曜23時台に全国同時ネットの「animo(アニモ)」枠を始めたのですが、『NANA』1作品のみで終わってしまいました。そんな日テレがなぜ今アニメの新枠を作るのでしょうか?日テレの佐藤貴博スタジオセンター長がこう語っています。

特にアニメでのグローバル展開に注力していきたいと思っています。しかし現在、数多くの配信プラットフォームが誕生し、アニメを楽しむ環境において、テレビ局の存在感は薄れつつあります。そこで、金曜ロードショーに続く金曜夜11時にアニメを放送することで、改めて『テレビで観るアニメ』の面白さを再発見していただければと思っています。

日本テレビの新アニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT」(フラアニ)が金曜よるに誕生! 10/6『葬送のフリーレン』で始動|日テレTOPICS|日本テレビ (ntv.co.jp)

アニメが世界的に盛り上がっているのは、コロナ禍における巣ごもりの際の配信サービスの成長が理由の1つとしてあるわけですが、アニメを配信サービスで観るという視聴習慣が消費者の中で形成されたわけですね。そこで存在感が薄くなったテレビ局の打開策の1つが新枠増設ということですね。

こういったインタビューを見るとジブリ作品をHuluで流す、という可能性は無いのかも?と思ったりします。

2.フジテレビ

1-bilibili社と提携、新アニメ枠「B8station」を創設

中国のbilibiliと戦略的パートナーシップ構築、そして新アニメ枠「B8station(ビーハチステーション)」を10月に創設します。

bilibiliは年間50作品のアニメーションを制作していて、今回の新枠ではbilibiliが制作・配信するアニメの日本語吹き替え版を放送。第1弾は配信開始わずか4カ月で総再生回数1.6億回を突破した『時光代理人 -LINK CLICK-』です。

また、『時光代理人 -LINK CLICK-』を日本版ドラマとして共同制作する予定です。

3.TBS

1-アニメ事業部の設立

TBSは7月の組織改編で初めてアニメ単体の事業部を設立しました。TBSの中長期経営計画の中にも「アニメへの投資を本格化させる」とありますので、そのひとつでしょう。

TBSアニメ事業部長・渡辺信也氏はインタビューにこのように答えています。

今もテレビ局の事業は地上波を中心にまわっていますが、広告収入の落ち込みから、アニメや映画、配信、海外販売、商品化といった2次利用セクションの放送外収入に期待される度合いが格段に高まってきたと感じています。アニメに注力するという会社の方針もその流れの中にあり、今年夏の組織改編で「アニメ事業部」という部署が独立し、人員や体制を強化している真っ最中です。社内の様々なセクションもアニメを力強く応援してくれています。また、Seven Arcs、マンガボックス、韓国のStudio TooNといったグループ各社で連携してアニメ事業に取り組んでいこうとしています。

TBS INNOVATION LAND | 『七つの大罪 黙示録の四騎士』放送開始!アニメ事業部長・渡辺信也に聞く、TBSがアニメ事業に本格参入する理由

これはキー局ならびにテレビ業界共通して言えそうですが、テレビの稼ぎ方が変わりつつあり、放送外収入のコンテンツビジネスで儲けようということですね。

アニメスタジオのSeven Arcs、もとはDeNAの子会社だったマンガボックスのグループ化、ネイバーウェブトゥーン・シャインパートナーズと3社でWebtoon制作会社Studio TooNを設立などアニメ事業周辺もしっかり強化しています。

2-全国28局ネットで放送するアニメ枠を新設。第1弾は『七つの大罪 黙示録の四騎士』の放送

アニメ強化の流れで、10月にスタートする「日曜ごご4時30分枠」を4年ぶりに開かれる全国ネット枠で新設。アニメ放送枠の第1弾として、『七つの大罪 黙示録の四騎士』を放送しています。

2024年1月からは、既にある「木曜よる23時56分枠」もアニメ事業部で運営していくそうです。アニメ事業部内では30タイトル以上が動いているとのことで、事業を加速させつつ、人員も増やしている様子。

3-「TBSアニメ」という新しいロゴを作成、宣伝強化

先ほど紹介した「日曜ごご4時30分枠」に合わせて、「TBSアニメ」という新しいロゴを制作しています。ロゴの5秒ムービーをアニメ本編枠の冒頭に流したりと、アニメビジネスをやっている認知を拡大させようとしています。

