見出し画像

上場して感じたこと

2024年7月26日、何者でもない学生起業家が作った株式会社タイミーは多くの人に支えられ、東京証券取引所グロース市場への上場を果たすことができました。
タイミーを利用してくださっている働き手の方、事業者の方、投資家の方、家族、先輩起業家のみなさん、友人、タイミーを応援してくださった方……。

本当に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます!
noteを書くか悩んでいたのですが、上場を経験することなんて人生でそう何度もないので、今の素直な気持ちを書き残したいと思います。
—————

自分は18歳の時に尊敬していた祖父が亡くなり、「人生の時間は有限である、いつかやりたいなら今からやらなければ」と感じると共に、曽祖父が実業家、起業家の血筋があることを知り起業家として生きていくことを決めました。

そこからインターンなどを繰り返し20歳でレコレというアパレル系サービスの会社を立ち上げました。登記した時のことは今でも覚えていて、

"日本を変える経営者になる!”と夢に溢れていました。

しかし、当たり前ですが、起業はそんなに甘くはなかったとすぐに実感することになります。寝ることを惜しみ四六時中取り組むも、たった1年で事業は撤退、6人いたメンバーを解散。「学生起業家」というアイデンティティを失い、自分が生きている価値はなんなのだろうと考える日々が続きました。

何もやる気力が起きなかったもののお金がなかったので、日雇いバイトを始めることになりました。アルバイトを掛け持ちしながら日雇いをする、そんな生活をしていました。
特に目的なく、時間をお金に変えるために働いていたのですが、たまたま働きに行った店舗でかけていただいた言葉がありました。

「小川くん、あなたが来てくれたお陰で休憩が取れたよ。ありがとう。」
「もし来てくれていなかったら、僕は18時間お店に立つことになってたかな」

この言葉によって、自分の時間なんて価値がないと勝手に思い込み、落ち込んでいた自分の何かが満たされる感覚になりました。

「自分の暇な時間は誰かの欲しい時間に変わるんだ。」

この体験をした瞬間、起業家心がくすぐられ、居ても立っても居られないワクワクする気持ちになり、毎日このことだけを考えていた結果、人手に困っている企業とスキマ時間で働きたい人のマッチングサービス“タイミー”が着想されました。
誰かのためにもなるし、何より自分が欲しいサービス。これこそが自分の人生をかける価値のある事業だと確信し、すぐに色んな人にアイデアをぶつけ始め、資金調達の目処が立ち、再度起業をすることになりました。
起業当初の仲間はWantedlyに募集を出したり、イベントに顔出ししたりとやれることを何でもやり、出会った人にワクワクする未来を全力で語り、その人が無理でも誰か紹介してもらうというように一歩ずつ着実に進んでいきました。

タイミーをリリースした当初はもちろん導入企業数は10社程度。契約してくれた企業の満足度を高めることが極めて重要でした。働く予定だったワーカーさんが無断欠勤したら自分たちが働きにいったし、即金体験を作り出すために毎日ATMに行って振り込み作業を行っていました。今考えるともっと上手いやり方があったかもと思いますが、何より、利用者目線に立つことを最重要事項にしてやれることは何でもやっていました。
資金を少しでも節約するために、みんなで同じ部屋に住み、自分たちの創りたい世界を語る毎日。

今振り返ってみても本当に本当に楽しい創業期だったし、青春だなと思います。

創業メンバーとお金がない中で全力で楽しむ時間

そこから順調にサービスが成長し、2019年には念願のTVCMを放映。上場が夢ではなく、実現の可能性が見え始めてからは、従業員に向けて「最年少上場をしたいと思う、みんなで歴史を作ろう!」と伝え始めました。その時は上場が何かすらもわからなかったのが正直なところ。「やるなら歴史に残ることをやろう!」くらいのテンションだったと思います。

コロナなどがありながらも、最年少上場をするために監査などを準備していき、証券会社、監査法人、コーポレートメンバーのおかげで、無理をすれば上場できるところまでいくことができました。

しかし、2021年10月、直前で延期を決めました。

色んな先輩起業家などに相談して見えてきた「上場の本当の意味」。

当たり前だが、自分の名誉のために上場するものではない。タイミーという世の中になくてはならないサービスをインフラにしていくための最善の選択肢を選ぶべきである——。また、会社としてまだ赤字の財務状況であり、無理をしてまで上場する必要があるのかというのも一つの懸念材料でした。
悔しくも自分の中でしっかりと腹落ちし、以下のような発信を社員に行いました。

全社員に上場延期を発表したSlackの投稿(一部抜粋)

その後、“はたらくインフラ”とは何か。どうしたら実現できるのか。という上位戦略を再設計し、働き手、事業者双方が求める体験を作り続けることを、愚直に繰り返し続けました。

その結果、延期を決めてから2年で売上を10倍にし、2024年7月26日にタイミーは上場しました。

上場は学生起業家、ベンチャー企業が描く夢の一つだと思います。自分も全力で目指していました。

しかし、自分が走ってきた道を振り返ると輝かしいことばかりではなく、むしろ本当に大変で、悩ましい意思決定だらけでした。実際に多くのうちの社員が魂を削りながら、プレッシャーの中でもがきながら、仕事に向き合う姿を目の前で見てきました。自分自身、何度か社長を辞めたいと思ったことも事実です。

"もし生まれ変わってもまた同じ挑戦をしますか?"

とあるメディアの方からこのような質問を受けました。
ちなみに、みなさんはどのように答えますか?


少し悩んで辿り着いた自分の回答は、
「今のタイミーと同じような成長を再現性を持ってやることは不可能に近いくらい、圧倒的な運の良さ、人のつながりに恵まれ今のタイミーがあります。起業したことで、多くの仲間に恵まれ、タイミーを通じて多くの人の喜ぶ顔を見ることができました。自分の作ったプロダクトで世の中の社会課題を少しでも解決できる、これは本当に最高の体験です。
遠回しに答えてしまいましたが、自分はもう一度人生を選べるとしても同じ道を歩みたいです。」

今年27歳の自分は本当に多くの人に支えられ、運が重なった結果、一部の起業家しか手に入れることができないチケットをつかむことができました。
タイミーの領域にはこれから多くの大企業が参入してきます。「タイミー、大丈夫?」など心配されます。

しかし、ここでは記載できないことも含めて色んな対策を考えているし、うちの社員は全員目を輝かせ、常に前を向いている。だから大丈夫って胸を張って言えます。

—————
最後に決意表明をかねて、想いをつづらせていただきます。

これからのベンチャー起業や上場が夢に溢れる存在であり続けるためにも、自分に勝手にプレッシャーをかけているだけかもしれないのですが、どんなに競争が激化しようとも、人生をかけてNo.1にこだわり全力で挑戦したいと考えています。

"上場ゴール"という言葉がある。

しかし、今の自分にとっては、上場こそがスタート地点である。
これから待ち受けている競争を楽しみ、社会課題の解決に一直線に進み、世の中になくてはならないインフラになる——。
そんな冒険が始まったばかりだ。

ここまで思いの丈を書いてしまいましたが、自分1人では絶対実現できない大きな壁に挑むので、是非今後も力を貸していただけると嬉しいです。
最後まで読んでくださりありがとうございました!

P.S.
本当に多くの方からのお祝いのメッセージありがとうございます。人生で間違いなく一番祝われました。期待を越えられるよう頑張ります!

尊敬する先輩起業家たち
ほぼ同期起業家と仲良い先輩起業家

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?