僕らはドラゴンボールと共に大人になった
大人になると時が経つのが早い。1日1日があっという間に過ぎてしまう。「ああ、今日もなんて不毛な1日を過ごしてしまったんだろう。」と1日を終えて思ったことのある大人も少なくはないだろう。
今年で34歳になる僕は、24歳の時「あと一年で25歳になってしまう。四捨五入をしたらもう三十路だよ・・・。」なんて考えていたけど、その10年がまるでつい最近のように思える。
10年なんてあっという間だ。
「ドラゴンボールGT」が放送された約1年9ヶ月は僕にとって永遠だった
1996年2月7日〜1997年11月19日まで放送された「ドラゴンボールGT」。
当時8歳だった僕は、毎週欠かさず見ていたドラゴンボールZの魔人ブウ編が終わり、残念に思っていたときにこの新アニメ番組の予告が流れ、とても喜んでいた記憶がある。
鳥山明先生の原作ではなく、完全オリジナルストーリーで「ドラゴンボールGT」は現在でも賛否両論のあるアニメだが、当時8歳の僕は、毎週水曜日の19時のアニメ枠がまた「ドラゴンボール」であることをとても喜んでいた。
魔神ブウ編の直後を描いている「ドラゴンボール超」で「超サイヤ人ブルー」や「身勝手の極意」という進化系が出た時点で、「ドラゴンボールGT」内での悟空の最強の進化「超サイヤ人4」はどこへ行った?とか、「GTはパラレル世界のようなもので時系列ではないことになっている」なんて大人なら考えるだろうけど、8歳にはそんなの関係ない。
神龍によって小さくされてしまった悟空は、小さいのに魔人ブウを倒したときのまま強いし、周りには「子供」だと思われていた中、敵を倒し救うかっこよさは変わらなかった。
(画像は「アニメ放題」より)
今でも思う、たった2年弱しか放送されていなかった「ドラゴンボールGT」なのに、なぜこんなにずっと記憶に残り、OP曲の「DAN DAN 心魅かれてい」を耳にすると、心が震えるのだろう。
パンチ・キック・かめはめ波の園児時代から、自らを犠牲にみんなを守る悟空に感涙した小学生時代への成長
もう何十年も前の作品だから、ネタバレなんて気にしなくてもいいだろう。
ネタバレされたくない人はここから下は読まないでもらいたい。
「ドラゴンボールGT」の最後で悟空は死ぬ。(神龍の背中に乗って、この世から去る。)これまでの「ドラゴンボール」の世界では、死んでも神龍の力で生き返ることはできていた。
でもこの時は違っていた。神龍に願いを聞いてもらえるのはこれが最後。そして神龍に悟空は何かを約束して、死んでしまったみんなを生き返らせた。
そして願いを叶えた直後に、神龍の背中に乗って悟空は空へといなくなったはずなのに、地面には悟空の着ていた道着が落ちている。
落ちている道着を見つけた悟空の孫であるパンが「なんで?だって今おじいちゃんは神龍と一緒に・・・」と言う。それに対し、ベジータはパンに「そいつは大事にとっておけ」とだけ言い残し去っていく。
ドラゴンボールの世界の「死」は、これまで天使の輪っかがつき、あの世(天国or地獄)に行くだけ。何度も悟空は死んでいるし、死んで、ドラゴンボールで生き返るまでの間に天国や地獄で修行をしている姿なんかも描かれている。
そんなドラゴンボールの「死」が前提にある中、神龍に乗って天に登っていく悟空と、ボロボロになり残された道着という「死」の描き方は、10歳になった僕でも「悟空はもう戻ってこないのだろう」というのがわかった。
悟空が神龍と共にどこかへいなくなる途中、悟空は神龍に「寄り道してえとかあるんだけど、いっか?」とお願いし、ピッコロやクリリン、亀仙人の元に立ち寄る。
クリリンと、亀仙人の元で修行をしていた時の思い出話をし、久しぶりに組手をしようと悟空が提案する。そしてクリリンと組手をする悟空を見た亀仙人が「悟空、お前・・・」と何かを悟ったような反応をする。
そして地獄にいるピッコロの元にも悟空は現れ、悟空はピッコロにこれまでのお礼を言い、「おめえのことは一生忘れねえよ」と言い残し消えてしまう。
これまで共に戦ってきた仲間やライバルとの最後の瞬間に、とても感慨深い気持ちになった。9歳にして、きっと僕は初めて感慨深い気持ちになったはずだ。
このときに「かめはめ波〜〜〜!」って言って友達(敵)を死なせていた子供から、友達を大切にする子供に成長した。GTの悟空の死がとても重いものに感じたのだろう。
キン肉マン、ドラゴンボール、ワンピース、鬼滅の刃・・・きっとその時僕たちは大人の階段を登り始めているのだろう。
フリーザを倒すときに悟空が初めて超サイヤ人になった時の衝撃。
セルを倒すときに超サイヤ人2になった悟飯のかっこよさ。
ブウ編であの世から戻ってきた悟空が超サイヤ人3になったときの、更なる衝撃と、悟空とベジータがポタラで合体しベジットになったときに興奮。
映画で悟空とベジータがフュージョンしゴジータになって一撃で強敵ジャネンバを倒したときの胸の高鳴り。
そして、GT編で超サイヤ人4でこれまでの金髪から黒髪での強化、さらには超サイヤ人4悟空、ベジータのフュージョン「超サイヤ人4ゴジータ」の誕生により、見ていた誰もがこの世で間違いなく最強でかっこいいと思ったんだ。
きっと誰もが当時のアニメキャラの必殺技の真似をして、戦っていただろう。でもどこかのタイミングで、ただかっこいい必殺技だけでなく、何か心を震わせる強さと感動を覚えるのかもしれない。
ただ僕はその時期が「ドラゴンボールGT」が放送された約1年9ヶ月のタイミングだったのだろう。
だから僕にとってアラサーからアラフォーを意識し始める10年よりも、この1年9ヶ月のほうが長く、永遠のように感じるのかもしれないな。