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ものを「作る」と「売る」話

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地場産業・伝統工芸・量産品の「作る」と「売る」に関する記事をまとめています。
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#伝統工芸

三味線をデザインするために、三味線を習い始めた話。

みなさんは三味線を弾いたことがありますか? 普段の生活では見かけることも少なくなりましたが、誰もが三味線を手にしていたという時代も日本にはありました。例えば、カラオケのない時代では伴奏は三味線というのがお決まりで、日常的によく見かけるものでした。 ただ時代と共に、三味線を習う人は減りつつあります。同時に三味線を作る職人さんも、どんどん減りつつあるというのが現状です 自分も今までは三味線とは関わりが無かったのですが、縁あって何年も前から東京三味線職人さんと仕事をするように

商品の価格はどうやって決めるのか。消費者目線で、値段を決める方法を考える。

世の中のある「商品」には、すべて値段が決められています。しかし、いざ自分が決めるとなると、想像以上に難しいです。 価格は、消費者にとって商品を選ぶ上に最も重要な情報の一つだと言えます。つまり、値段が少し変わるだけで消費者の反応も大きく変わり、売れる売れないが決まると言っても過言ではありません。 出来る限り、その物の価値を下げずに、多くの人に買ってもらうような金額にしたいですが、価格が安いと売れるけど利益になりませんし、高いと売れません。 価格を安く設定しても、客観的に見

コロナの影響で、地場産業や伝統産業はどうなるか。ピンチかチャンスか

コロナの影響はものづくり業界、伝統産業にも影響が大きく出てきています。 具体的に言えば、新商品の発表でもある展示会が無くなり、バイヤーや新規取引の開拓が出来なかったり、百貨店などで行われる伝統工芸の催事が中止になり、販売自体が急激に減ったりしています。 この自粛や不況が続いていけば、必需品以外のモノは売れにくくなって、小さな地場産業はさらに苦しくなっていきます。この影響で倒産や廃業が加速してしまうのかも知れません。 この自粛中に売り上げが伸びないことは、一時的に経営は厳

売れることから全てが始まる

近年、ものづくり業界全体でストーリー重視の流れがあります。 また伝統工芸の業界でも、売れなくてもいいから、まずストーリーや思いを伝えるというのが大切という人が最近増えています。その重要性もわかりますが、こう言っている人達が生産者側であることが少ないと感じます。 つまり、外から見るのと、中から見るのとでは実状が大きく異なります。ストーリーや思いを知ってもらうことの大切ですが、もっと大事なことがあります。それは物が売れることです。 職人やメーカーという生産者の立場であれば、

良い販売員を見つけるか育てるか、それとも自分が販売員になるか。

前回、モノを作ることと同様に、モノを売ることの大切さを話しました。実際、消費者にモノを売るのは誰か。それは百貨店やセレクトショップなどの小売店などになります。最近では、オンラインショップなどもあります。 もっと細分化すると、小売店の中にいる販売員さんが消費者と会話やセールスをし、販売していくことになります。つまり、販売員さんのセールストークや能力がモノが売れるかにも影響してくると言えます。 その販売員さんがどれだけ製品について知っており、お客さんに説明できるかで、その製品

物を作るのも大変だけど、物を売るのも同じくらい大変。

デザイナーや職人さんは今までこの売ることをあまり注力せず、作ることばかりに専念していました。その結果、伝統産業や日本の製造業は衰退していき、デザイナーと職人さんのコラボは失敗することが多く、ものづくりは盛り上がりが欠けてしまいました。 大前提として物を作るのも大変です。ただ物を売るのも同じくらいに大変だということです。大事なことは、良いものを作り、ちゃんと売る。今までの製造業は、良いものを作ることができていましたが、ちゃんと売るまでを繋げられていません。 地場産業に関わる

組紐の主な用途とは?

