もしも、鳩が鳴いたなら。【第57回北日本文学賞3次選考通過】
いつのまにかこんなところまできていた。わたしがたたずむのは白いたてじまで結ばれた横断歩道、ぱっぽぅ、ぱっぽぅ、のんびり鳩が鳴いている。信号待ちの交差点、吹きでるメロディに背を押されのろのろ進む。
向こう岸には祈りを捧げるよう、黒い日傘がふたつ並んでいた。だれ? 風にはためかない、身にきっちりついたワンピース。そう、たしか、お葬式のときに見たのだ。横目で知られぬように会釈しながら。もしかしたら、遠い知りあいかもしれない、わたしは通りすぎてゆく。
陽射しはわたしをこげつかせ