結局は、「姥捨て山」・・・あるいは三略の昔からの「銭も出さんのにまともに働けるか!」

より

上記文抜粋
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いかにして植松は「植松」になったか

1ページだけ転載するが、記事全体が非常に興味深く、植松事件は氷山の一角に過ぎないと思わせる。大雑把に言えば一種の「組織悪」の問題だ。
つまり、高齢者養護施設に勤務していると、「人間が人間に見えなくなってくる」という根本的問題があるのではないか。その対策を抜きにして、あの事件を植松ひとりの個人的問題に矮小化すると、これからも第二第三の植松が出て来るだろう。

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抜粋終わり


より

上記文抜粋
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内部資料が明かす植松聖死刑囚と津久井やまゆり園の支援の実態

●はじめに……………………渡辺一史

私の手元には、津久井やまゆり園を運営する「かながわ共同会」の職員から、極秘に入手した21枚の書類がある。
 植松死刑囚が、在職中に書いたヒヤリハット報告書である。「ヒヤリハット」とは、介護や医療分野で広く普及した取り組みで、現場でヒヤリとしたりハッとした事例を記録し、職員どうしで共有するための報告書であり、植松の在職中の仕事ぶりを知る上で重要な記録である。
 すでに私は、『文藝春秋』(2021年6月号)に書いた記事の中で、その報告書の存在に触れ、朝日新聞・論壇時評(5月27日)などでも取り上げられ、大きな反響を呼んだ。
 今回は、さらに報告書の全貌を明らかにするため、かながわ共同会の元職員であるTさんに21枚のヒヤリハットから浮かび上がる植松像を読み解いてもらう。
 Tさんは、植松と直接的な面識はないものの、かながわ共同会の職員として15年以上の勤務歴があり、津久井やまゆり園にも6年間勤務していた経験がある。Tさん自身が体験してきた、やまゆり園とかながわ共同会が抱える問題点についても赤裸々に語ってもらった。

植松の支援の実態は? 内部資料に見る意外な事実

渡辺 植松死刑囚は、津久井やまゆり園に在職中の約3年3カ月の間に、21枚のヒヤリハット報告書を残しています。これは枚数としては多い方ですか?
T氏 いや多くはないですが、特別少なくもないと思います。ただ1枚1枚を見ていくと、ちゃんと自分なりの視点で丁寧に書かれていて正直驚きました。
渡辺 職員時代の植松は、ふまじめで「利用者の腕に落書きをした」などのエピソードが早くから報道されてきました。
 また、入倉かおる元園長が判決後の記者会見で語った植松像はこうです。例えば《足が弱くなっている利用者の方を誘導しているときに、ポケットに手を突っ込んで誘導していた》《遅刻や、退勤時間になっていないのに帰ってしまうという、人としての一般的なルール違反》が目につき、《当時からそういう雑な面、人として一般常識に欠ける面のある職員だった》というものです。
 だからこそ、園としては、《デキの悪い支援員だけど、どうにか育てていかなければならないと工夫をしながら育ててきた》と──。これが一般に定着している植松のイメージだと思います。
 ところが、植松が書いたヒヤリハット報告書を読んでみると、実際は違ったのではないかという疑問が湧いてきます。具体的に見ていきますが、21枚中、最も特徴的なのは、植松が利用者を救出した2015年3月の報告書です。
T氏 このときの植松の行動は非常に的確ですし、報告書もよく書けています。
渡辺 内容を要約すると、利用者が入浴中に突然てんかん発作を起こし、湯船に沈みかけるアクシデントが起こりました。それに気づいた植松が、すぐに利用者を抱きかかえ、救出の処置を行ったというものです。植松はこう書いています。
《14:53浴槽内にて発作を確認し、溺れている状況だったので直ぐに担ぎあげる。硬直痙攣20秒程みられる。脱力後脱衣場に移動し、14:55ダイアップ(発作止めの座薬)を挿入する。15:00バイタルチェックを実施。kt(体温)37・5、BP(血圧)125/68、P(脈拍)110、その後、居室で横になって過ごしていただく。看護課に連絡し18:00に検温の指示がある》(カッコ内は筆者が補足)
 この報告書から何が読みとれますか?
T氏 まず、ダイアップという座薬を入れると血圧が低下しやすいので、バイタルチェックをして看護課に申し送る必要があるのですが、植松はそれをしっかり理解していることです。あと、当然ですが、何時何分に何があったかをメモしてないとこんな報告書は書けません。
渡辺 確かに、分刻みで書いてますね。
T氏 血圧を測れば時間が記録されますから、そこから逆算して時間を記入したのかもしれませんが、少なくともどう行動するかだけでなく、最初から記録に残すことを心がけて動いています。
 それと、報告書には「原因及び問題点」という欄がありますが、報告者の個性が一番あらわれる部分なんです。植松は、《発作をもっている利用者様はシャワー浴のみ実施する。しかし、入浴は楽しみの一つの為、見守りの徹底を行う》と書いています。もし利用者のことをあまり考えない職員だったら、「シャワー浴のみ実施する」で終わっていたと思うんです。でも植松は、利用者さんは入浴が楽しみだから、見守りを徹底したいと書いている。彼なりに利用者さんのことを真剣に考えている証拠だと思います。
渡辺 自分が、さも利用者思いであることのアピールというのではなく?
T氏 そう言ってしまえばそうかもしれませんが、普段から何も考えていない人には、おそらく書けないと思います。

