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鍛造(たんぞう)って何?

私は、かつて平鍛造の代表取締役社長を務めておりました。
社名の「鍛造(たんぞう)」とは、簡単にいうと「鍛冶屋」の現代版です。
真っ赤に熱した鉄を、火花を散らしながらトンカン叩いて鍛え、刃物や鉄製品を作っていた技術、その最新版のことです。
 
私の会社は業界では超有名でした。
特に超大型のリング形状の鍛造を得意としていました。
 
たとえばパワーショベルは上半分がぐるぐる回転しますよね。
そのための軸受(じくうけ)に使われるのです。
風力発電用の大きな風車が回っている根元の部分や、海底油田を掘るときのパイプの継ぎ手などにも使われています。
 
鉄を熔かして流し込む鋳造(ちゅうぞう)とは違い、叩いて延ばして鍛える鍛造は、短時間、低コスト、高強度で生産できて、圧倒的にコストパフォーマンスがいいのです。
 
ただし、複雑な形を作るのは苦手とされてきました。
それを克服したのが父です。
 
私の父は天才的な感覚と熱心な努力で、それまで鋳造でしかできないとされていた製品を鍛造で作り、鍛造の世界をぐっと広げることに成功した人でした。
 
日本の大企業はもちろん、世界中から注文を受け、うちの会社があるからという理由で、石川県の羽咋の地には、お取引先の事業所がいくつも設立されたほどです。
 
鉄の産業とはまったくゆかりのなかったこの地区ですが、父が夢としてきた「リングの街」になったのです。 

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