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ふわふわした話なのかな

フィリップ・K・ディック著、「逆まわりの世界」(早川書房)を読んだ。以前、電気羊は読んだことがあるのだけれど個人的には世間が言うほど名作なのかな、自分はよく読めていないのかな、と思っていたのでフィリップ・K・ディックは少し避け気味だった。しかし、いつも本屋に行くとハヤカワ文庫のフィリップ・K・ディックの背表紙は目立っていてなんとなく気になっていて、ある日タイトルを順番に読んでいくと「逆まわりの世界」というタイトルがあった。気になって表紙を見てみると黒の背景に白字で時計っぽいデザインの表紙だった。かっこいい。あらすじを見てみると時間が戻る話のようで面白そうだったので買ってみた。

こっからネタバレあり。

この小説は時間が逆転して死んだ人間は生き返り、そしてそのまま若返って子宮に戻っていく世界を描いている。話としては、お墓で誰かが蘇ったときにお手伝いをする仕事をしている主人公が、死んだカリスマ宗教家の復活を手伝ってしまい、その宗教家を手に入れるためにあらゆる組織による抗争に巻き込まれていく話だ。

時間が逆転している面白い世界だが、全ての事象が逆転しているわけではないらしい。動画を逆再生しているみたいにすべてのものが逆再生しているわけではない。すべての人々は普通に生活していて仕事をしているけれど、ただだんだん老いていくのではなく、若返っていくみたいだ。ただ食事は逆転しているらしく、食べたものを吐き出すようになっているみたいだ。この現象が人間だけでなくほかの生き物にも適用されているのかは多分作品内で説明はされていなかったはず。あと蘇った人を殺すとまた蘇るわけではないみたいだった。

というより読んでいてよくわからないところも多かった。若しくは私が読み落としているだけかもしれないが。作中で図書館という図書館を運営している組織があるのだが、ほとんどの登場人物が図書館を怖がっていて行きたがらない。さらに図書館と同じ組織なのか協力関係にある組織なのかわからないが消去局という組織が図書館と一緒に主人公を追い詰めたりする。さらにこれらの組織は武力を持っていたりスパイを雇っていたりして、私たちの知っている図書館とは少し違うらしい。ちなみにこの作品の世界には警察はちゃんと存在しているため、図書館は警察ではないみたいだ。

主人公とその妻が話の中心になっていて、その妻が図書館に連れ去られて助けを送って連れ戻してはまた図書館に連れ去られ今度は主人公が妻をまた取り戻すのだが、結局物語の終盤に妻は主人公の家が爆破されたときに亡くなってしまう。いや結局死ぬんかい、とは思った。運命とはこういうことですよ、ということを表したかったのかもしれないけれど、正直な感想としてはじゃあなんでこんなに妻がさらわれたり取り戻したりして、いったりきたりさせているのかよくわからなかった。

別にお話の流れを読み取るのが難しいというわけではなかったが、話のなかでわからない部分もあったりして結局何が書きたかったのかよくわからないふわふわした話なのかなという感想を正直持った。まあ私が読み取れていない部分も多いとは思う。またしばらくしたら他のフィリップ・K・ディック作品も読んでみようと思う。


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