イレズミ発覚を機に上司の対応が変わった?

渡辺 かたや、植松の報告に対して、上司のコメントが問題になってくるわけです。全文を引用しますが、一読しただけでは何を言いたいのかわからないと思いますが、上司はこう書いています。
《溺れるとは、広辞苑第三版によると“水中で泳げないで沈む、または死にそうになる”となります。今回の件を確認しましたが、浴槽内に頭部は浸かりましたが、直ぐに気付けたので水を飲むまでには至っておりませんでした。対応は迅速で賞賛すべき内容なのに、報告に“溺れている”との記載があるため重大な結果を招いてしまった、と思われてしまいました。今後は、対応はそのままで、報告する際の記述に注意してください。》
 これは要するに、「溺れる」なんていう大げさな言葉を使って、必要以上に騒ぎ立てるなという意味ですよね。
T氏 僕もこのコメントを読んだときは、植松に思わず同情してしまいました。発作を起こした利用者さんを助けたのに、こんなコメントはナンセンスですよ。
 僕自身は、植松と同じ職場で働いた経験はありませんが、植松をよく知る同僚の話によると、彼は「バカ植松」と呼ばれて、職場内ですごく陰口を叩かれていたっていうんです。「あれだけ職場でバカにされてたら、そら頭だっておかしくなるよ」と言っている人もいました。
渡辺 入倉元園長の《デキの悪い支援員だけど、どうにか育てていかなければならないと工夫をしながら育ててきた》という言葉も疑わしくなってきますね。
T氏 今回、植松の21枚の報告書を精査してみて、彼がまだ新人だった頃のヒヤリハットを見ると、上司の対応がまったく違っているのがわかります。
 植松は2012年12月に非常勤職員に採用され、「つばさホーム」という部署に配属されますが、その時代の2013年3月、利用者さんの薬袋に植松が間違った薬を入れてしまい、別の職員がダブルチェックした際に気づいたという報告書が出ています。その際、上司は《ミスは誰にでも起こりうる物です。職員個人のミスを組織のミスに発展させない為にダブルチェックを行っています》と植松を励ますコメントを書いています。
渡辺 浴室の報告書が、2015年3月のものですから、その2年で、植松に対する上司の視線がガラッと変わったということですね。それは、一つにはイレズミの発覚があるんじゃないでしょうか。
 入浴介助中に植松のイレズミに同僚が気づき、上司に報告したのが2014年12月のことです。そこから植松が退職に至る2016年2月までの間、彼は職場でかなり冷遇されていた可能性があるということですか?
T氏 まわりの職員も、上司の態度に影響を受けるでしょうから、村八分のような感じだった可能性は十分あると思います。あと、私の元同僚で「つばさホーム」時代の植松をよく知る女性職員がいるのですが、「その頃の植松君はかわいかったし、本当に一生懸命だったよ」と言っていました。ところが、彼が常勤採用されて「のぞみホーム」に移ってから、だんだんおかしくなっていったと。
 先ほどの女性職員が、廊下ですれ違った植松に、「最近どう?」と声をかけると、「やめたいと思っている」と言ったそうです。「どうしてそう思うの?」と聞いたところ、「利用者に気持ちを送っても、返ってくるものがない、働いていてむなしい」と。仕事に対して、もがいていたというか、悩みを受け止めてくれる人がいなかったのかもしれません。

