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看護計画テーマ「クモ膜下出血(脳動脈瘤)患者の標準看護計画」

今回のテーマは、「クモ膜下出血」になります。多くの例で動脈瘤の破裂が原因となっており、死亡率や後遺症が残る確率が非常に多い疾患になります。
しっかりまとめていきましょう。


クモ膜下出血(脳動脈瘤)患者の標準看護計画

クモ膜下出血とは
 クモ膜下出血は働き盛りの40〜50歳代に多発し、しかも死亡率が高く、また救命したとしても重篤な後遺症を残すことの多い疾患である。クモ膜下出血の原因の約80%は脳動脈瘤の破裂で、次いで脳動静脈奇形によるものがある。クモ膜下出血の経過中には、再出血・血管攣縮・水頭症などの重篤な病態がある。
 
アセスメントの視点
 急激に発症し、しかも死亡率の高い疾患である。発症からの時期によってさまざまに変化する病態を有する疾患であり、再出血・血管攣縮・水頭症の三つに関して注意する。突然に発症することから、家族の動揺も激しいため家族への援助も重要となる。
 
症状
 突発性の激しい頭痛(殴られたような、割れるような)で発症し、しばしば嘔吐を伴い、半数以上に意識消失を認める。痙攣発作を伴うことも少なくない。またクモ膜下出血の重症度や脳動脈瘤の部位によって症状が異なる。
 
 1.クモ膜下出血の重症度
・Grade0−非破裂例
・Grade1−意識清明で神経症状のないもの、またはあってもごく軽度の頭痛・強直のあるもの
・Grade1a−意識清明で急性期症状がなく、神経症状の固定したもの
・Grade2−意識清明で中等度の強い頭痛・項部強直はあるが、神経症状(脳神経麻痺以外の)を欠くもの
・Grade3−意識障害は傾眠、錯乱である。軽度の局所神経障害をもつこともある
・Grade4−意識障害は昏迷、中等度から強度の片麻痺、ときに除脳硬直、自律神経障害の初期症状を示すもの
・Grade5−昏睡、除脳硬直、瀕死の状態のもの
 
 2.脳動脈瘤好発部位の主な神経症状
脳動脈瘤は内頚・後交通動脈分岐部が最も多く、次いで前交通動脈、中大脳動脈とウィリス動脈輪の前半部に多い。
 
 1)内頚動脈(IC)、内頚・後交通動脈(IC−PC)分岐部
動眼・三叉・滑車神経の障害の症状、片麻痺、精神症状、痙攣など
 
 2)前大脳動脈、前交通動脈(A−COM)
意識障害、一過性片麻痺、精神症状、視力障害など
 
 3)中大脳動脈
片麻痺、失語症、精神症状、痙攣など
 
 4)椎骨・脳底動脈
意識障害、小脳症状、眼振、一過性の呼吸停止、心停止など
 
検査

  • CTスキャン

  • 腰椎穿刺

  • 脳血管撮影(脳動脈瘤の検索)

 
治療
 病態の変化に伴い、再出血・血管攣縮・水頭症の治療が中心となる。
 
 1.再出血に対する治療
脳動脈瘤クリッピング術
手術の時期は神経学的所見および全身状態によって決定される。また出血量が多い場合には、脳槽・脳室ドレナ−ジや脳内血腫除去などが追加される。
 
 2.血管攣縮に対する治療
手術による血腫の洗浄、脳槽・脳室ドレナ−ジ
Hyperdynamic療法
輸液、血漿製剤、昇圧剤により、積極的に人為的な血漿増量、高心拍出量の状態を維持して、攣縮血管に少しでも多くの血液を送り込む方法である。厳密な循環系の評価も必要とする。
血管拡張(カルシウム拮抗剤、亜硝酸剤投与)
経皮的血管形成術
 
 3.水頭症に対する治療
脳室ドレナ−ジ
シャント術−脳室腹腔吻合術(V−Pシャント)、脳室心耳吻合術(V−Aシャント)
 