せっかく組紐の先行販売を始めたので、組紐について書いていきたいと思います。まず組紐の主な用途は、何かご存じでしょうか?組紐と言われると、映画「君の名は。」などで有名になりましたが、実際に何に使われているか知っていますか? 実は、和装の帯締めなんです。 帯締めは、和装で帯を固定するのに用いる紐です。結びやすくほどけにくいという特徴を活かし、組紐は和服の帯締めに用いられることが主な用途になります。現在では、他の用途としては髪留め、アクセサリーなどとして使用されています。 ち

東日本大震災から9年が経った今日、人を守るものを作るという思いから、光る組紐が生まれました。

3月11日。 今から9年前の今日、東日本大震災が起こりました。 この9年間に様々なことが起こり、時代も大きく変わろうとしています。 その中で忘れてはいけないこと、今できることがあります。 当時19歳だった自分はデザイナーとなり、ものづくりに関わっています。 いま、その自分ができることは、防災のためのものづくりをすること。 9年が経った今日、人を守るものを作るという思いから、 光る組紐を生み出しました。 「蛍組紐」 創業130年の組紐工房 龍工房が手掛けた、 防災にも

創業130年の組紐工房が手掛けた、防災にも役立つ、光る組紐ブレスレット。

明日、3月11日という日に合わせて、 組紐の先行販売(クラウドファンディング)を開始します。 創業130年の組紐工房 龍工房が手掛け、 プロダクトデザイナーであり防災士でもある三島大世が考えた、 光る組紐ブレスレット「蛍組紐」 3つの特徴 ①糸から紐を組む、日本古来の伝統技術である組紐を身に付けられる。 ②熟練の組み技術で、蓄光撚糸を組んだ組紐は、暗所で蛍のように光る。 ③世界的なヒット映画「君の名は。」の組紐を監修し、某ワールドカップのメダルの紐も手掛けた龍工房。 リ

工芸品と量産品における「用の美」

「用の美」という言葉を知ってますでしょうか? 生活用品として使われていた道具は、使われているときが一番美しいと言えます。そこには装飾性などはなく、純粋な機能があるだけ。実用性の中に美しさを見出します。 1926年に柳宗悦氏らによって提唱された「民芸運動」から生まれた言葉で、日常的な暮らしの中で使われてきた日用品に「用の美」を見出し、新たな価値を称えました。これらの多くは工芸品とも民藝品とも言われています。 プロダクトデザインとの関係用の美は、プロダクトデザインとも結びつ

職人の世界は分業制

職人の世界は基本的には分業制で、製品として完成するまでに多くの工程に分かれており、その一つ一つにその専門の職人が存在しています。つまり、一人で完結する仕事ではなく、協業して成り立っていると言えます。 例えば、陶磁器。ひとつの焼き物が完成するまでに、陶土屋、型屋、生地屋、窯元など非常に多くの職人が関わっています。 なぜ職人は分業制になっているのか?というとそれぞれの工程が、非常に高い専門性を必要とするので、1人前になるのに10年かかるとも言われています。つまり、分業せざるを

職人や生産者にとっての、卸問屋のメリット・デメリットについて

卸とは、「職人・生産者」と「小売り」を繋ぐ役目を担っています。 具体的な商品の流れは、卸業者は生産者・メーカーなどから仕入れた商品を、小売店に販売します。そして、小売店は消費者に販売します。 また小売業の各店舗に商品を安定供給するために、卸問屋が一定の在庫を抱えています。それにより、小売業者が必要な量の商品をすぐに提供できるという物流の役目があります。 つまり、「卸」とは商流と物流の両方があると言えます。職人・メーカー・生産者目線での、メリット・デメリットについて書いて

ものづくりに関わる人たちにとって、一番の課題は現代の価値観

特に伝統工芸にかかわる人たちにとって、一番大きな課題は販路とか品質ではなく、現代の価値観だと言えます。 安いほうが良い、モノにこだわらない、モノを持たないというこの価値観がある前提でものづくりしないと、ただ良いものを作っても売れません。 物にこだわらないこれはライフスタイルの変化といっても良いかと思います。少子高齢化、戸建てからマンション住まい、晩婚化など、昔と比べて生活様式も大きく変化しました。 ライフスタイルが多様化したと言えば分かりやすいかも知れません。独身でお金

自分が本当に欲しいモノは、現地で職人さんから直接買う。

自分が本当に欲しいモノは、なるべく現地で職人やメーカーから直接買うようにしています。特に工芸品に関しては、その産地で買うようにしています。これにはいくつか理由があるのでご紹介します。 ①好きなものを選ぶことができる。職人が手作業で作ったものは、質はどれも高く同じなるように作られていますが、一点一点違いがあり、個性があります。 例えば、木製品だと一つずつ木目も違いますし、陶磁器でいえば窯の状態や釉薬の掛け具合、土の収縮率で少しづつ違いがわかります。漆器の塗りも刷毛や生地によ