入所者のS字結腸捻転への植松の対応

渡辺 他のヒヤリハットから浮かび上がってくることは何かありますか。
T氏 植松が2014年11月に書いた報告書も、彼の人となりや、支援員としてのスキルをよく表していると思います。
 何が起こったのかというと、利用者さんがS字結腸捻転を起こして入院することになったときの報告書ですが、植松はこう書いているんです。《昼食時 口の開きが良くなかった。15:00検温では37・4℃であったためシャワー浴のみの実施とした。16:00過ぎにシャワー浴を終えて脱衣場に戻ってきたところ、腹部全体の膨張に気がつく。その場で看護課に連絡し、相模原赤十字病院に通院の指示を受ける。17:00に相模原赤十字病院に到着し、18:00に入院となる》
渡辺 この報告書のすぐれた点は、どこですか?
T氏 結局、その日のうちに入院したわけですから、利用者さんの症状が進んでいて緊急性も高かったんだと思いますが、そのことに誰も気づけなかった。ところが、植松は「昼食時の口の開きが良くなかった」というささいなことから異変に気づき、検温してみると熱がある。その後も、シャワー浴を終えて脱衣場に戻ってきた利用者さんの様子を見に行ったところ、腹部が膨張している、これはまずいと思って看護課に連絡します。浴室には別の職員もいるはずですが、その人は気づかなかったんでしょう。
渡辺 昼食時から植松は「ヘンだ」と思って気にかけていた。そうでないと、「昼食時─」とは書けないですもんね。
T氏 それと、17時に通院とありますが、この時間帯は入浴介助をして、夕食の準備もありますから、けっこう忙しいんですよ。何か問題が発生しても、普通は見て見ぬフリをしがちなんです。
渡辺 なるほど。
T氏 それと、「原因及び問題点」の欄ですが、ここをしっかり書く職員は、普段からものを考えている職員です。植松はこう書いています。《最近食事を食べる事が出来ていない事が多々見られており、早めの通院を行う事で判断・対応が取れたのではないかと思いました。また、昔からの引継ぎの中にS字結腸念転のかかりつけの病院が無い事。職員がS字結腸念転に対して知識が少ない事が原因と考えられる。今後の対策としては相模原赤十字病院に相談し、定期的な受診を依頼することが必要と考えられる》(筆者注:「念転」とあるが正しくは「捻転」)
 職員が気づけなかった点を冷静に指摘し、今後の対策まで書いています。
 往々にして、「気づけなかった」こと自体を認識できなかったり、「気づけなくて申し訳ない」などと感情的な報告書を書く人が多いんですが、植松は過去の引継ぎがどうだったかも確認した上で、対策を書いている。利用者さんが元気に回復してほしいという思いがないと、こうは書けないと思います。
渡辺 とすると、植松は、職場での自分の評価に対して、不満を抱いていたのではないかという推測は成り立ちますか。
T氏 十分に成り立つと思いますね。

