伊勢崎賢治先生の解説 2

より 


上記文抜粋
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喫緊の課題は原発の保全  国際社会の役割

 ――国連など国際機関が停戦調停に動く可能性は?

 伊勢崎 国連安保理は、常任理事国の利害が絡んだり、そのうちの一つが当事国であると、機能不全となる。「拒否権」の問題だ。だが国連は安保理だけではない。歴史上にその事例が一つだけある。

 それは第二次中東戦争(1956年)のスエズ動乱だ。当時、エジプトのナセル大統領のスエズ運河の国有化を宣言したことに対して、イギリスがフランス、イスラエルに働きかけてエジプトに侵攻した。イギリスとフランスは安保理常任理事国なので、この戦争をどうやって止めるかといったときに国連安保理は機能不全だった。そのときに動いたのが国連総会だった。それで停戦監視のための国連緊急軍がつくられた。これが現在の国連PKO(平和維持活動)の元祖だ。国連PKOは国連安保理が発動するミッションだが、その元祖になったのは、国連総会の決議によるものだった。

 紛争に関係のないブラジル軍などで構成される多国籍軍として軍を送った。それは紛争当事国と対決するためではなく、あくまで停戦監視のためだ。だから兵士も自己防衛のためだけの軽武装だった。非武装の停戦監視団は、現在は一つのフォーマットだ。だから国連が何もできないということはない。

 現在、戦えない欧米諸国はウクライナに武器を送っている最中だが、そのような(停戦監視団の)提案が、拒否権のない国連総会であがったときに反対するのは、ロシアにとっても難しい立場であろう。特に欧米諸国は。武器供与だって、実際にはウクライナの前線に確実に届ける保証が何もない。
 国連の事務局も、既に、停戦ミッション設計について考え始めていると思う。喫緊のもう一つの問題は、原発の保全だ。

 ――ロシアが原発を攻撃したとメディアが報じているが、それが本当ならばロシアにとっても被害が出る。なぜそんなことが起きるのだろうか?

 伊勢崎 古典的な戦略として、戦争ではまず重要施設を抑える。原発に限らず電力関連施設やテレビ局も含めて、敵が立てこもらないように初期段階で掌握するのが常套手段だ。もちろん戦争は絶対にしてはいけないのが前提だが、それは古典的な戦略としてある。

だが、原発だけは、双方が取り返しのつかない被害を受ける。だからロシアもそこは絶対に自制する。原発への攻撃は国際法上、明確な戦争犯罪である。正規軍はそれを理解する。ロシアが軍事戦略としてロシア領内から中短距離ミサイルを原発に撃ち込むことはあり得ない。でも重要施設を制覇しようとする戦闘の中で起きる核施設への被弾が問題なのだ。そして、非正規戦闘員の参戦による戦闘の無秩序化だ。

 原発の保全については、今IAEAがなんとかコミュニケーションをとろうと動いている。次はIAEAのエージェントたちが実際に現場に行くことが課題になるだろう。そのためにも停戦が必要だ。今回の人道回廊のように、それが停戦交渉の一つの項目になり得る。これは誰も反対できない。人道の観点からも反対しようがない。

 おそらく原発大国で陸上戦が起きた初めての例だ。今後、国際的にも安全保障のあり方はガラッと変わるのではないかと思う。原発が小規模なものでも陸上戦に巻き込まれる壊滅的な状況。電源喪失だけを引き起こす小規模なダメージで引き起こされる原発事故の当事者である日本は、本来なら、その対策を一番先に考え実現しなければならない立場にあるが、3・11の教訓を最も生かしていないのが日本だ。

露を挑発し続けたNATO  冷戦後の東方拡大

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 ――遡って考えてみて、プーチンがこのタイミングでウクライナに侵攻した要因はなんだったと思われるか?

