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【伊豆半島縦断・自転車旅(前編)】横浜〜御殿場〜修善寺〜西伊豆スカイライン

「下田の金谷旅館ってとこに、面白い温泉があってね…」

そんなことを、行きつけの自転車屋さんから聞いて、伊豆への思いが膨らんでいた。

そもそも伊豆という土地が好きだ。
地形はダイナミックだし、沿岸は起伏が激しく走りごたえがあるうえ景色は最高。食も素晴らしい。さらに数々の温泉地。まだ見ぬ景色もたくさんある。

よし。伊豆に行こう。

400kmブルベの練習も兼ねて、横浜の自宅から下田まで御殿場経由でルートを引く。
最短ルートの箱根峠から行かないのは、体力を温存するためだ。
さらにずっと行ってみたいと思っていた「西伊豆スカイライン」も途中に組み込むと、全360km獲得標高4000mのルートの完成だ。

ブルベのチーム版「フレッシュ」が360kmを24時間以内に走り切ることだそうなので、目標は24時間で完走することにした。

この時はこの無謀さに気づかなかった。

新たに導入したアピデュラのトップチューブバックに、補給食をパンパンに入れ準備完了。もちろん温泉用に、替えの下着とタオルも持っていく。

たんまりと補給食が入れらるトップチューブバック。魚肉ソーセージもすっぽり入る、これでコンビニ休憩回数を減らせる。

AM3:00 横浜を出発

横浜の自宅を出発し中原街道に沿って、御殿場を目指す。
横浜は5℃くらいと、まだ暖かったものの、相模原のあたりから急激に気温が下がってきた。
何気なく温度を確認すると2℃。寒いわけだ。

ここにきてベースレイヤーを着るのを忘れてしまったことに気づいた。汗冷えが気になる。
ナビはコスパ最後サイコンIGPにお任せ。
今回は宿泊はしないので、なるべく軽装にした。

足柄の手前、松田町あたりにくるとさらに気温が下がってきた。
横浜は5℃くらいあったのに、どれだけ寒いんだよ……と、気温を見ると「-2.6℃」
「はっ?」

きっとサイコンの表示が壊れてるんだ。
路肩に立つ電号掲示板を見ると「-2℃」

ほんまやん。

どうしようもないので、ダンシングを増やして体温を高く保てるように意識して走る。
(スポーツ腹巻してきてよかった…)

富士山が見えてきた松田町。
足柄から御殿場に抜ける道は旧道をチョイス
距離は多少延びるが交通量も少なく走りやすい
小山町あたりで見つけた可愛いカフェ。妻が好きそうなので、写真だけパチリ。
小山高校のある丘の上で。
マイナスの気温だというのに、手袋ナシで自転車に乗っていたり、女の子も素足スカートにと、若さ全開の高校生たちに圧倒された。

am8:00 御殿場

小山町、御殿場市へと進むと、三島市までダラダラとした下りをひたすら下る。
坂を下っているという感じでもなく、足は回さないといけないくらいの斜度のうえ、向かい風。
うーん。あんまり楽できない。

下りのはずなのに、恩恵をまったく感じさせない御殿場からの下り道。
河津桜だろうか。ところどころで桜が咲いている。春だ。

下ること約30分。
三島に到着。

am9:20  伊豆へ

気づけば気温もだいぶ上がり、走りやすくなってきた。
ロードバイクを始めて3年くらい経ったころだろうか、友人と2人で三島から伊豆をぐるっと周ったことがある。三嶋大社を見ながら懐かしの記憶が浮かんできた。

懐かしい記憶。
この時はサドルバックに荷物をパンパンに入れていた。
伊豆の最南端の集落「中木」で宿泊。
ここからヒリゾ浜に船が出ている。
中木の民宿。これだけ出て宿泊費込みで5000円。最高だった。

さて三島からは、伊豆の真ん中を縦断する136号線に沿って修善寺へ向かう。
前回来た時も思ったのだが、伊豆の北部は山の形が面白い。
日本昔的なボコボコした山が連なっているところが、ちょっとだけ別世界。

ボコっとした山が連なる伊豆北部
急に出てくる断崖絶壁
昔は水害の多かった狩野川。
このすぐ脇に水死者供養塔が建っていた。
下田街道と修善寺街道の分かれ道。
左に行くと小説「伊豆の踊り子」で主人公がヒロイン・薫と出会う湯川橋がある。

am10:20 修善寺→戸田峠

ようやく修善寺の入り口に到着。

自宅を出てから約125km。
ここまでコンビニ休憩も取らず、写真撮影タイム以外、ほぼノンストップで来れた。
40分間隔くらいで、カロリーメイトや羊羹、竹輪などを食べ続けたせいだろうか。
不思議と疲れが無いということは、この補給スタイルが性に合っているのだろう。
(S.Kさん、りっけいさん、情報ありがとう。https://www.youtube.com/live/raDCw1qF6B8?feature=share)

