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看護計画テーマ「胃癌患者の標準看護計画」

実習お疲れ様です。
今回は、ちょっと専門的に胃癌についてまとめました。

胃癌患者の標準看護計画
 
胃癌とは
 原因は、環境因子による種々の遺伝子変化によるものと考えられている。好発部位は幽門部及び前庭部小弯に多く、はじめ胃壁内にとどまっているが、のちに肝臓、膵臓、横行結腸、横行結腸間膜、横隔膜、前腹壁などの隣接臓器へ浸潤増殖し、また胃周辺のリンパ節に転移する。更に胃外壁へ露出する癌では、腹膜播腫が認められることが多い。高度転移例では、ウイルヒョウ転移(リンパ行性)、シュニッツラー転移(腹膜播腫)、クルッケンベルグ腫瘍(原因不明)がある。最近は早期胃癌が増えており、約6割を占め、治療率は向上している。特異的な型としてはスキルス胃癌があり、極めて予後が悪い。
胃癌の肉眼的分類にボールマン分類、早期胃癌分類がある。
 
アセスメントの視点
 胃癌は日本人に多い癌であり、胃切除の適応となる代表的な疾患である。胃癌は告知する場合が比較的に多い。また、はっきり癌と告知されなくても、胃の手術が必要と言われれば、自分の病気が胃癌であると考える患者も多いようである。患者がどのように受け止めているか、患者自身の言葉で表現してもらうことが必要である。疾患の受け止め方には、その人の社会的な背景や価値観も影響してくる。また家族からの情報も重要である。
 
症状
 胃癌の症状は個々の症例により異なり、特有な症状はない。偶然に胃癌が発見されるまで全く無症状の場合もある。比較的多い自覚症状として以下のものがある。

  1. 心窩部痛、胃部腹満感、体重減少等

  2. 悪心、嘔吐、食欲不振、胸やけ、全身倦怠感、嚥下障害、通過障害等

  3. 癌がある程度進行すると貧血、痩せ、悪液質といった全身症状と共に腹部所見として腫瘤触知、圧痛、腹水が認められるようになる。

 
検査

  • 胃透視

  • 内視鏡

  • 胃生検

  • 超音波検査

  • 選択的血管造影

  • CTスキャン

  • 生化学検査及び血液一般検査

  • 超音波内視鏡

 
治療
 1.手術療法
その適応は、進行癌に対しては積極的に拡大される一方、早期癌に対しては根治性を損なわない。また、quolity of lifeの観点から縮小手術も導入され、絶えず変化している
 根治的手術
胃全摘術、幽門側胃切除術、隣接臓器切除術(膵臓、脾臓、横行結腸)、腹膜播腫に対しては、持続温熱化学療法や腹膜亜全摘術が施行される。
 姑息的手術
胃部分切除術、胃腸吻合術、胃・腸瘻造設術
 2.化学療法
 3.放射線療法
 
