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カムアウト

かなりの仲良し、ゲイの友だちとは古着屋勤め時代に私が店員で彼はお客だった。
その時はゲイなのは知らず。たまに店主催で常連さんと集まってバスケをしては、その後飲みに行くのをやっていたのもあってほぼ友達のよう。感覚が似ていてやけに気も合った。彼は人の懐に入るような優しい話し方で懐っこく寂しがり屋だった。早い段階で兄弟のような、特別な感情を抱いていた。

外でスケボーの音がして入り口に目を向けると友だった。その日は酷く落ち込んでいた様子だったけど私接客中だったから気を利かせて、いつの間にか帰っていた。
話だけしに来る常連さんもいるのだけど、その時は気になって
後で話を聞こうか?とメールをすると「家に来て!」との返事。2人きりで会うのは初めてだった。

飲み会で送迎はしたことがあったので家は覚えていた。『ついたら勝手に入っちゃって。』
ちょうどついた頃にメールが入る。部屋に入るとお酒が入って少し出来上がってる様子だった。ああ、ちゃんと話し聞けないなこりゃと思っていたら、恋愛中の彼女が男友達と飲みに行っちゃう。という意外にも可愛らしい悩みだった。

思い詰めちゃうタイプらしくあらぬ妄想で潰れそうだ。と、そんな妄想も聞いてあげると酔いも回ってきて突然、「眠りにつくまで一緒に寝てくんない?寝落ちしたら帰って?」
一瞬びっくりしたけど、あの人懐っこい言い方は全く嫌な感じがしなくて、いやらしい感じもしなかった。横になって向かい合って、酔っているせいか何度も悩みを繰り返し話して、友は私の胸の中で寝てしまった。なんなんだこれは…不思議な状況に戸惑いながらも、布団をかけて家を出た。

何日かして、友からメールが来た。

別れちゃった!

の1行のあとだいぶ下にスクロールしたら、

\(^o^)/この絵文字

感情がこれほど読めない絵文字の使いどきがあったのだな、と困惑したけど。
そう、話聞く?と送ると返事はしばらく帰ってこなかった。

もちろん、ずっと悶々としている私。1ヶ月くらい経つとまた家に呼ばれた。
私が久々じゃん。と言うと、「呼ぶとすーぐくるー!」ときつい冗談。
妖しくキャンドルを焚いた部屋で、ねぇ。チューしよう。と言われた。
おう、いいよ。と余裕ぶってみせると膝を付き合わせて、それから何時間も経過したような長いキスをした。地上にいる気がしない。

へんてこな出来事に興奮冷めやらぬ状況、抑えようと必死な私に、友は

「ごめんね○○ちゃん。試しちゃった。」


「ん?」

「俺、どうやら女の子ダメになったらしい…」


常日頃、どこかでもう一つの性に引っかかりつつ、男は女を好きなのが当たり前と思って生きて来たけど、思い立ってあの街に行ったら、新しい自分を発見したそうだ。

私は血反吐を吐くような気持ちでふらふらになりながら帰った…その日、20時間くらい寝た。起きなければ良かったね私。


必然のような巡り合わせな気がしてならない。今では大の親友だけど、当時はかなりキツかった…今だから笑える。

元々性差別や偏見はない方だからすんなりと受け入れられた。とにかくゲイでもなんでもいい、人間愛で繋がってる人。なんとも愛おしい人。

いつだったか友の実家でやるBBQに呼ばれた時、みんながベロベロに酔ってる中、シラフの私は友のおかあさんに「友を産んでくれてありがとう。」と言ったことがあったけど、「あなたみたいな人が近くにいるならほっとしたわよ。」と泣いて喜んでくれた。「貴女が彼女ならねぇ」とい言うと、友は舌を出しておどけていた。


いい話で締めちゃったね。


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