ひとつ気になるのが、右足のアキレス腱から痛みが出ていることだ。
過去にも同じようなことはあったし、きっと放っておいても大丈夫だろう…。(フラグ1)

修善寺市街の入り口

さて、修善寺に入り修善寺戸田線をしばらく進むと、戸田峠へのヒルクライムが始まる。
その先が、最初の目的地「西伊豆スカイライン」だ。
(戸田と書いて、「へた」と読むそうだ)

以前、ショップの店長さんに、西伊豆スカイラインを走りに行くことを伝えると、

「戸田峠だよね。御愁傷様です。笑」(フラグ0)

なんなんですかそのフラグは。
そのときから既にフラグが立っていたことに気づくのはもっと後の話。

修善寺市街から、「修善寺虹の郷」方面へ進むと、さっそくヒルクライムスタート。
なかなかの斜度だ。

時間とお財布に余裕があったら入りたかった釜飯屋さん。サイクリストウェルカムのようで、ラックや空気入れも置いてあった。
なかなかの斜度。

虹の郷まで上ると、一旦斜度は緩くなるが、後半からが一気にきつい上りがやってくる。
ところどころ景色のいいポイントもあり、富士山が見よく見える。
途中に、キャンプ場なんかもあり、自転車仲間と合宿なんかしたりしたら楽しいだろうなぁ…なんて夢が膨らむ。

急に景色が開けて、「すご〜い!」と大きな声を上げると、そこには写真撮影中のサイクリストさん。(恥)

50分ほど上ったころだろうか、道端にトレッキング用のストックが落ちていた。
目を上げると休憩所のような施設が見えた。

「休憩がてら預けてくるか」

拾ったストック

休憩所こと「だるま山レストハウス」で落し物を預け、水分補給。
レストランのほか、コテージもあり宿泊もできるようだ。
奥に展望台があったので、覗いてみることに。

だるま山レストハウス。
わぉ。
湖に浮いて見えるような富士山。
初めて見る景色につい興奮してしまう。

しばし景色を眺めていると人も増えてきたので、先に進むことに。

「展望台があったのだから、峠はきっももうすぐ。」
そんな甘い考えは通用しなかった。
痛む右のアキレス腱を左足で庇いながら(フラグ2)、坂を登っていくと、ようやく峠が見えてきた。

am11:47  西伊豆スカイラインへ

修善寺から上ること1時間10分。
店長さんの「御愁傷様」の言葉を噛み締めながら、無事到着。
残念ながら期待していたような景色は特になかった。

この三叉路から、戸田港と西伊豆スカイラインに行ける。

さあ、ようやく西伊豆スカイライン。
やっと楽しみにしていた絶景に与れる。
……というのは、妄想で、ここから更に上りが続く。

ちゅくしょう。

「どんだけ上らせるんだわ」

ヒイヒイ言いながらペダルを漕ぐこと10分。
大きく視界が開けてきた。

自転車乗りならこの道のワクワク感がわかると思う。
絶景の匂いがする。
左を見ると伊豆半島が反対側までよく見える。
この先で振り返ると…
ものすごい絶景が…

言葉が出なかった。

駿河湾に浮かぶ富士山、さらに左奥には雪を被ったら南アルプス連山。

自転車を止めると、草を揺らす風の音以外、まったくの無音。

心地いい。

戸田港や奥には日本平も見える

おもむろに草むらに座り込み、バッグから取り出した羊羹をそっと齧ると、甘さがじんわり身体に染み渡る。

あぁ。美味しい。

広角レンズでの一枚

それにしても不思議な景色だ。
高い草木がなく、まるでヨーロッパのような道なのに、目前には海が広がり、奥には富士山が大きくそびえ立つせいで「ザ・にっぽんの風景」という感じもする。

ちょっとした異世界だ。

こんなところに、横浜から自分の足だけで来た。
その達成感と満足感だけでお腹いっぱいになる。このままDNFしたっていいくらいの気持ちだ。(フラグ3)

トレッキングだろうか、歩いてきたご夫妻に「どちらから?」と声をかけられた。
「横浜からです」と伝えると、目をまんまるくして驚かれる。
そりゃそうだ。なんなら自分ですら驚いてる。

ここまで横浜から約135km、時間にして約9時間。
ここから、天城を越えて、下田へ。そして海岸線に沿って横浜に帰る。

全然イケる。

この時は、足の痛みを忘れて、次に向かう温泉のことばかり考えていた。

盛れて(?)撮れた自撮りをここで供養。

後編へつづく。

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