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インフルエンザの漢方薬

東洋医学では、その人の状態(病態)を『証』といいます。『証』を様々な角度から判別する方法のひとつに『八綱弁証』(はっこうべんしょう)があります。
『八綱弁証』は「寒・熱」「表・裏」「虚・実」「陰・陽」という2つの相反するものを4つの要素に分けて総合的に判別していくものです。
例えば、寒熱は、夏に強い人は寒タイプ、冬に強い人は熱タイプに分かれ、虚実は、疲れやすい人はエネルギー不足の虚タイプ、疲れにくい人はエネルギーが有り余っている実タイプに分かれます。
私の場合は陽タイプですが、『虚・実』は虚実挟雑タイプです。虚証と実証が同時に存在しています。上実下虚といって、上半身が実、下半身が虚なのです。こういう人は肩こりがあって、足腰が弱く腰痛があります。『気』を全身に巡らせなければいけません。そこで、太極拳をやっています。
陰陽はリズムとバランスを表します。昼間は陽で暖かさを感じますが、夜間は陰で冷たさを感じます。陽に傾きすぎても、陰に傾きすぎても良くありません。調整し合ってリズムを作り出します。人の体も同じです。陰は夜を支配しているので陰が足りない人は不眠になりやすいですし、陽が足りない人は冷えからの下痢になりやすいです。
表裏は体表と体内のことです。東洋医学では、病気は体の表面から奥に入っていくと考えています。つまり、病気の進行度を表す基準です。
インフルエンザを考えた時に、体がゾクゾクと寒気がするというようなときには「表」にウイルスがとどまっている状態と考え、「解表薬」つまり汗をかかせる薬を用います。しかし、そこから咳や下痢といった症状が出るようになったときには、肺や消化器などの「裏」にまでウイルスが侵入したと判断し、それに合った薬を用いて改善を図ります。
このように同じインフルエンザでも進行度により、漢方薬を変えなければなりません。
インフルエンザは一般的に『麻黄湯』を用いられますが、それでいいでしょうか?
ウイルスの進行度を考えた時に、
①初期 太陽病(表)
    発汗している→『桂枝湯』
    発汗していない→『麻黄湯』
②中期 少陽病(半表半裏)
    発熱と寒気が交互に→『小柴胡湯』
③後期 陽明病(裏)
    大熱、大汗→『白虎湯』、『人参湯』
という風に漢方薬を変えなければなりません。
ただ、単に『麻黄湯』を用いれば良いではないのです。
なぜ、このような誤りが生じたのでしょうか?
多分、初期段階で熱っぽく寒気がしてゾクゾクするという症状から『麻黄湯』になったのだと思います。ここで間違ってはいけないのは、発汗していたならば、『麻黄湯』は逆効果になることです。
漢方薬は副作用が少なく、安心と思ってはいけません。安易に判断しないで専門家に相談することです。

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