 伊勢崎 昨年、北欧のアイスランドとノルウェーの大学に招かれて講演に行ったのだが、この両国はNATO加盟国でありながら、ロシアと国境を一部接している(アイスランドは氷で接しているが、近年その氷が溶け始めている)。この地域でも、冷戦終結直後の1990年代からNATOがこのまま東方拡大すればいつかは破裂する、最初に破裂するのはクリミアではないかと指摘されていた。クリミアは地図を見てもわかるように、黒海に突き出した半島で、その南は地中海、さらにトルコに接するという非常にセンシティブな地域だ。その危険性はずっと言われてきたが、それを冷戦終結後、30年かけてNATO側が挑発しつづけてきた。

 僕はその30年のうち前の10年間はアフリカの貧困問題に取り組んでいたが、後の20年はNATOと付き合ってきた。とくに最初の10年間はアフガニスタンでNATOと一緒に仕事をしてきた。

 NATOは、もともと東西冷戦の自衛組織だ。だから1991年に敵国のソ連が崩壊してから、アイデンティティー・クライシス(自己喪失)が始まる。その存在意義を自問する自分探しの旅だ。ロシアも1991年にワルシャワ条約機構を解体したのに、今はCSTO(ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの六カ国が加盟する集団安全保障条約)をつくった。こうして互いにエスカレートし、欧州側では核シェアリングをしたりして刺激し合ってきた。しかし、僕のNATO首脳との付き合いの中でも、NATO東方拡大のリスクを意識するからこそ、アフガニスタンがいかに「渡りに船」になったかを話題にすることが多かった。

 それが、2001年に始まる対テロ戦争だ。9・11同時多発テロ後、NATO憲章第五条「ONE FOR ALLALL FOR ONE(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」で、創立して初めてNATOが共に戦い攻め入ったのがアフガニスタンだ。当時は相手が軽武装のタリバンだから楽勝と思っていたのかもしれないが、20年後の昨年、完全撤退した。これは、NATOにとって、その存在の正当性が問われるモラル・クライシス(倫理が失われつつある危機的局面)なのだ。

 実は、このモラル・クライシスは昨年始まったことではなく、米国抜きのNATO首脳部が「これってどうなの…?」と懐疑的になり始めたのは、僕の記憶によると2008~2010年だ。この頃、アフガン戦争は米国建国史上最長の戦争になりかけており、誰もが疲れて厭戦気分がまん延していた。だが、無責任に撤退もできない。それでも軍事的勝利はあり得ないことを自覚し始め、どうやってEXIT(退出)するかを考えていた。そしてNATO主戦力の段階的撤退を計画し、実行に移し始めたのが2014年だった。アフガン国軍への戦闘責任を引き継ぎ、NATO軍は国軍兵士の後方支援に回るということだ。

 その2014年に、ロシアのクリミア併合が起きたのだ。早速、僕のところに当時のNATO軍・政府関係者の友人からメールが来た。

 「クリミア併合が、正当性を失ったNATOに再び結束する機会を与えてくれた」と。NATOにとっては、2回目の「渡りに船」だ。

 その後、トランプ政権になってからは米国は、アジア戦略へとピボット(路線変更)した。特に、中国を敵に見据え、世界を分断していく戦略だ。「あいつらは非民主的で、非人権的である(それは本当であるが)」というナラティブ(物語)を作り上げてきた。

無惨なアフガン敗走劇が転機に  米欧の弱体化を露呈

 伊勢崎 なぜ今ウクライナに侵攻したのかは、100万㌦のクエスチョンだ。ただ穿(うが)った見方をすれば、かつてソ連が敗退したアフガニスタンで、NATOと米国が敗退した。それも20年も戦って敗北した。茫然自失だ。どんなにリーダーが呼びかけても世論がついてこない。その象徴が昨年8月15日のアフガンからの敗走だった。

米国は昨年、NATOにも撤退計画の調整もせずに8月末までの完全撤退を決めた。だから他のNATO諸国は大慌てになった。タリバンの勢力が拡大するなかで、撤退期限の8月31日、NATOが任務を引き継いでいた国軍は全崩壊し、首都カブールは陥落した。ちなみにあのとき、アフガニスタンでの協力者を置き去りにして見捨てたのは日本だけだ。他国はアフガニスタンでの協力者(スタッフ)は、その家族も含めて同胞とみなして命懸けで救出した。韓国も300人以上のアフガン人協力者と家族を助け、手厚く定住させている。日本だけが現地スタッフを見捨てて大使館は全員逃げた。あの混乱は歴史に残る日本の恥だ。

 いずれにしてもあのアフガン撤退で、米国とそれ以外のNATO諸国との亀裂が決定的になった。米軍人ですらあれは失敗だと認めているほどだ。この顛末をプーチンは静観していたと思う。つまりウクライナを攻めても誰もこない、と。

