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第四章 回顧録


 アプデパンツの登場で、世の中
の生活様式が、徐々に変わってき
た。

 携帯電話の普及により、公衆電
話が無くなったように、アプデパ
ンツの普及により、公衆トイレが
無くなり、コンビニなどから、
トイレが無くなった。

 この頃になると、アプデパンツ
を買えない貧乏人は、緊急避難所
であるコンビニにトイレが無いこ
とにより、お漏らしをする人が続
出した。

 今や、アプデパンツは、国民一
人あたり、最低三着は所持してい
る。

 ウォシュレットの登場と同じよ
うに、アプデパンツの普及は瞬く
間に日本から世界へと広まっていっ
た。

 アプデパンツの海外への普及に
より、アップデートクローズ社は
世界的なグローバル企業へと発展
していった。

* * *

 この世界に一人で来た僕に、家
庭が持てた。子供も一男一女を授
かり、息子にも子供が出来た。
つまり、僕はおじいちゃんになっ
た。

 会社も世界的大企業になった。
 妻にも子供にも孫にも、自分の
生い立ちを話することが出来ない
のは寂しい。

 自分の生きた証として回顧録を
記述した。

 書いた回顧録はその性質上、発
表することはおろか、その存在を
誰にも知られてはならない。
 書きあがった回顧録は何重にも
暗号化した。

 家族が出来て、子孫も残せた。
 自分の人生に悔いはなかった。


エピローグ

 夫の死後、彼の回顧録がパソコ
ンの中から見つかった。

 私には内容はわからないので、
現社長の沢口さんへパソコンを渡
して調べて貰った。回顧録は三年
の年月を費やして、解読できた。
 その内容は、驚くべき内容だっ
た。

 彼が未来人であることは、解読
に関わった数人と内閣情報調査室
のみが知るところとなり、国家の
最重要極秘文書となった

 私の夫は、未来人……。
 長年の暮らしの中で、夫の生い
立ちがわからなかったが、これで
疑問は氷解した。

 今なら、彼が未来人であること
を、素直に理解できる。
 このことは、私の胸に秘めて、
子供にも誰にも話さない。

 私の愛した人は未来人か……。
 ねえ、あなた。あなたが未来人
であることを、誰にも話せなかっ
たのは、さぞ辛かったことでしょ
う。




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