植松聖という人間の不可解な二面性

渡辺 ここまで聞いて、篠田さん(本誌編集長)にお聞きしたいのですが。篠田さんは、植松の接見禁止が解かれた2017年以降、50回以上の面会を重ねてきて、いわば植松を最もよく知り抜いている人ですが、ヒヤリハットから浮かび上がる植松像は、やはり意外ですか?
篠田 そうですね。私が植松との接見を始めた頃に、障害者施設関係者から、彼の犯罪は、障害者虐待の究極の形だと言われたこともあり、彼の支援のあり方や職員時代の植松がどうだったのか、本人にしつこく聞きました。でも、彼は自分の犯罪とやまゆり園の実態を結び付けて語られることに強く反発していた。家族の問題と結び付けて語られることへの反発もあるのですが、いずれにせよそういう話を意図的に避けていました。
渡辺 植松は接見時、篠田さんに、やまゆり園の仕事は《楽な仕事だと思っています。例えば「見守り」という仕事があるのですが、本当に見ているだけですから》と語ったり、《(利用者が)暴れた時は押さえつけるだけですから》とも言っています(『開けられたパンドラの箱』より)。
 こうした植松の言葉をとらえ、「見ているだけ」「押さえつけるだけ」なんて何ごとだと。やっぱり植松ってヤツは、施設職員として不適格者だと言われる根拠になってしまっています。
篠田 支援活動についての植松の捉え方に問題があったのは確かだとは思うけれど、どうしても、ああいう事件を起こした犯人という認識から入っていくから、彼の支援のあり方を仔細に検証していくという作業は十分に行われていないかもしれないですね。
T氏 そこが彼の二面性というか、ヒヤリハットから浮かび上がる植松像と、篠田さんのお話から出てくる植松像が、僕の中で噛み合わないんですよ。両方とも、一人の人間のもつ側面なのですが。
篠田 植松は基本的に、やまゆり園については悪く語らない。彼は自分のしたことを「革命」とか「世直し」だと信じており、家族ややまゆり園の人たちについては、それに巻き込んでしまって迷惑をかけたという思いがあるらしいんですね。
渡辺 僕もトータルで17回、植松と面会していますが、Tさんのいうように、もし職場で冷遇されていたなら、なんで恨みごとの一つも言わないんでしょう。
 普通は、上司に対して「クソったれ」と思ったり、同僚に対しても「なんで俺を認めないんだ」とストレスを感じるはずですが、植松の場合、そうした恨みごとを言わないですよね。それは自分が殺傷した利用者に対しても同じで、よく「ヘイトクライム(憎悪による犯罪)」と言われますが、植松に憎悪という感情はほとんど見当たりませんよね。
 彼は、きっと目の前の利用者に対しては、ちゃんと仕事はしていたし、ぞんざいなことはしていないけど、ただ思想、信条という部分で、「意思疎通のとれない障害者は安楽死すべきだ」という主張に急速に取りつかれていった。まさに思想的犯罪ということかもしれませんが、なんだか人間性が分裂してますよね。

