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富山デザインコンペティション 傾向と対策 2019年度版

皆さん、こんにちは。
プロダクトデザイナーの三島です。

今回から、個別にデザインコンペの傾向と対策について話していきます。

第1回目は、富山デザインコンペティションの傾向と対策をしていきたいと思います。ただ傾向と対策は毎年していますが、年々変化するので今回は最新の2019年度版の傾向と対策を考えていきます。


①主催について

プロダクトデザインなら≪富山デザインコンペティション≫
ここから様々なプロダクトデザインが商品化されています。自分のデザインを商品化し、商品を世界に発信したいプロダクトデザイナー必見のデザインコンテスト、デザインコンクールです。

全国初の「商品化」を前提として1994年にスタートした、非常に歴史のあるデザインコンペです。これまでに多くのヒット商品を生み出してきましたし、企業とデザイナーのマッチングの場としての役目もあります。

デザイナーになる為の登竜門である、富山デザインコンペティションの主催は、デザインウエーブ開催委員会(富山県、富山市、高岡市)になります。つまり富山県の地場産業や特徴に密接したデザインコンペだと言えます。

富山県の地場産業は数多くあり、その代表が高岡銅器を始めとした銅、アルミ、錫などの鋳物。400年も前から鋳造技術を用いて仏具製造で積み重ねてきた、鋳物技術。他にも、ガラス・漆器・彫刻・和紙など

そして富山には、立山連峰・チューリップ・ホタルイカ・鱒寿司・シロエビなど名産物や特産品があります。これらをモチーフにしたり、ヒントにデザインをすると、富山デザインコンペらしいデザインになります。

キーワードは「富山の地場産業」「商品化」


②テーマ

2019年のテーマは、「編みなおす」
※素材、技術、文化などを組み合わせる、融合する、再編集するなど、様々なものを“新しく編みなおす”ことによって、新たな価値を創造する商品やプロジェクトプランを募集

2015年 地域の魅力を伝えるスーベニア
2016年 欲しい!共感するプロダクト
2017年 道具と生活
2018年 素材と加工とデザイン ─ この先にあるプロダクト

去年まではプロダクトデザインらしいコンペでしたが、今年からプロジェクトの要素が加わり、コトとしてのデザインも求められるようになります。つまり、プロダクトとしての完成度とプロジェクトとしての広がり(発展性)の両方を持つ、デザインが求められます。

そして今回のテーマである「編みなおす」から、マテリアルリサーチの面も強く反映されることだと思います。今までに廃材になっていた素材や注目されていなかった素材を実験検証し、新しい用途を提示でするアプローチが増えそうです。

キーワードは「プロジェクト」「マテリアルリサーチ」


③過去の入賞作品

2018年の受賞

画像1

2017年の受賞

画像2

2016年の受賞

画像3

(富山デザインウェーブから画像を引用しています。)
https://dw.toyamadesign.jp/archive_item-list/?de_archive_item_cat=cat02

過去三年分の受賞作品は、必ず見ておいた方が良いです。昨年までの受賞作品とは言ってしまえば、「答え」です。つまり、このデザインコンペで主催と審査員が求めているのは、過去のグランプリと非常に近いものになります。それはデザインやアイデアという意味で近いという意味ではなく、方向性や完成度、視点の面白さとして近いという意味です。

まず、このデザインコンペはプロダクトとしての完成度が求められることが分かります。また、テーマの問いに対する密度や深さを求めているのかがわかります。そして視点の面白さも評価され、今まで注目されていなかったプロダクトをリデザインする手法も求めれています。(ダンベル・ボックスオープナー・鏡)

また近年のグランプリが全て、鋳物・金属であることも注目しましょう。富山の地場産業である鋳物は、一次審査通過後に試作の協力をしてもらえることも多いです。それゆえに試作の完成度も高まり、商品化の実現可能性を提示することもでき、入賞しやすくなります。

キーワードは「プロダクトとしての完成度」「鋳物」「リデザイン」

④審査員

2019年の審査員は、以下の方々。

秋山かおり(デザイナー、STUDIO BYCOLOR 代表)
吉泉 聡(デザイナー、TAKT PROJECT Inc. 代表)
岡 雄一郎(富山県総合デザインセンター デザインディレクター)

今年度から審査員が大きく変わり、秋山さんも吉泉さんも、デザイナー業界では第一線で活躍している方で、年齢でいれば以前よりも若い方が審査員となりました。

お二人に共通していることは、デザイナーの役割を広げている方々という印象があります。形や色、機能、コンセプトなど製品開発など今までのデザイナーの仕事だけでなく、デザインプロセスやデザイン思考を用いて、様々な分野のプロジェクトにまで拡張し、価値創造や課題解決を行っています。

またお二人ともMaterial Researchと呼ばれる素材研究に精通しています。今まで焦点に当てられていなかった素材を実験したり、廃棄されてしまうような素材を再利用したり、素材や技術の新しい使い方の提案をするアプローチになります。大事なことは、素材研究を通して実験や試行錯誤し、素材の可能性や魅力を引き出し、新たな用途へのきっかけを提示することです。

キーワードは「デザインの拡張」「マテリアルリサーチ」


⑤応募人数

毎年 220 点程度の応募があり、一次審査を通過するのは12点です。倍率で言えば、18倍ほどになります。他の有名なデザインコンペに比べると、応募者の数は少ないように見えますが、プロダクトデザイナーや卵が数多く参加しているデザインコンペだと言えます。

2015年 226点
2016年 252点
2017年 227点
2018年 228点

以前から言っている通り、少なければ簡単という訳ではありません。応募人数によって、応募作品の見せ方などを変えていった方が良いです。

応募人数が少ない場合は、最初からじっくり審査される傾向にあります。つまりは、インパクトあるヴィジュアルというより、中身の濃さや深く掘り下げるなどを優先したほうが通過しやすい傾向にあります。

キーワードは「応募人数は比較的少ない」「中身は濃く、深く」

⑥最後に

キーワードをまとめると、こんな感じになります。

「富山の地場産業」「商品化」「プロジェクト」「マテリアルリサーチ」「プロダクトとしての完成度」「鋳物」「リデザイン」「デザインの拡張」「応募人数は比較的少ない」「中身は濃く、深く」

これらの情報を参考に、来年応募してみたらいかがでしょうか?



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