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工務店という稼業#2 (なぜ業者は相見積を嫌がるのか? 本音)

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 相見積だと伝えると工事業者に嫌がられる。または急にリアクションが薄くなりやる気ない感じになる。といった経験をした方は少なくないと思う。それは、なぜだろうか?
 社会の競争原理に従って相見積もりするのは普通の事なのに。
「ちゃんと仕事してくれよ、せっかく頼んでいるのだから。」
「仕事になればおたくも儲かるんだからさ。」
そう思ったに違いない。
 あなたを信用して1社に絞っていたのに、いちいち催促しないと無い返事LINEは既読がつかない(絶対読んでるはず)夕方電話しても出ないし、どうなってるんだよ!!極めつけは、「うちではできない」と回答。いまさらか!だったらはじめから言ってくれ!とにかく途中報告がないし、まともなコミュニケーションがとれない。
あいつらのペースに合わせていたら機会損失だらけだ!
そんな過去の経験から相見積するも、業者からは嫌がられる。ほんとにヤバいやつらだ。
 ご立派な会社
に勤めていて、ご立派な取引先とお仕事している貴方には ”理解不能”な事が頻発する建設業者どもの謎を建設業ど真ん中で生きているぼくが深堀りしていこうと思う。(すでに血だらけ)

この発信の目的

①この業界を皆様に広く認知していただいたり、
見積手配の参考にとしてだったり
③これを見て我こそはと建設業に入ってくる若者が増えたらいいな
という想いで現役・工務店の人がぶっちゃけで暴露していくnoteです。
乱筆乱文な上、一部表現が過激な内容も含みます。おいコラってなってもDMとか送りつけることなくどうか寛容な心で最後までご一読頂けるとありがたい。


理由:1 同条件ではない相見積。

 さて、まず始めにお伝えしておきますがぼくは相見積は歓迎派だ。ただ、小規模な修繕仕事はご勘弁いただきたいのと、初回提出のみにしてほしい。2回目以降の打合せは1社に絞って進めていただきたい。何度も打ち合わせを重ねた挙句に、やはり他社にしました。というのは非常につらい。発注者側も本意ではないだろう。これはまず見積工事の種類を把握する必要がある。

また独断で4つのパターンに分けてみた。

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①定価パターン
定価があり商品だけのもの、価格設定があるもの
例 → 給湯器交換、照明器具交換
例 → 規格住宅 基本価格○○万/坪

②一定単価パターン
作業が画一的であり、ある程度単価相場があるもの
例 → 畳の表替え、クロス貼り替え、襖の貼り替え

③オーダーメイドパターン
定価も相場も無いもの。
例 → ビルの屋上にある重さ500kgの室外機を下ろして運搬して処分
例 → 原因不明の漏水、雨漏りの原因調査と対策工事

④仕様決定済パターン
オーダーメイドだが、すでに調査済&仕様決定済であり、設計図と調査資料があるもの。
例 → 〇〇〇ビル新築工事(〇〇設計事務所、〇〇不動産が企画)

基本の定価設定があるため数量が分かれば少ない労力で見積可能。はまず実際現地を調査して工事方法検討から始めるので価格を出すまでには多くの労力がかかる。工事方法が決まらないと価格は出せない。
の進化系。方法と仕様が決まっていてあとは価格だけ。
 このパターンのうち嫌がられるのは③。やり方が違えば価格も違う。相見積をとってもそれらをうまくマネジメントできる人なら良いが、結局は「値段も内容もバラバラ。良くわからないし決められない・・・」と、なる。これはお互い無駄な手間になる。
価格出すだけは〇、少し検討しなきゃいけないは△、がっつり調査&検討の相見積は✕

理由:2 発注者側も案外ひどい


 住宅展示場に行って見学後、出されたお茶を飲んでいる間に素敵なパースと一緒に見積書が出てきてしまう。これが現代の普通のスピード感になっているので一般的なイメージでは簡単にできるもの。そう思う気持ちは分かります。でもこれはさきほどの4分類では①に入る。
 そんな感覚で③のパターンで何度も打合せを重ねたあと、「ありがとうございます!一度検討します!」を最後に連絡がない。連絡無し=お断りというのも残念ながらまだまだ多い(特に法人取引先の担当現場監督)
協力業者らにもどうなったか連絡できないし、処分したくとも出来ない保留の書類がたまっていく。
 こういう事が何度も続くと、だったら今進行中のお客様のためにもうひと手間かけよう。確実に仕事になる匿名見積案件に注力しよう。こうして相見積案件の優先順位がどんどん下がっていく。

理由:3 調査費でお金を請求しない業者。

 通常なら人件費+材料費+調査費見積費+利益となるが(項目をどう書くかだけの違いで本当はどこかに含まれている)
しかし、人件費+材料費という原価のみ積み上げで工事代を決める業者も多い。(1人親方で動いている人など)その多くは法人の下請けメインなので元請会社が勝手に価格を出してその範囲で仕事をこなす流れが出来ている。一度そのルーティンで生計が成り立っているとわざわざ相見積してまで他の仕事を取ろうと思わない。
 良くも悪くも請求額は原価なので見積そのものに意味がないと思い込んでいる事があり後回しになりがちだ。「安くやってやってるんだから」こういう意識がある業者も一定数いる。
 調査、見積作業、打合せ作業を自分の仕事の工数に入れていない。(入れればいいのにそれはしないようだ)調査にきてください。相見積もりですが。なんて言ったら嫌がるし多分来ないだろう。でも価格は安い。

