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ボレル・コルモゴロフのパラドックスとP値

[p値が一通りに定まらないparadoxicalな例をつくってみました]

あるめずらしい隕石について学会で論争がおきています。学説A「この隕石は地球上どこでも一様に落下する」学説B「この隕石は高緯度の地点ほど落下してきやすい」の2説です。珍しい隕石なので調査してみたら5個しか手に入りませんでしたが、隕石の落下は相互に独立なのにどれもちょうど緯度30°(北緯または南緯)に落下していました。有意水準を5%として学説Aが棄却できるでしょうか?

以下に2通りの方法でP値=「学説A(帰無仮説)の下でのデータ以上に極端な高緯度で5個すべての隕石が見つかる確率」を計算して有意水準0.05との大小を調べましょう。

解法1:
あるひとつの経度の大円について考えると、緯度30°以上の長さは120°の円弧二つなので1/3×2=2/3である。つまり学説Aを帰無仮説H0として、一つの隕石についてP(緯度≧30|H0)=2/3である。5個の隕石全てが緯度=30なのでp値={P(緯度≧30|H0) }^5=(2/3)^5=0.131687243>0.05なので5%水準で学説Aが棄却されない

解法2:
まず北半球について考えてみる。0≦緯度≦30の帯状リングの面積と30≦緯度≦90の帽子型の面積は同じであることが分かっている。したがって北緯30°以上(面積にして北半球の半分)に一つの隕石が落ちる確率は学説Aを帰無仮説H0としてP(北緯≧30|H0)=1/2である。南半球も合わせて地球全体でも一つの隕石についてP(緯度≧30|H0)=1/2である。5個の隕石全てが緯度=30なのでp値={P(緯度≧30|H0) }^5 =(1/2)^5=0.03125<0.05となって5%水準で学説Aが棄却される。したがって学説Bが支持される

同じデータなのに解法1と2で学説Bが支持されるかどうかが違ってしまいました… どうしてでしょうか?
(ボレル・コルモゴロフのパラドックスに関係しています)

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