利用者にスクワットを強要 素行不良な職員たち

渡辺 かたや植松は、裁判の被告人質問の際に、やまゆり園の職員が利用者に命令口調だったり、暴力をふるっているのを見て、「暴力はよくない」と先輩職員に言ったところ、その人から「オマエだって2~3年たてばかわるよ」と言われたと証言しています。
 それに対して、入倉元園長は判決後の記者会見で、《暴力をふるっている職員、命令口調の職員、2~3年たったらわかるよと言った職員について、そういった事実は確認されませんでした》と植松の主張を完全否定しています。これについて、Tさんはどう思いますか?
T氏 それは入倉さんが事実を知っているのにウソをついたか、あるいは、部下から上がってきたウソの報告を本当だと信じ切っているかのどちらかですね。
 入倉さんは、僕が津久井で一緒に勤務していた時代は、フロアに現れない人として有名でした。幹部職員で現場にちゃんと入っている人は、数えるほどしかいません。たいてい現場の報告を見聞きするだけで、そんな事実はありませんと言ってしまえば、それで済んでしまう。
渡辺 やはり植松の証言は現実だった?
T氏 利用者さんに「おい、こら、てめえ」という口調で話す職員は、ごく普通にいます。あと、先輩職員で「自閉症なんて気合いで治る」という持論を得々と語る人もいました。
渡辺 どういう意味ですか?
T氏 自閉症の人には、力づくで言うことをきかせればいいと。その人は、もし自分が自閉症の支援論の本を書くなら、1ページ目は「上手な握りこぶしのつくり方」だと言っていたくらいで。
渡辺 うーん……。
T氏 先ほど、植松が「のぞみホーム」に配属されてから、おかしくなったのではないかと言いましたが、その人はまさにのぞみホームの職員でした。
 のぞみホームは、昔からいわくつきのホームで、だから植松がのぞみで、ああいう考え方に取りつかれたのには理由があるんじゃないかと……。
 それも含めて、僕はこれまで素行に問題のある職員をたくさん見てきました。かながわ共同会では年1回、管理職と面談する機会があるのですが、僕は職員の問題事例を文書にまとめて、園長に上申したこともあります。
渡辺 今回、その文書を持ってきていただいたので、ぜひ紹介してください。
T氏 これは津久井やまゆり園時代の先輩職員の事例ですが、《利用者にヒンズースクワットをたびたび強要。利用者が職員の前から脱出を図ろうとして足を滑らせて転倒。頭部を3針ぬう傷を負ったが、後輩職員に「利用者が突然動き出してケガをした」ことにするよう示唆。虚偽の報告書を作成する》。
渡辺 なぜヒンズースクワットを?
T氏 なぜかわかりませんが、自閉症の利用者さんは「反復性行動」をとる方が多いので、スクワットさせておもしろがっていたんじゃないでしょうか。
渡辺 ……ひどいですね。
T氏 あるいは、《業務時間中、フロア内にて携帯ゲームで遊んでいる。上司に見つからないようにと、新人職員にフロア入り口を見張らせる》ということも。
《夜勤当番にも関わらず休憩室におもむき、休日職員とともに飲酒。その際、およそ4時間フロアを無人にする》。
 あと、キリがありませんが《業務時間内のPC作業の頻度が高く、寮内の支援を別の職員に実施させているのが現状。夜勤中に仮眠と称して、午前0時~5時までフロアに現れず。その間の各種業務は相方の夜勤職員が代行》というのも。
渡辺 PC作業とは何のことですか?
T氏 スタッフルームのパソコンで、ユーチューブを見てたりするんです。
渡辺 この報告書は、上司との面談で提出したんですよね。どうなりました?
T氏 あなた一人の証言を信用するわけにはいかないと。それと、そういう場面を見たと言うんなら、あなたがその場で注意しなきゃいけないと。
渡辺 先輩職員に面と向かって注意するなんて、なかなかできませんよね。
T氏 それと、かながわ共同会が指定管理をする愛名やまゆり園(厚木市)に異動してからも、僕は津久井での事例を園長に話して、ちゃんと現場に目を向けてほしいとお願いしたのですが、「津久井の事例を愛名に持ち込むなんて、あなたにはガッカリした」と言われて。同じ系列の園の話なんですよ。でも、「よその園のやっかいごとをうちに持ち込むな」と。それで終わってしまいました。
トイレに長時間座らせる
愛名やまゆり園での虐待
渡辺 愛名やまゆり園でも昨年1月、「利用者をトイレに長時間座らせる」など、複数の職員による虐待が発覚し、厚木市から虐待認定を受けています。
 Tさんは、この事実を身近で見て知っていますか?
T氏 あるとき、僕が夜勤をしていたんですが、喫煙所へタバコを吸いに行こうとして、隣の寮のトイレを通ると、暗いトイレの中で、一人の利用者さんが、拘束板をヒザに載せて座らせられているんです。そして、その2時間後くらいに、もう一回タバコ吸いに行こうとして、トイレをのぞくと、まったく変わらない姿勢で座っている。おそらく、ひと晩じゅう、あのままだったんじゃないか。そういう光景を何回も見ています。
渡辺 要するに、洋式トイレの便座に利用者を座らせて、膝の上に板を置いて、利用者が便座から立ち上がれないようにするということですよね。どうして夜通しトイレに拘束するんでしょう。
T氏 おむつの中にされちゃうと、めんどくさいからですよね。それと、利用者さんによっては、腸閉塞を患っていて、腸の中に食べ物をためないよう、下剤を入れるんです。そうなると、間違いなく便が出るので、場合によっては布団が汚れたり、体を洗ったりしなくてはならなくなる。それを手間だと考える職員がそうしてしまうんです。
篠田 拘束板があるということは、そういう拘束がシステム化されているということですね。
T氏 建前上は、拘束板というのは、上半身のバランスを保てない利用者さんのためにあるんですが、事実上は逃げられないようにする目的で使われていました。
渡辺 何割くらいの職員が、そういうことをやっていたんですか。
T氏 僕が愛名やまゆり園に勤務していた感触でいうと、だいたい3割くらいです。虐待認定されたおかげで、今ではなくなったとは思いますけど。