4.テレビ朝日

1-シリーズ初のCG制作映画「クレヨンしんちゃん」が興行収入が過去最高を記録

テレビ朝日といえば、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」など国民的アニメを制作しているシンエイ動画を子会社に持っています。そんな「クレヨンしんちゃん」で、シリーズ初となる3DCGで映画を制作しました。

新しい挑戦が功を奏したのか、観客動員190万人・興行収入23億円を突破し、「クレヨンしんちゃん」シリーズ歴代最高興行収入を達成

2-黒柳徹子原作の劇場アニメ『窓ぎわのトットちゃん』の公開

先ほど紹介したシンエイ動画がアニメ制作を担当する、黒柳徹子原作の「窓ぎわのトットちゃん」を劇場アニメが12月に公開です。

テレビ朝日開局65周年記念作品で、出資している作品です。監督はシンエイ動画で映画「ドラえもん」でも監督経験がある八鍬新之介氏。どのような結果になるのか注目です。

5.テレビ東京

1-中国・東南アジア向けIP「刀姫」

テレビ東京のプレスリリースによると、中国・東南アジアのZ世代はアニメやキャラクターになじみが深い層らしいです。そうしたアジア圏のZ世代にアプローチするのが「刀姫」

Z世代に合わせて、マンガからのアニメ化やゲーム化という展開ではなく、キャラクターを最初に作り、認知度を高めてゲームを開発し、その後アニメ化なども視野に入れるという、今までとは異なる展開に挑戦するとのこと。

原案は台湾出身のイラストレーターのZELITTO氏 で、テレビ東京で放送したアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」では、人気キャラクター「レム」のフィギュアデザインを担当。脚本はアニメ「鋼の錬金術師」や「魔法先生ネギま!?」を担当した高山カツヒコ氏。中国の人気ゲームシリーズのアニメ「軒轅剣 蒼き曜」では、シリーズ構成と脚本を担当するなどローカライズ経験があるようです。

海外かつキャラクター起点という新しい形のIP展開ですが、テレビ東京が過去アニメ事業で携わってきたスタッフの方々がどのようにビジネスを広げていくのか注目です。

おわりに

以上、キー局の最近のアニメ事業の動向を見てきました。日テレ、フジ、TBSは新しい放送枠を作りましたが、放送枠の調整で新しいことをできるのはテレビならではの戦略ですよね。また、同じ放送枠の新設でもbilibili社と提携したフジはユニークな印象です。

テレビ朝日は主幹事でのアニメ製作は残り4社と比較すると遅れている印象ですが、「クレヨンしんちゃん」の新作映画でしっかり結果を出していますし、「窓ぎわのトットちゃん」など大きい挑戦をしています。

テレビ東京はNARUTO、BLEACHなどが海外でしっかり稼げることを知っていますので、アジア圏でNARUTOやBLEACH的な和風のオリジナルIPで挑戦するのは納得でした。

全記事は読めるのですが、note有料版の設定にしています。もし本記事が面白ければ支援のほどよろしくお願いいたします!

出典

36_2q.pdf (ntvhd.co.jp)

スタジオジブリの年表 - スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

20230921.pdf (ntv.co.jp)

アニメ『葬送のフリーレン』公式サイト (frieren-anime.jp)

日本テレビの新アニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT」(フラアニ)が金曜よるに誕生! 10/6『葬送のフリーレン』で始動|日テレTOPICS|日本テレビ (ntv.co.jp)

『屋根裏のラジャー』公式サイト (ponoc.jp)

20230728.pdf (ntvhd.co.jp)

ニュースリリース - フジテレビ (fujitv.co.jp)

TBS INNOVATION LAND | 『七つの大罪 黙示録の四騎士』放送開始!アニメ事業部長・渡辺信也に聞く、TBSがアニメ事業に本格参入する理由

テレビ朝日HD決算説明会資料 (tv-asahihd.co.jp)

映画「しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~」の主題歌PVが公開 - GAME Watch (impress.co.jp)

テレビ朝日HD決算補足資料 (tv-asahihd.co.jp)

お知らせ:2023年:株式会社テレビ東京 (tv-tokyo.co.jp)

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