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【短編】かくしてこころ

 ラブレターを書こうと思う。
拝啓、愛してはいけなかった人へ。

 貴方は今も元気でいますか。同じ空の下で呼吸が出来ていますか、その生活は、豊かなものでありますか。そうであることを強く祈っています。私には、それしかできないから。きっと、これが正しい選択であったのだと、心から思えるようになる為に。

 拝啓、愛しい人へ。貴方の隣には誰かがいるのでしょうか。私の周りには大好きな人がたくさんいますが、隣には未だに誰もいないのです。ずっと貴方が心に棲みついて、離れてくれないから埋める気にもならないの、なんて言ったら笑ってくれますか?貴方が隣にいて、私にそっと微笑みかけてくれる未来を大切にしたいから、初心な乙女心が作りあげたちっぽけな虚勢が必死になって貴方だけを長い間待ち続けているのです。あの夜空に浮かぶ、瞬きすら見えないほどの星屑のみたいに手が届くはずないことも知っているのに。私はきっと織姫になりたかったのだろう。ずっと会えなくても、お互いがお互いを待っていてくれるような、そんな。私には天の川だって無かったし、機織り機だって無かったのに。あるのは糸のように細く長く続く、絶ち切りようのない貴方への思いだけだった。それを織ったところで、その布は私の心すら温もらせてくれない。私を温めるのも凍らせるのも、生かすのも殺すのも全て貴方次第なんだ、なんて。

 ならばいっそ私を殺してくれませんか?はは、冗談ですよ。生きる場所が違うのだから、せめて死ぬときぐらいは一緒がいい。我儘は叶わないって知ってるから言えるんだってこと、オトナをちょっぴり覗いてから知った。終わりが見えないことが一番怖いんだってことも、会える距離の有難さも、待ち続けるしかない恐ろしさも、「好きだ」って言葉の、私たちにとっての重さも。全部知らなかったことで、貴方が教えてくれたことで、知らなくても生きていけたことで。そんな貴方が、どこまでいってもいつまで経っても好きです。毎日の歩行の中で、呼吸の中で、貴方が脳にちらついては私の心を惑わせる。あぁ、やっぱり忘れられなくて、忘れたいと、この苦しさから逃れたいと思えば思うほど、貴方に溺れていった。ゴポゴポと、深い海の底へ。貴方がそっと手を伸べて、救い上げてくれるのを待っている。海底の暗闇のなか、一筋の光が差し込む度に貴方かと思ってしまう。そんなこと、在り得ないんだって私が一番分かってるよ。それでも、一縷の望みを抱いてしまうことだけでも許して。とめどない思いがこんなに溢れるのも全部貴方が愛しいからなんだ。貴方に寄せる気持ちだけは今だってあの時のままで、純粋に貴方が好きです。

この言葉すら、もう伝えることは許されないんだろうな。

めっちゃ喜ぶのでよろしくお願します。すればするほど、図に乗ってきっといい文を書きます。未来への投資だと思って、何卒……!!