何よりも失敗を恐れるお役所的な体質

T氏 でも、表沙汰になるような身体拘束や虐待はまだわかりやすいのですが、表に出てこない虐待の方が、実は問題だと思っています。
渡辺 どういうことですか?
T氏 日々のおむつ交換をちゃんとするとか、利用者さんを落ち着いて寝かせるとか、清拭や体位変換をちゃんとするとか、そういう日々の土台がしっかりしていないと、利用者さんも安定して生活できないのですが、かながわ共同会では、そうしたごく当たり前の支援をほとんど重視していないんです。
 それよりも、いかに会議で発言するかとか、外部のセミナーなどで事例を発表するか、あるいは上司にうまくゴマをすって気に入られるかが、出世する上で重要視されるきらいがあるんです。
 例えば、利用者思いの支援をしようとすると、失敗することもありますよね。
渡辺 例えばどういうことですか?
T氏 車いすに座りっぱなしの利用者さんに、車いすから降りてもらう時間をつくったりとか。そうすると、壁にぶつかったり、転ぶ可能性もあります。
 だけど、かながわ共同会の体質というのは、失敗をすると、失敗したことだけがフォーカスされて、「あいつはダメな職員だ」とレッテルを貼られてしまう。
 上司に気に入られるのは、結局何もしない職員です。何もしないということは、失敗しないということなので。
渡辺 よく、かながわ共同会は「県以上にお役所的な体質」といわれたりしますが、そこまで極端なんですか。
T氏 もっと言うなら、利用者さんが着ているポロシャツのボタンをとめようとする人さえ、なかなかいません。服着たなら、それでいいじゃんと。
 朝起きて、目ヤニがいっぱいついていようが、気にとめない職員もいます。タオルを用意して、顔を拭いてあげる職員もいますけど、そういう人は、「あの人、ちょくちょく失敗するんだよね」とか、だんだん隅に追いやられていきます。
 僕が危惧しているのは、新任の職員が入っても、そういう先輩職員の悪いところを学んで、マネし始めることです。そうなると、利用者さんのことを真剣に考える職員がほとんどいなくなってしまう。僕はこれまで何度も提言をしてきたんですが、さすがに心が折れてしまいました。

なぜ施設の職員たちは口を閉ざすのか

渡辺 今回、こうしてTさんが証言してくれていますが、これまで、やまゆり園の職員が実情を語ってくれることはありませんでした。なぜだと思いますか。
T氏 植松の発言を聞いて、大なり小なり自分の“痛い腹”を探られる部分があるからではないかと思います。
 実は、「障害者なんていなくなればいい」と言っていたのは植松ひとりじゃないですし、先輩職員の中には、「彼らが生かされてること自体が、血税の無駄遣いだ」とはっきり言い切るような人もいました。そういう環境で、植松がああした思想に染まっていったという可能性が、誰しもの頭によぎったのではないかと思います。だからこそ、この件は心の中にそっと閉じ込めておこうと……。
渡辺 Tさんがこうして証言をしようと考えたのはどういう思いからですか。
T氏 最初のきっかけは、昨年、神奈川県の黒岩知事が、津久井やまゆり園の検証委員会を立ち上げて、5月に中間報告書がまとめられました。
 それによって、これまで表沙汰にならなかった、津久井やまゆり園の不適切な支援の実態に、ようやくスポットが当てられたわけですが、あれを見て、やっぱりどうにかしなくてはいけないと。
 そのとき、たまたまですが、自分が働いていた園のフロアに、のぞみホームから職員が異動してきたんです。その人が相変わらず「おい、こら、てめえ」という口調で利用者さんの頭を小突いたりしているのを見て、植松のことが再び気になり始めたというか……。
篠田 利用者が暴れたりした場合の防御のための暴力というのはよく言われたりするけれど、そうではなく?
T氏 食堂で利用者さんに、何も言わず平手打ちをかますような職員もいますからね。
渡辺 結局、今の職場環境というのは、職員の人たちが鬱積をため込んでいかざるをえないような環境なんですね。
T氏 職員も病んでるんですよ。結局、利用者さんを閉じ込めたり、拘束したり、そうやって“生かさず殺さず”の状態に置いていることによって、実は自分たちも“生かさず殺さず”の毎日になってしまう。仕事のやりがいも感じられずに、1日8時間なりをムダにしてしまっていることに気づこうとしないんですよ。