経過と管理
 1.精神的サポ−ト
 術前では、急激に発症し、緊急入院・手術となる場合が多いので患者および家族の動揺・不安は大きい。患者に対しては医療者・家族を含め、周囲の者が一貫して「クモ膜下出血」「手術」など不安となるような言葉は使わず、外からの刺激は極力与えないようにする。そのため家族が状況を理解し、協力が得られるような援助も重要である。
 術後では、特に術前に意識障害のあった場合や手術の説明を受けなかった患者ではすぐには自分の状態を理解し容認するのは困難である。このような患者の気持ちをくみ取り、援助していくことが大切である。
 
 2.再出血予防の管理
 一度破裂した脳動脈瘤の多くは、放置すれば二度三度と再出血を繰り返す。再出血は初回出血日に最も起こりやすく、日が経つにつれてその危険性は減少する傾向にある。再出血は突然起こり、急激な意識消失、バイタルサイン・神経症状の変化や嘔吐を認め、状態が急激に悪化するため、再出血予防は最も重要である。外からの刺激を極力避けるために、部屋を暗くし、絶対安静を保つ。また、意識が清明な場合や不穏状態の場合は鎮静剤を投与する。また血圧のコントロ−ルは大切であり、平常血圧以下に血圧を維持するように努める。頭痛時は鎮痛剤を与え、あまり我慢させないようにする。
 
 3.脳血管攣縮の管理
 クモ膜下出血発症後4〜14日くらいの時期に起こるが、攣縮の程度が強い場合には広範囲の梗塞を生じ、重篤な症状を後遺する。脳血管攣縮の徴候を認めた場合には、速やかにHyperdynamic療法によって血圧の上昇を図るなどの治療を開始しなければならないので、患者の意識レベルや麻痺のごくわずかの変化、食欲の低下、表情の変化など、脳血管攣縮初期症状を見逃さないことが重要である。また、脳血管攣縮の時期にたとえ短時間でも血圧を低下させることは、症状を悪化させる決定的な誘因となることがあるので特に注意が必要である。
 
 4.水頭症の管理
 急性水頭症と慢性期の正常圧水頭症がある。
 急性水頭症−術前にクモ膜下腔の出血による脳脊髄液の循環・吸収障害により頭痛、嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状や意識障害をおこす。CTで確認後、脳室ドレナ−ジが行なわれる。
 正常圧水頭症−術後に脳室の拡大が著名であるにもかかわらず、頭蓋内圧が高くないものをいう。失見当識などの意識障害、小股歩行などの歩行障害、尿失禁などの水頭症の症状の発現に注意しなければならない。脳室ドレナ−ジやシャント術を施行した場合はドレナ−ジからの排液量や閉塞、チュ−ブの抜去、そして感染に注意が必要である。
 
 5.神経脱落症状の管理
 支配領域の脳・神経細胞の障害によって正常な機能を失って現われる症状で、運動・言語・嚥下・排泄などの障害である。急性期は慢性期のリハビリテ−ションを円滑に行なうために良肢位の保持や関節可動域の確保に注意する。バイタルサインが安定すれば早期より訓練を開始していく。
 
術後合併症
 1.術後出血
 術後数時間〜24時間以内に血圧の上昇によりおこりやすい。術後は1〜2時間毎に観察する。
 
 2.脳浮腫
 術後出血より発現時間は遅く、術後24〜48時間以後に発現することが多い。意識レベルの低下、神経症状の悪化などの頭蓋内圧亢進症状で発症してくる。
 
 3.水頭症
 脳室ドレナ−ジやシャントシステムに閉塞が生じたり、流量が不十分な場合には水頭症が再発し頭蓋内圧亢進症状をきたす。
 
 4.感染
 術後感染で最も問題となるのは髄膜炎である。手術創やシャントシステムの感染により発熱、項部強直、手術創の発赤などを認める。髄膜炎併発により、水頭症、けいれんなどの後遺症が起きる割合も高くなるため注意が必要である。また肺炎、尿路感染などの二次的合併症の出現にも注意が必要である。
 
 5.消化管出血
 ステロイド剤の多量な投与、精神的ストレスなどによりおこしやすい。
 
看護計画(急性期)
・アセスメントの視点(急性期)

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