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【伊豆半島縦断・自転車旅(後編)】西伊豆スカイライン〜天城〜下田

西伊豆スカイライン

前編はこちら

「最高の景色だ…」

横浜〜御殿場〜修善寺と走り、現在「西伊豆スカイライン」を堪能している。

さて。そろそろ行くか」

次なる先は風早峠。
西伊豆スカイラインは、戸田峠と船原峠を繋ぐ稜線。まずは尾根沿いに南下してい船原峠を目指す。

伊豆半年のちょこっと左に飛び出てるあたりを走行中

12:20 戸田峠から船原峠、そして風早峠へ。

船原峠までは基本的に下りなので、ダウンヒルを楽しみながら走る。
まあこれが、気持ちのいい道なのだ。
高原らしい道を、伊豆半島の大地を見ながら下っていく。
平日ということもあって、車もほぼない。

逆に、船原峠から戸田峠へ向かう道だったら、海と富士山を見ながら走ることになるのだろうか。
そっちも気になるところだ
(ただ、逆は上りになるから爽快感は薄れるか)

ところどころで開けた展望台や駐車場がある。

船原峠へはほぼ下りなので、あっという間に走りきる。
特に展望台のようなところも見当たらなかったので、立ち止まらずに風早峠に向かう。

次の峠まではまたヒルクライムだ。

戸田峠ほどではないが地味にキツい上りが続く。

なんだろう。
左膝が痛い。

右足のアキレス腱を痛みを和らげるため、左足に力を入れて走っていたのだが、これが裏目に出たか…。
困った。まあ、この先には長いダウンヒルもあるし、下田まで行けば温泉にも浸かれる。

「なんとかなるだろう」

そう言い聞かせて、軽いギアでのんびりと風早峠へ向かう。

風早峠
ここもなかなかいい景色
風早峠から、伊豆内陸へ向かう

13:10 風早峠〜伊豆市〜道の駅「天城越え」

「膝が…痛い」

風早峠を上り切ったころには、確実に痛みを感じていた。

次は下り…足を休められる!
きっとここも、美しいダウンヒルが楽しめる。

気分を少しでもプラスに持っていき、ダウンヒルをスタート。

ん?

走り出すと、道がどんどん狭まってくる。
待った待った。

一車線なうえに、落ち葉も枝もそこらじゅうに転がってるじゃないか。

ルートを引いた時はまったく気づかなかったが、いわゆる舗装された林道だ。
大きな採石場まである。

「船原峠あたりで大人しく下ってしまえばよかった」
そんなことを考えながら、下ること20分。伊豆半島を縦断する414号に到着。
414号にぶつかるあたりが、湯ヶ島温泉の地区のようで、日帰り温泉も多数見つけることができた。

「ここで一度休んで行くか…」
という誘惑にも駆られたが、温泉は下田と決めている。
くじけずにがんばろう。

414号に入ると天城まで上りが続く。
いわゆる「天城越え」だ。

旧道への案内看板

どういうわけか、旧道をルートに入れてしまっていたようで、途中脇にナビをされる。

看板前でしばらく悩んだものの、ちょうど414号も渋滞していたところだったので、これはこれでいいかと、旧道へ入ってみる。

おお。
おおっ!?
おぉ〜。
(グラベルバイクであればもっと楽しいかもしれない)

さすが旧道。荒れている。
ただグラベルはけっこう好きで、これはこれでとても楽しい。

ガタガタした道を、枝を踏んでしまわないように慎重に登っていく。
もちろん、足首も膝も痛いままだが、ただ、人も車はいないし、気分はとてもいい。
森林浴といった感じだ。

一度旧道を抜けると、また414号へ合流。
森の中には旧道と思しきトレッキングコースも見えるが、さすがにそこまでして走ろうとは思わない。

しばらく上ると、「道の駅 天城越え」に到着だ。
横浜から走り始めて、最初のまともな休憩。
売店に入り、手作りおにぎりとコロッケを食べて英気を養う。

ちゃんとサイクルラック完備
作り立ての温かいおにぎりは幸せの味がした。コロッケは…じゃがいもだけって味で、正直イマイチ。ただ気分は間違いなく上がる。

自転車を止めていると、ツアー客と思しき壮年の夫婦に話しかけられた。横浜から走って来たと答えたときの、奥さまの反応は、それはもういい反応で、自転車乗りとしては大満足。

ストレッチをして、足を整えると、次なるボス「天城越え」に向かう。

14:40 天城越え〜下田・金谷旅館

走り出してすぐに見えてくるのは、たくさんのわさび田。
そういえば、先程の道の駅にもわさび屋さんが賑わっていた。

よっぽど水が綺麗な土地なのだろう。
あとで聞くと、静岡本土の方のわさびともまた種類が違うらしく、この地方独特の風味を持つわさびだそうだ。

バッグに余裕があればお土産として買っておけばよかった。

世界一のわさび田(と書いてあった)
確かにスケールが普通の棚田

しばらく上ると、旧道への入り口が見えてきた。
ルートは新道をまっすぐ指している。

左に入ると旧道に行ける


「旧道走るの大変そうだし、新道のままでいいや」

そう思って上ると、3分も経たないうちに新天城トンネルが見えた。

「えっ?こんなに近いの?」

……じゃあ旧道も楽なんじゃない?
せっかくここまで来たんだし行ってみれば?

悪魔のささやきに、応えるように、気づいた時にはUターンして、旧道の入り口に立っていた。

来てしまった。

足が痛いことよりも、思い出と経験を優先してしまった。
旧道の入り口に立って、いささか後悔したものの、ここまで来れば旧道を走った方が幸せなはず。

「見た感じ舗装されているし、走りやすいだろう。標高もきっと大したことない。」

そう信じて自転車を進める。

うっわ。
やっちまった

やっぱりグラベル&ダート!!