●おわりに

 折しも6月末、かながわ共同会の理事3人が退任(草光純二理事長、樋川芳夫常務理事、入倉かおる津久井やまゆり園園長)し、新たな理事が選任された。
 そして8月からは、新園舎として生まれ変わった津久井やまゆり園がスタートすることとなる。
 神奈川県の黒岩祐治知事は、かながわ共同会の理事退任と引き換えのようにして、共同会の指定管理の継続を認めるに至った。しかし、当のかながわ共同会は、理事が退任した理由と、これまでの不適切な支援に対する責任について、いまだ明確に語ろうともしていない。
 県は昨年7月、やまゆり園を含む6つの県立施設を調査する「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」をスタートし、その報告書が今年3月にまとめられたが、そこでは県が、津久井やまゆり園の虐待問題を隠蔽し続けてきた事実についても報告されている。
《県職員は、報告書の対象となった利用者以外にも虐待を疑わせる身体拘束が行われていることを認識しながら、検討対象とせず、それでいてあたかも園全体で身体拘束がゼロとなったかのような誤解を与える文書を作成し、県に提出している。そのことの責任は極めて重大である》――ここまで踏み込んだ報告がなされたこと自体は評価すべきだが、黒岩知事が掲げる「利用者目線」の支援は、いまだ端緒についたばかりである。
 なお、ここに登場した元職員T氏は、7月25日のロフトプラスワンでの「相模原障害者殺傷事件の真相に迫る!」に登場する予定だ(詳細は文末参照)。

相模原障害者殺傷事件の真相に迫る!
7月25日(日)
新宿・ロフトプラスワン
Tel03-3205-6864
OPEN 12:00/START 12:30
●会場は歌舞伎町中心部

【出演】
篠田博之(『創』編集長)
堀 利和(津久井やまゆり園事件を考え続ける会)
渡辺一史(『こんな夜更けにバナナかよ』著者)
雨宮処凛(活動家、作家)
平野泰史(元津久井やまゆり園家族会)
澤 則雄(映画『生きるのに理由はいるの?』監督)
【特別ゲスト】
かながわ共同会元職員(T氏)

《配信チケット》
●通常¥1,500 http://ptix.at/NMFgXO
販売期間6月10日17:00~7月25日12:00まで
※アーカイブは1週間残りますのでご購入いただいた方は
8月1日(日)までご視聴いただけます。

《会場チケット》
●予約/会場+配信チケット¥1,500(別途ドリンク代¥500)
 50席限定
※状況次第では無観客に変更になる場合がございます。
 ご了承ください。
会場チケットはロフトプラスワンホームページから予約↓
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/181453

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抜粋終わり

徽宗皇帝さんの

つまり、高齢者養護施設に勤務していると、「人間が人間に見えなくなってくる」という根本的問題があるのではないか。その対策を抜きにして、あの事件を植松ひとりの個人的問題に矮小化すると、これからも第二第三の植松が出て来るだろう。

て指摘は正しい。

そもそも国家・社会が、この「困難な」仕事に金を出さない・・・


この記事が結構好きで・・。

ただ、女性も結構踏みにじられてきた歴史も忘れてはいけないが「同じことを弱い立場の人間にやり返しているだけで主犯は逃げて嘲笑っている」と私には思えて、フェミニズムも少々嫌なのだ。

「バックシートドライバー症候群」
夫が運転して、妻が後ろの席から指示する現象である。
かつて、家族皆が共に生きて商売をしていた時代は「親父が怠け者でダメだ」などと言うことはなかった(無異論本当にだめな人は駄目であるが)。共に働く自分自身の責任でも有ったからである。
僕が切れる時は分かっていることを妻に指示されるときである。言葉の端々に「アンタ、バカだよね」と念を押されるのである。子供にはお父さんのようにならないように勉強しなさいという。
こんなに頑張っても売上が上がらない、生活は苦しい、年金は足りない。愚痴を言う奥さんのこともわかる。
熟年離婚というのはこういう関係性の内に現れるのだ(笑)。
僕は運が良かった。「格差の方程式」がこの世界を覆っていることに気がついたのである。