 そもそもNATO諸国がウクライナに軍備を送るといっても、確実に届けるのは難しい。今はウクライナ西側国境までにはロシア軍の実行支配は及んでいない。ロシア軍は最初から西側まで攻め込むつもりがない。あの広大なウクライナ全土を実効支配・占領統治するためにはどれほどの兵力が必要になるかわかっている。

 その西側から隣国ポーランドへの避難ルートを逆流してウクライナ軍に合流する非正規戦闘員が入ってくる。そこから運べる武器といえば個人携帯武器で、小銃、弾薬の他、大きいものはスティンガーミサイル(携帯式ミサイル)のタイプのものだろう。ウクライナ正規軍が一番激しい戦闘をしているのは「東部戦線」であり、陸路で運べば、当然、制空権を握るロシア軍に叩かれる。だから戦後初というほどの規模で各国がポーランド国境に軍備を集結させたところで、届ける確証がない。NATOが代替輸送し、それをロシアが叩けば、それはNATOとの開戦になってしまう。

 また、ロシアは必ずしも追い詰められて行動に出たわけではないと思う。


 例えば、ウクライナにはあのチェルノブイリがある。ウクライナはその他に15基の原発が稼働する原発大国だ。日本と同じように核廃棄物が出てくる。
 ロシアの核廃棄産業は世界トップといわれている。その内実はよくわからない。国土が広いからどこかに埋めているだけなのかもしれないが、ウクライナはロシアと核廃棄物リサイクル協定を結び、ロシアに依存して毎年2億㌦ものお金を払って核廃棄物を送っていた。だが2005年、ウクライナはその協定を反古にし、米国の原子力企業の援助を受けてチェルノブイリ原発の敷地内に2億5000万㌦かけて乾式貯蔵施設を設立するという新たな合意を締結したという。

 このように、これまでロシアが握っていた産業や利権、エネルギーにかかわるものが奪われることはプーチンとしてはおもしろくない。そして、東部のロシア系の同胞が迫害にあっているという建前で、集団的自衛権を発動するという国連憲章を悪用して攻め込んだ。非常に冷徹な指導者だし、僕もこんな人に自分の国のリーダーにはなってもらいたくない。だが、侵攻の背景にはさまざまな理由があることは確かだろうと思う。

 ――プーチンはNATOが1991年の東西ドイツ統一時にロシアと交わした東方不拡大の約束を破っていることを問題視していたが。

 伊勢崎 日本の学者のなかに、ロシアに対してNATO東方不拡大の“約束”などなかったという人がいて驚いている。その約束が果たして、国際法上、効力を持つ約束だったのかといえば、僕もクエスチョンマークだ。でも、日本流にいう密約に近いもので、ベルリンの壁崩壊の衝撃の直後の、ゴルバチョフを囲む西側首脳の外交交渉の中での覚書、側近たちが本国に向けて打った公電。その記録は残っており、開示されている。日報や公文書が消えたり、改ざんされても、平気な日本とは違う。

 そこでは西側の首脳は明確に東方不拡大を表明していた。それは外交文書ではないから拘束力はないかもしれないが、それをプーチンは約束といい、西側は約束ではないといっている。それだけの話だ。プーチンは嘘つき、で済ます問題ではない。そして、上述のように、NATO自身のアイデンティティ・クライシス問題への思考停止にしかならない。

 ――ウクライナがどの軍事同盟を選ぶかはウクライナの主権であり、NATO加盟についてロシアがとやかく口を出す問題ではないという主張もある。

 伊勢崎 そもそも紛争問題を抱える国をNATOは入れない。NATOは自衛の組織だ。交戦状態に入っている国をNATO加盟国にすると、即座にNATO憲章第五条(集団的自衛権の行使)を発動して加盟国は戦争に参加しなければならなくなる。NATOは相互軍事同盟だから間口は広げ、民主的な主権国家であれば、厳格な審査プロセスがあるので自動的でないが、間口をオープンにしている。でも、それは、主権国家にNATOに入れる権利を保証するものでもなく、入る義務を要請しているわけではない。決めるのは主権国家であって、例えその国がNATOに入りたいと要請しても、条件を満たさない限り受け入れないというのもNATOの立場だ。条件とは、民主主義や自由経済社会である他に、国内の少数派の問題を公正に処し、平和的に解決していることが加わる。ウクライナに加えて、ジョージアの加盟もずっと据え置きにされてきた。