術後の経過と管理
 F.Moreeは、手術後の回復過程を4つの段階に分けている。
 それによれば、第1相は、障害期で、手術後2〜3日続く。第2相は、変換期で1〜3日続く。これら第1、第2の2つの相は、手術侵襲に続いておこる異化相であり、その後の同化相とは異なった生体の反応過程を示すと考えられている。この急性反応期間中は、生体反応が刻一刻と変化するので、注意深い観察と適切な管理は必要である。
 第3相は筋力回復期で手術後7日目頃から始まり2〜5週間持続する。この時期は、神経・内分泌・代謝系の機能が手術前の状態まで回復しており体蛋白の合成の亢進に伴い体力がついてくる。
 第4相は脂肪蓄積期で、手術後1ヶ月頃より始まり2〜5ヶ月間持続する。この時期は体蛋白の合成は停止し、脂肪の合成が開始され、体重増加がみられる。
 1.精神的サポート
胃切除・胃全摘の手術を受ける患者の不安は食べられないことへの不安、手術そのものへの不安、手術後や退院後の予期的不安がある。不安の内容や程度、表出の仕方など個人によって異なるが、精神的・身体的・社会的側面から統合した情報で、患者各人の訴えを判断することが大切である。手術のみならず、手術後の長期間にわたる治療に対して、しっかりとしたサポートシステムをつくっておく必要がある。
 2.疼痛の管理
手術後の疼痛は、手術形式、麻酔法によって異なり、また、個人差が大きいが、患者に我慢させず、十分に疼痛をやわらげるべきである。とくに高齢者の場合、疼痛は心血管系に負担をかけ、血圧の上昇や不整脈を誘発することもあり、十分な除痛が望まれる。最近では、手術時に硬膜外カテーテルを留置し、術後に持続的に麻酔薬を注入することによって、よい結果が得られている。
 3.呼吸系の管理
上腹部手術の場合、疼痛による呼吸運動の抑制、痰の喀出不良が原因で術後無気肺になりやすい。
 4.循環器系の管理
心血管系に負担がかからないように十分な除痛が望まれる。
 5.輸液・輸血の管理
手術侵襲による体液変動は、水分とNaイオンの貯留傾向、循環血液量の低下、細胞内Kイオンの低下が特徴である。また、手術操作によって腹腔内に浮腫が起こり、いわゆるthird spaceに水分が移行するので、術直後は尿量は減少する。特に術前から軽度の脱水が慢性的に存在している場合、手術という大きな侵襲の後、代償しきれなくなって血圧が低下したり、尿量が減少することがある。術後3〜4日で、利尿期に入るが、この際輸液オーバーとなり高齢者では、肺水腫や心不全になりやすい。
 6.栄養管理
術直後は糖質コルチコイドの産生が亢進し、肝グリコーゲンの分解、糖新生や脂肪分解の亢進が起こり、相対的なインスリンの作用不足から耐糖能が低下し、いわゆる外科的糖尿の状態となる。この際、浸透圧利尿となり多尿となるため、その後の脱水に注意を要する。回復期に入ると耐糖能が改善し、必要なインスリン量が減少してくるので、低血糖にならないように注意が必要である。
 7.腹腔内ドレナージの処置
ドレーンからの排液は、通常は自然流出で十分であるが、ドレーン内腔の閉塞を防止したり、貯留液の有無やその性状の確認のために、二重管で低圧持続吸引することもある。
 8.創の処置
手術創をよく観察する。(発赤、離開の有無等)
 9.胃管の処置
術前、あるいは術中に留置された経鼻胃管を、術後、留置開放し、消化液の胃内貯留を防ぎ、または吻合部の減圧を図る。胃管は消化管運動を再開し、排液量が減少したら抜去する。
 10.中心静脈栄養法(IVH)の管理
術後は栄養、体液のバランスを保持するため、一般輸液療法やIVHが併用される。IVHは高濃度で高浸透圧のため、血糖コントロールが必要となってくる。また、IVHは発熱の原因となりやすいので清潔な操作が必要である。
 11.経口摂取の開始
胃管抜去後、胸やけ、吃逆などがなく、腸蠕動が聴取され、排ガスガあれば、また透視で縫合不全を認めないことを確認してから、まず水分を与え、異常がなければ流動食から開始する。流動食は600ml/6回/日に分けて摂取させる。術後の経口摂取量は、術前を下回るのが普通であることを患者に理解させて過剰に摂取しないように注意する。ダンピング症候群(食後20~30分以内に起きる早期症状のものと食後2~3時間で起きる晩期症状がある。症状として食後の発汗、頻脈、動悸、顔面紅潮等の全身症状と腹鳴、下痢、腹部膨満感、不快感、腹痛等の腹部症状がある)の症状が出現することもあるので観察を要する。
 
術後合併症
 1.肺合併症
手術創が上腹部に多いことから、呼吸時の創痛が強度となり、浅い呼吸を続け十分な肺の拡張がみられないことや、長時間の麻酔の影響で気道分泌物が増加する一方、喀痰の粘稠度が増し、創痛のため十分に痰の喀出できないなどで痰が貯留し、無気肺から肺炎を併発しやすい。
 2.術後出血
術後出血は殆ど48時間以内に起こる。腹腔内にドレーンを留置してあれば、ドレーンからの排液の性状がインフォーメションとなる。
 3.消化管出血
術後消化管出血は、吻合部と断端閉鎖部から起こるのが大部分である。胃管からの大量の新鮮な血液の流出によって容易に診断される。
 4.縫合不全
縫合不全の発生のピークは、術後3~10日間である。発熱、白血球増多、頻脈、腹膜炎症状などの臨床症状が術後1週間前後に出現したらまず第一に縫合不全を疑う。
 5.消化吸収障害
消化吸収障害は、胃の形態変化による貯留機能の低下と消化吸収力の低下により起きる。特に脂肪の消化・吸収障害を起こしやすい。これらは、胃内容の排出時間の短縮や胃液・膵液の分泌量の減少、迷走神経切除に関連した障害が多い。ダンピング症候群は、胃貯留機能の消失または低下により高張な食物が腸内に入った結果、小腸の拡張と蠕動亢進が起こり循環血液量が減少し、血糖の上昇、血性Kが低下することによって起きるといわれている。消化吸収能力の低下は迷走神経本幹切離により小腸の吸収能力の低下、胆汁・膵液消化ホルモンの分泌低下、減酸による蛋白の吸収低下、鉄・ビタミンB12・Kの吸収低下によって起きる。
 
看護計画(術前)
.アセスメントの視点(術前)
 全身麻酔で手術が行われるため、全身状態の評価が必要である。高齢者も多いので、既往症や機能の低下には十分注意する。早期癌の約半数は無症状であるが、痛みや不快感などの上腹部症状が出現する場合がある。疾患が進行すると、腫瘍による狭窄が生じて食事が十分とれなかったり、腫瘍から出血することから、貧血、低栄養状態、脱水、電解質異常をきたすようになる。

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