能力差って絶対にある。まあつけ足すとそれは何の拍子で変わるかわからん「無常」なのものでもある。

それをどうこう言われても無理なモノは無理・・て昔日は帝政日本の庇護もあって、ダメおやじ~っていっても巷間に言う「だめ」でなく犯罪的ダメ も偉そうに威張り腐っていた。
帝政日本が、その庇護を辞めると、「だめ」でもなかった「現状では低能とされる」ように区分される領域の男性~一時期フェミニストが血祭りにしていた「弱者男性」になると、「モラハラ鬼嫁のいじめ」に哄笑され、なんとユーチュブでも、高評価。

胸糞悪いよな。

そういう精神・思想では、またアホ天皇国の施政が変わると、また「モラハラ鬼夫の嫁イジメ」が喝采を上げるようになるだろう。その時は日本のフェミニストは「弱者女性が悪い」と称賛するだろう。「日本の」フェミニストだけどな。

 僕自身は、植松と同じ職場で働いた経験はありませんが、植松をよく知る同僚の話によると、彼は「バカ植松」と呼ばれて、職場内ですごく陰口を叩かれていたっていうんです。「あれだけ職場でバカにされてたら、そら頭だっておかしくなるよ」と言っている人もいました。

職場から、家庭でも「バカ」と言われてたら、そりゃ、へたすらDVもする・・・て昨今のは嫁に「馬鹿」と念仏のように唱えられる前に、腐っていて殴る糞男もごまんといるが・・

そうでなくても、「馬鹿・アホ」と侮辱され続けていたら、利用者だろうが嫁だろうが、殴り倒すようになる。



結局は、「弱い者いじめ至高のゴッド天皇」のシマに生きる限りに、この「地獄の連環」は、容易に逃れえない・・上級国民は落ちる恐怖を隠すために庶民を食い殺す・・庶民は延々と弱い者いじめに熱中する。
修羅の道で地獄である。

マトモさが残っていた植松は、それゆえに魔道に落ちて行った。道を見ているから魔道に踏み入れてしまった・・道にすら気づかない畜生だけが、今日もイジメを繰り返し同胞を喰い続ける。

まあね・・・・三略に

兵を用いるときの要は、礼を厚くして俸禄を重くすることにあります。礼を厚くすれば智者が集まり、俸禄が重ければ優れた人材も身を投げ出して働きます。ですから賢者の俸禄は惜しまず、功績を賞するに躊躇しなければ、部下は力をあわせ、敵国を破ってくれます。
人を用いる方法は、厚遇するのに爵位を与え、高揚するのに財を与えるようにすれば、すなわち優秀な人材が勝手に集まってきます。接するに礼遇し、奨励するに義を以て接すれば、すなわち優秀な人材は身を投げ出して働くのです。
人材を集めようと思えば環境を整え、人材を働かせようと思ったら見返りを示すことで、そこでようやく人材を得ることができるのです。
逆に言えば、礼を渋れば人材は去り、賞を渋れば人材は働かないのです。どちらも怠らずに行ってこそ、人材は我先にと働くものなのです
清廉潔白の者は、地位やお金では心を掴めません。節度と義の者は、威圧と刑罰で脅すことは出来ません。ですから明智ある君主が賢者を求めるときは、必ずその人物の人柄を見て行動するのです。
清廉潔白な人材を求めるときには、まず自身が礼を修め、節義の人材を求めるときには、まず自身が道に則して行動するのです。そのように自身が修めてから人材を求めるようにすれば、君主としての名を保つことができるのです。

と。

処遇をちゃんとし、銭を出し、礼節をもって、人を使わないと、まともに働いてもらえるわけがない。って。

国家が、そもそも人に金を出し惜しむのだ。そりゃ、ちゃんと働く人は、激減していくはな・・



天皇を殺しつくして 日本解放

天皇の無い  蒼い空を取り戻す


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