 NATOは、非加盟国とは「PfP(平和のためのパートナーシップ協定)」を結んでおり、驚くことにNATO地位協定をそのまま適用することもやっている。そこに軍事基地を置くこととは別だ。そこにはロシアもウクライナも入っている。このPfPは、NATO側の首脳が冷戦後に描いていた「母なるヨーロッパ」という政治フォーラム構想に一番近かったのだろうと思う。しかし、PfPは、実質、絵に描いた餅になってきた。バルト三国やポーランドがNATO加盟国になり、特に2014年のクリミア併合の後に、それらの国にNATO有志軍を駐留させ、「トリップワイヤー(仕掛け線)化」することは、ロシア側からみれば、時間を掛けたNATOの武力による威嚇行為にもとれる。

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抜粋終わり

>でも、日本流にいう密約に近いもので、ベルリンの壁崩壊の衝撃の直後の、ゴルバチョフを囲む西側首脳の外交交渉の中での覚書、側近たちが本国に向けて打った公電。その記録は残っており、開示されている。日報や公文書が消えたり、改ざんされても、平気な日本とは違う。

だよね、天皇カルトのアホの島の日本。


続き
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戦前回帰の異常な熱狂  冷静さを奪う同調圧力

 ――市民にも戦闘参加を呼びかけるゼレンスキー政権を応援する空気が、日本をはじめ国際社会全体で煽られている。日本でも右から左まで同じ方向を向いた熱狂が作り出され、このようにして戦争になっていくんだな…と痛感させるものがある。

 伊勢崎 まさにその通りだ。他人のことでこれだけ扇情的になるのだから、自分たちの身近で、例えば台湾有事などで自衛隊が戦闘するはめになったら、この国はどうなっていくのか。本当に恐ろしいものを感じる。


ゼレンスキーは市民にも戦闘を呼びかけ、成人男性の国外退避を禁じ、希望者には無差別に武器を配っている。これを第二次大戦中にナチスドイツと戦った「パルチザン」のイメージと重ね、欧州でも戦前回帰の大熱狂になっている。パルチザンというのは、非正規戦闘員だ。大戦後、人類はその反省からジュネーブ諸条約をつくり、戦闘員と非戦闘員は区別しなければいけないと、戦前より更に厳密に定義した。非戦闘員は保護しなければならない。だが、非戦闘員(つまり民間人)と非正規戦闘員を、実際の戦場でどう区別するのか。これが、米国がテロとの戦いを始めてから加速的に難しくなっている。つまり民間人が武装すれば戦闘員と見なせるが、事後の検死が困難な戦況を利用して、武装していなくても民間人を攻撃し、戦争犯罪の誹りを回避するという運用の実績を積んでいったのだ。その一方で、民間軍事会社という非正規戦闘員を戦場に送る業界が拡大していった。ロシアもそうだ。

 国家が扇動して「市民よ銃をとれ」というのは、現代ではやってはいけないことだ。敵から見れば「国家が戦闘員といっているのだから誰でも容赦なく撃てる」となる。プーチンも狂っているかもしれないが、ゼレンスキーはもっと狂っている。それをヒーローといっている。

 なぜ先の大戦で国家のために一般市民があれほど犠牲になった日本国民がそれを応援するのか?「市民は死ぬな」という応援ならいいが、「市民よ、銃を取れ」という国家をなぜ応援するのか?

 こういう話をすると「ロシアのいいなりになれというのか?」「ウクライナの主権はどうなる?」という人がいる。だが国家主権が、西側につくか、東側につくかというだけで市民を犠牲にするようなことはしてはいけない。これは二択問題ではない。その他の緩衝国家がやってきたように中立という主権国家の選択肢もあるのだ。

 緩衝国家には、東西いずれかの陣営を攻撃するような他国軍の基地をつくらないというのも一つの国家の意志だ。主権の放棄ではなく、主権の意志だ。それがウクライナをめぐって欧米側につくか、ロシア側につくかで二極化され、そのように世論が形成されている。

 中立国としての生き方の話をすれば、例えばフィンランドは、ロシア寄りの中立国だったが、自由と民主主義を重んじる西側陣営にいる。NATOの加盟国ではないが、EUの加盟国である。ロシアとの長い国境線を共有しているからこその選択だ。でも、今回の騒動が起きてからフィンランドも武器の供与をし始めたということで、「もはや中立というスタンスはない」という言われ方をする。だが、フィンランドとロシアは友好条約を結んでいる。その内容を簡単にいえば、フィンランドをNATO側の軍事基地にせず、ロシアに脅威を及ばさない、というものだ。今回の騒動でその国是まで廃棄するだろうか? 僕はないと思う。「スイスも軍備を供与しているから中立などあり得ない」という人もいるが、国是としての中立までかなぐり捨てるということにはならないと思う。