パンクが気がかりだが、とりあえず28cにしていてよかった。
バイクコントロールは上手い方ではないが、砂利が大きいところでは体重を抜きながら、グラベルを進む。

途中何度か車ともすれ違ったりもしながら、慎重に上ること15分。

トンネルだ。
明治時代最長のトンネルとして重要文化財となっている

怪しげな雰囲気のトンネルの入り口が見えた。

無事パンクすることなく来れたことに安堵して、しばし休憩。
人は誰もいない。

静かな観光スポットだ。

「行ってみるか」

明治時代に作られた中で最長の石造のトンネル。 
きっといろんな出来事を見守ってきたに違いない。

心霊スポット、なんて話も聞いたことがあり、内心ビビりなが中に入ると、趣きのある情景が真っ直ぐ伸びていた。

美しい。

レトロで可愛らしいランプが並んでいるからだろうか、内部は思ったよりも明るい。

壁面も丁寧に作られており、不気味さよりも荘厳さが際立っていた。

「ディズニーシーにこんなとこあったな…」
なんて安っぽいことを考えたりしながら、気分はインディージョーンズ。

自転車を降り、しばらく歩いたりしながら、約100年前の風景を楽しんだ。

映える。

トンネルを抜けると、しばらくグラベルを下る。414号に戻ると、河津町まで最高のダウンヒルが始まる。

道幅も広くカーブもさぼどキツくない非常に下りやすい。
こういう場所は車よりも速い速度で下れたりするもので、あっと言う前に先行する車に追いついたりする。

さて、天城からのダウンヒル、ここの見どころはなんといっても「河津七滝ループ橋」。
「ゆるキャン」の聖地でもあるらしいこの橋。

前後を車に挟まれながら「うひょー!」なんて叫び声を上げながら、ぐるぐると下っていく。

他では味わえない、言いようもない興奮を味わった。

河津町らしく河津桜が咲いていた

このまま、道なりに進むと河津市街に入るのだが、目的地は下田。

ループ橋から10分ほど下ったところで、下田方面へと舵を切り、ヒルクライムコースのような細くて暗い道へと案内される。(これがそのまま414号らしい)

ルートを引いた時は、川沿いなんかをたどりながら下田へと続くものだと思っていたのだが、これがけっこうな上り。
天城、河津と下田を繋ぐ、海沿い以外の唯一の道だろう。車通りもなかなか多い。

夕暮れも迫ってきた。そして足が痛くて仕方がない。

まじか

「勘弁してくれー!」

延々と続く上りに痛みのあまり弱音を吐いてしまうが、もちろんひとり。
痛みなんてなければ、こんな坂、屁でもないのに。

徒歩と変わらないくらいのゆっくりとしたスピードで、よろよろしながら暗くなる峠を上っていく。

もう押して上ろうか…と考えていると、トンネルが見えてきた。
「峰山トンネル」

トンネルを抜けるとようやく下り入った。

ほっ。

下りといえども、足は回さなければいけないくらいの下り。

「もうお風呂に入ったら下田から輪行して帰ろう。そうしよう」

もう気力は限界だった。
痛みに耐えてながら下ること20分。
ようやく目的の温泉旅館が見えてきた。

自転車雑誌でも紹介されるほど有名な温泉
昔ながらのレトロな造り

駐車場には、まあまあの数の車も止まっており賑わいを感じさせる。

この温泉の見どころはやっぱり、巨大な檜造の浴槽。湯量もそれだけあるということだろう。
深さも胸元近くまであり、泳げるし、泳いでいいらしい。
(もともと泳げるように作ったようなことも聞いたことがある)

大檜浴槽は男湯のみのようで、女性にもこの大浴槽を堪能してほしいと、女湯から男湯のみ行けるようになっている。(男湯から女湯には行けないように専用の鍵があったり、もちろんタオルや湯着を来て入ってもよかったりと、そこは配慮が効いているようだ)

もちろん別に何かを期待したわけではないし、なんなら一応わたしは妻帯者だ。
というかこのご時世だろう、特に誰もいらっしゃらなかった。

レトロな休憩スペース
昔ながらの旅館といった感じ
宿泊者向けに家族風呂もあるそうだ

温泉でストレッチとマッサージをひて疲れを癒すと、だいぶ気分も良くなってきた。
足の痛みも少し引いてきたように感じる。

「とりあえず、下田駅まで行って考えるか」

暗くなった下田を駅目指して走っていると、いつのまにか海岸線まで来てしまった。

「…あと150キロだし、行けるところまで行ってみるか」

そんな気分になり、コンビニで補給したあと、まずは伊東までを目標に走り出した。

当然のごとく真っ暗

海岸線なので、登り下りが激しい。
風呂上がりに走る、静かな海岸線は思った以上に走るのが気持ちいい。

ところが、多少はマシになったと思っていた足があっという間に痛み出した。
体力はまだまだ残っているのに、痛みに耐えられない。

「つらい」

ふと、前をみると

→伊豆稲取駅

乗り換え検索をすると、あと15分で電車が来る。
足の痛みも我慢の限界だ。
むしろ、これ以上走ったら今後に響きそうだし、せっかく思い出が、いい思い出にならない。

「ここまでにするか。」

伊豆急行
フォークががっつり出てしまっているのは、お許しいただきたい。(後で直しました)

急いで輪行袋にまとめて、電車に乗った。

大阪→横浜ライドに続き2回目のDNF。
20代はなんとしても走り抜いてやるという気合いがあったけど、「30代は無理をしない」ということが良くも悪くも身についてきたように思う。

結果は大事、けれども身体はもっと大事。

さて次の旅はどこにしようか。

※このあと2週間近く痛みが引かず、格闘するのはまた別のはなし。

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