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Googleのチーフエコノミストらが教える変わらない経済原理とは?

こんにちは、村田泰祐です。今回はGoogleのチーフエコノミストであるハル・ヴァリンとUC Berkeleyのカール・シャピロ教授によって書かれた「情報経済の鉄則」を読みました。

ハル・ヴァリンはミクロ経済学に関する本も出していて、カール・シャピロ教授の専門はビジネス戦略。

インターネットコンテンツの産業において、どのような戦略を取るべきか経済学とビジネスの両観点からアプローチした読み応え抜群の本です。

非常に分厚い本ですが、各章の終わりにまとめがあるので、自分の興味のある部分から読んでもいいかもしれません。

1999年に書かれた本なので、現在と全て当てはまるかというとそうではない場合もあり、その点に関しては巻末の琴坂教授の解説を読むといいかと思います。

今回のブログでは個人的に興味のあった部分だけを紹介します。

コモディティー化した市場での戦い方

インターネットが発達したいま、情報というのは差別化できずにコモディティー化しています。そういったものは限界費用=ゼロで販売されています。例えば、ニュース、株価、天気、地図、住所などは無料に近い値段で手に入るはずです。

そこで取れる戦略は大きく2つ。差別化戦略コスト・リーダーシップ戦略です。どちらの戦略も価格設定がカギです。

他社には真似できない情報製品を編み出して価格を決めるか、スケールメリットを活かして価格・コスト競争に勝つかのどちらかです。

差別化戦略を取る場合、コモディティー化した情報もその他の情報を掛け合わせることで他にはないものになります。しかし、競合他社から真似されやすく、結局は競争からは逃げられないことがあります。だから、知的財産権を主張してコモディティー化した情報を保護する戦略が取れます。

コスト・リーダーシップ戦略では、製品の差別化が難しいので数を売るという戦略になります。大量に売る必要があり、値下げするので利益率が下がり、複数社がこの戦略を取ると血で血を洗う価格競争になります。

価格競争は避けたいので、まずは市場にいちはやく参入する先発優位が重要です。そして、他の企業が参入してこないように短期的な利益率を犠牲にして「参入阻止価格」を設定します。そして、他企業が参入した場合は価格競争に持ち込むというシグナルを出すことも欠かせません。

「囲い込み戦略=ロックイン」を売り手として、どう仕掛けるか

いわゆる消費者を囲い込み(以後、ロックインと表記)する、ということには流れが存在します。

ブランド選択→お試し期間→外堀を埋める→ロックイン→ブランド選択・・・

2回目のブランド選択に戻ってきたとき、他のブランドに乗り換えるかのスイッチング・コストは当然高くなります。どうすれば、このロックインの流れを上手く利用できるのでしょうか。

①投資する。できる限り少ないコストで顧客の納入基盤を築く。
②外堀を埋める。自社製品・システムへの投資をして使いやすいものに。次のブランド選択の時に、顧客が乗り換えを見送るくらいのものに発展させる
③最大限活用する。ロイヤリティの高い顧客に対して補完的な商品を販売。顧客基盤にアクセスする権利を他の業者にも販売してしまう。

①の場合は、新規顧客の争奪合戦になる。ここも先ほどの差別化戦略とコスト・リーダーシップ戦略を取らざるを得ません。ここは顧客獲得の為に、値引きなど大盤振る舞いの投資をしないといけません。

②では、影響力の大きい顧客、乗り換えコストの高い顧客を見極めます。そういった有望な顧客にはVIP扱いをします。具体的には料金体系を工夫して、値引きをします。

③に関しては、獲得した顧客に対してメイン事業以外の他の商品を売ることです。保障、アップグレードなどがこれに当たります。そして、顧客のデータをしっかり握り、他の事業者がアクセスできるように販売することもできます。


この本を読んでいて、あらためて「情報」というものを使って、どのようにビジネスをしていくのか、そして戦略に落とし込むかを学ぶことができました。インターネットビジネスの基本の競争原理を知りたい人におすすめです。










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