 二択にするから緊張が健在化しているのに、二択の片方(NATO)は戦う気がない。これほど緩衝国家の悲劇的な運命を代表する例はおそらく他にない。少し熱が冷めれば、米国でもNATOの東方拡大主義が原因であり、米国の責任こそ問われるのだという論調が必ず出てくる。すでに民主党のバーニー・サンダース上院議員や、オカシオ・コルテス下院議員などを擁する民主社会主義グループが言い始めている。

 ――だが、現在メディアは欧米側の目線でしかウクライナ情勢を伝えていない。双方の情報戦や現地の混乱状況を考えれば、民家などの被害が実際どちらの攻撃によるものかもわからない。ロシア侵攻前から、ウクライナ軍はロシア系住民の多い東部地域に空爆もしてきた。それらがすべてウクライナ当局の発表だけが検証もなく垂れ流され、あまりにも中立性がない。

 伊勢崎 ロシア系の放送はすべて遮断された。ロシアのニュース専門チャンネル「RT(旧称ロシア・トゥデイ)」は、プーチン批判もするような“結構”まともなところもある放送局だったが、それさえも見れなくなった。ロシア政府の公式サイトにも繋がらない。相手の言い分など何も聞かないということだ。ここまでやるのか…と驚いている。

 どのメディアも同じ方向を向いている。英BBC放送もかつての9・11後の米国の偏向報道と重なる論調だし、アルジャジーラ(カタールに本社を置くアラビア語圏の衛星放送)も空気を読んでいる。ものすごい同調圧力だ。それでもアルジャジーラは、海外からの傭兵の問題を現場から発信している。ポーランドのウクライナ国境に各地から傭兵が殺到している。現地にある傭兵の斡旋所までちゃんと取材している。そこに外国人が来て、中にはISIS系の傭兵もいることがわかる。ウクライナ政府の出先機関があり、そこで「少なくとも1年は戦え」というような誓約書に署名をさせられる。そこで「長すぎる…」といって諦めて帰る人にインタビューをしている。

 私と同じ東京外大の青山弘之教授(現代アラブ政治)は、膨大な量のアラビア語のSNSを定点観測しているが、シリアのISIS支配地域ではすでに月1000~2000㌦を保証するような条件で傭兵の斡旋が始まっているという。問題は、誰がそんなお金を出しているのかだ。それによって、かつてソ連と戦ったアフガニスタンを想起させるような共産主義に対するジハード(聖戦)が形成されてしまう。前述のように、この逆のベクトルでロシアもシリアでISISと戦ってきた戦闘員のリクルートを始めたから、もう無茶苦茶だ。

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抜粋終わり

 >国家が扇動して「市民よ銃をとれ」というのは、現代ではやってはいけないことだ。敵から見れば「国家が戦闘員といっているのだから誰でも容赦なく撃てる」となる。プーチンも狂っているかもしれないが、ゼレンスキーはもっと狂っている。それをヒーローといっている。

南京虐殺で、大量の中国市民を殺した日本軍の言い訳は「便衣兵が混じっていたから」だそうだが、
その論理で言うと、普通に市民を虐殺できるようになるのが「市民よ銃をとれ」で、
天皇カルトは、それを欲しているのだ。


まあ天皇家を殺しつくすのは、正しいかもね。


続き
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アフリカや中東の反応 見過される「侵略」

 ――国連総会では、中国やインドとともに、南アフリカの代表が「対話」の必要性を説いて欧米主導のロシア非難決議を棄権した。アフリカ諸国ではそういう論調が強いのだろうか?

