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夢をみるということ

『星に願いを、そして手を。』という本を読んだ。青羽悠さんという人が、高校生のときに小説すばる新人賞をとった作品だ。

大学の近くの本屋でこの文庫本を見つけ、タイトルに惹かれて購入した。メルヘンチックなタイトルに加え、裏表紙に書かれていた「青春群像劇」という言葉を見て、たまにはこんなのも読んでみるか、と偉そうな考えを抱いてレジに持っていった覚えがある。「宇宙に憧れる四人」、「夢を諦めて町役場で働く彼」という言葉に惹かれたというのも事実だ。

しかし、自分より年下の作者が、さらに若い頃に執筆し、その上賞までとった作品であるということが、なんとなく気に入らず、本棚に突き刺したまま放置していた。

だが、こんなくだらない理由で本棚の肥やしを増やしていた自分を責めなくてはならない。寝る前に少しだけ読んでみて、つまらなかったらやめようという気持ちで読み始めたところ、左手の指で押さえている紙の厚みがみるみる減っていき、深夜4時を回ったあたりで最後まで読み切ってしまった。

久しぶりに一冊を丸々一晩で読み切った。

文庫版で解説を書いている柴田一成先生が繰り返し主張しているように、16歳という若さでこのような作品を作り上げたことに、ただただ感心する。

初めは登場人物の多さに苦手意識を感じたが、今では彼ら全員がとても愛おしく感じる。理奈の苦悩には親近感が湧いたし、裕人の人生には自身の将来を重ねることができた。河村さんは今までの自分を見ているようで、でも彼女は私にはない強さを持っていた。

彼らのように、静かに強く生きる人たちに、出会えるような自分でありたいと思う。

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