理由:4 些細な行き違いで即赤字になる仕事

 「現場というのは常に生モノ」プロなら普通わかるでしょうそんなこと。みたいな事が今日も日本中で8000万件くらい勃発している。発注者側は業者に頼めばなんとかなる。と思っているし、工事業者側によってはそんなことは分かって依頼しているのだろう。と思っている。
 現場状況とお客さんのニーズを擦り合わせあらゆる視点で把握する能力。これは何年やってても100%は難しい。というか無理。あけてビックリも当然あるしコロンブスの卵現象もある。2Dが3Dになった時に求められる価値実際提供する作業にギャップが生じないように(結構簡単に生じる)するにはそれはそれで専門家が必要だ(デザイナー・建築家)ぼくたちはあくまでも施工屋。
 ここでゴネて支払ってくれないお客さんもいるけれど、かかったものは仕方ないね。とお金をいただけるお客さんもいる。だから今日までぼくたちは生き残ってこれた。
 相見積で価格競争させられる仕事なんかすぐケチつけられて最悪赤字になるに違いない。と、思い込み、結果ためらってしまう。
ためらう業者は良心価格。それでも相見積参加する業者はあらゆる想定をふくめた価格で見積を出す。そういうもんです。

理由:5 そもそも事務仕事が苦手。

 身も蓋も無いことだけどこれもリアル。1日中全力で肉体労働をしてから帰って机に向かって工事の方法を考え拾い出し(必要な材料を1点1点ピックアップ)をして見積を作る。今までの人生ロクに机に向かった事がない人間がだ。家族のためだ、生活のためだと自分に言い聞かせながら疲労した体に鞭を打ち、子育て時期なら子供を寝かしつけた後、少しずつやっていく、しかもそれはタダ働きになる可能性もある。タダ働きになるから日中は現場を動かさないといけない。ぼくたちは、不動産クラスタや株クラの優雅な皆様のような目黒で昼飲みィイ!なんていう人とは程遠い、肉体労働者なのだ。(涙で前が)
リフォーム会社の担当営業マンでも同じ事。住〇林業新築そっ〇りさんばりの一括丸投げ構造でない限り、昼は現場に追われ夜に見積をするのだ。そこへとどめの相見積バイツァ・ダスト(負けて死ね!)で無事に爆死。
 とにかくこれは本当にきつい。自分で選んだ道でしょうよとか言わないで。これでは人が定着しない。だいたい何ですか?見積って?江戸時代の大工さんや左官屋さんは見積なんぞ出さなかったに違いない。
 御代官様、尽力いたしますゆえ当て馬見積だけは何卒ご勘弁下さいまし。

理由:6 結局、信頼関係がない。

ぼったくられそう
専門用語ばかりで分かりにくい
要望通りにやってくれるかどうか分からない
家に入るのでちゃんとした業者に頼みたい
メディアでおばあちゃんが騙されてる
ヤクザみたいな人が来そうで怖い
臭そう
汚い
もし、これを読んでいるあなたが建設業ならここでハッキリと言っておこう。業種に例外なく、あなたのいるこの業界の「社会的信用度は最低」である。
 しかし!ここで感情的になってはいけない。
消費者はこの不安を心に抱きながら勇気を振り絞って依頼してきている。あなたも感じ取っているはずだ。なんだあの客は!もうこっちからお断りだ!となってはいけない。お客さんも不安なのだ。この事を客観視できる人が一人でも増えれば建設業の未来は明るい。いま、”めんどくさいけど当たり前な事を当たり前にやれる業者”が少ない。職人でも、監督でも、営業でも、コミュニケーションが”普通に”とれる我こそはという若者はどんどん名乗りを上げてほしい。(ライバルは弱いぞっ!)

まとめ


業者側からは見積費用かかりますとは言わない。そんな事言ったら怒られちゃうと思っている。ぼくも思っている(た)。お金の事をあまり積極的に主張する人は少ないようだ。そのかわりに無言のプレッシャーをかけてくる。謎。それではいつまでたってもお互いの希望は伝わらない。
 ぼくはこういう頼み方でもありだと思う。↓
・有償でいいので相見積お願いします。(成約したらその分は充当)
・初回は無料でおねがいしますが、2回目以降は有償でかまいません。

これは意外にも反響が多かった。

 業者のあなたはお金をもらえるだけの提案見積(クオリティ高く。気持ちを入れて)を出そう。発注者側のあなたはいつ見積が出てくるか分からない不安な夜を過ごさなくて済むし、3社見積をとっても2社分の6万円だ。何十万もぼったくられるよりはマシだ。小規模工事なら1万円でも、交通費のチップ程度でもいいと思う。

 業者が相見積を嫌がる6つの理由。いかがだったでしょうか。この全体像業者の心理を頭にいれつつ相見積を取る工事、取らない工事をチョイスし見積手配を進めていただきたい。依頼するにしろ、断るにしろきっとお互い気持ち良い取引になるはずだ。効率よく適正価格で工事が発注できると確信しております。
最後までお読みいただきありがとうございました。へーなるほど、と思ったら、いいね、フォロー、感想コメント
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