 伊勢崎 アフリカ諸国も二分している。どっちかを見ている。アフリカ大陸にとってロシアとウクライナは小麦を主体とした穀物の最大の輸出国だ。やはり価格が安い。ここで貿易が止まれば、アフリカでは食糧危機に陥って飢餓が生まれる。それでもやっぱりロシアと一定の距離を取らなければ、西側の援助も切られてしまうのではないかという恐れを抱くのも当然だ。だから賛成と棄権に分かれてしまう。

 それでも反対に近い棄権をしたのが南アフリカだった。それは反植民地運動、反アパルトヘイト(反人種隔離)運動への最大のスポンサーが旧ソ連だったからだ。そのとき西側は、そういう運動をする勢力を「テロリスト」といっていた。援助どころかアパルトヘイトをやる側に味方していたわけだ。ネルソン・マンデラ(反アパルトヘイト運動の指導者で1994年に南アフリカ共和国大統領に就任)が米国のテロリストリストから外れるのは2008年だ。それまで正式にはテロリストに指定されていた。

 僕が東ティモール暫定統治機構(国連管轄)の現地で県知事をやっていたのが2000年だった。東ティモールは2002年に正式にインドネシアから独立した。冷戦期を含めてインドネシアの迫害を受けながらずっと独立派は戦ってきた。そのころの東ティモールの独立派は西側から「アカ」と呼ばれていた。米国や日本を含めて西側諸国は、虐殺する側のインドネシア政府を応援していたのだ。冷戦が終わったら、てのひら返しだ。ひどい話だが、そういうものだ。だから南アフリカのように、旧ソ連時代の恩義を国是とする国がある。

 ――現在アフリカ諸国に対しては近年、中国や、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)もかなり援助をしており、欧米の一極状態ではなくなっているようにもみえる。

 伊勢崎 特にアフリカ大陸では、中国なしではどこの国もやっていけないのではないか。そこは理解すべきだろう。僕も中国には問題があると思うが、彼らはいい意味でも悪い意味でも援助に条件を付けない。だから悪政が中国の援助によってはびこる。でも、そんなことは西側が植民地時代にやってきたことに比べたらまだましだ。

 中国の肩を持つわけではないが、少なくとも中国は人民解放軍を他国に置かない。国連PKO以外は、アフリカ大陸には人民軍は一人もいない。フランスとか米国、イギリスはいまだに軍を置いている。中国はジブチを除いてどこにも置いていない。もちろん南沙諸島でサンゴ礁を埋め立てたり、わけの分からないことをしているが、あのミャンマーにさえ軍事支援はするが人民軍は入れていない。ミャンマーの軍事政権に中国が軍事支援している。それを批判する西側は、今ウクライナのゼレンスキーに届くあてのない軍事支援をしている。干渉の形態という意味では、同じだ。
 ウクライナ自身もこうなる前はミャンマーの軍事政権に軍事供与していた軍事大国なのだ。

 とにかく今国際社会が焦点とすべきことは早期停戦だ。それは一人でも多くウクライナの一般市民を助けるためであり、国際社会全体もそこに焦点を絞るべきだろう。

 ――本来ならばここで、平和憲法を持つ被爆国であり、原発事故の当事国でもある日本が、原発大国での戦争の危険性を真っ先に指摘し、停戦を呼びかけるべき立場にいるはずでは?

 伊勢崎 その通りだ。だが残念ながら今の政権には、たとえ無理なことでも正しいことをやろういう骨のある政治家がいない。外務省から画期的なアイデアが出たとしても、それを実現するために自分が泥を被るというような覚悟をもつ政治家が、かつてはいたが今はダメだ。だから外務省からも元気のある提案がなく、ひたすら守りだけだ。

 去年からアフガン難民受け入れ問題についても、外務省に対しては激怒の連続だ。「アフガンでの協力者たちを日本に定住させたら、その煽りを食って他の難民のことも考えなければならなくなって、苦情が来るから」という話になる。そこばかり心配している。何度もいうが、アフガンの協力者については、他の国は同胞として責任を持って扱っている。日本だけが見放した。

 とくに日本で教育を受けたアフガン人は、だいたい前政府のときに役人になっている。タリバン政権になっても役人を総入れ替えすることはできない。役人はそのままで、上司がタリバンになる形だ。そのなかで、日本で勉強したことを隠して働いている。密告などもあり、彼らは脅迫も受けながら非常に苦しい状態で働いている。

 身勝手に撤退を決めた米国もかなりのものを積み残したが、それでも10万人近い人々を出国させ、今でもビザを発給するなどして救出しつづけている。日本は命のビザすら出さない。現代の杉原千畝はいない。韓国でも国家功労者として手厚く保護して、住居も支給している。かつて正義感に溢れていたはずの日本は、なぜこんな国になってしまったのだろうか。

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抜粋終わり


続きます。



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