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正しい事象を正しく見る - 本当の課題を特定するための、定量と定性の使い分け事例 -

みなさま、こんにちは。
株式会社ダイニーのプロダクトマネージャーをしているokuraです。

ダイニーに入社し約半年ほど経つ中で様々なissueに取り組んできました。
そのissueの解決は全てがスムーズに進められた訳ではなく、それなりの失敗もありました。

今回はそんな失敗の数々の中から、顧客の要望をきっかけとした課題の発見そして解決に至るまでの私の失敗と学びを取り上げさせていただきます。
顧客の声や要望はプロダクト開発における大切な資産ではありますが、取り扱い方や打ち手によっては誤ったプロダクト開発をしてしまうこともあります。そのようなことに陥らないためにも是非この記事を参考にしていただければ幸いです。


ダイニーについて

ダイニーは飲食店の All in One Restaurant Cloudを目指し、事業を展開している企業です。
ミッションに掲げている『すべての”飲食”のインフラになる』を叶えるべく日々事業に邁進しています。

顧客からの要望

今回の失敗と学びのエピソードに至る前に、その失敗のきっかけからお話しさせてください。
ダイニーは毎月初めに『納会』と呼ばれる全社イベントを開催しております。 このイベントは前月の会社の成長や各部署の実績について発表し、互いに称賛・労うイベントです。
支社も含めて全社員が集合するのはもとより、月によっては採用候補者の方やパートナー企業様、さらには顧客である飲食店関係者様も参加される場合もあります。

納会の乾杯の風景


ダイニーは顧客との距離がとにかく近いことから、顧客である飲食店の経営者の方、本部の方、現場の方など、様々な方々が納会に参加いただき、ダイニーについて語っていただくことも珍しくないのです。
私自身も入社前の内定者のタイミングから納会に参加させていただき、顧客とお話しするという機会に恵まれました。

そのお客様は非常に有名な飲食チェーン店を展開する上場企業のオーナーであり、現在の事業状況や飲食店における悩み等、様々なお話をいただきました。そのお話の中で、弊社のプロダクトに対するご要望を下記のようにいただきました。

“店舗スタッフが使うハンディの『価格を変更して飲み放題プランを開始する』の機能なんだけど、うちは使わないし誤って押しちゃって非効率だから非表示にしてくれない?”

ハンディとは、飲食店のスッタフがお客様からの口頭注文を記録し、キッチンに注文情報を連携するためのプロダクト及びその端末のことです。ダイニーはこのハンディアプリについても開発・提供をしています。

この『価格を変更して飲み放題プランを開始する』機能 は、その名の通りお客様から飲み放題を注文された際に、価格をその場で打ち込んで飲み放題を開始するという機能になります。飲み放題は基本的には価格が決まっていることが多いのですが、「基本価格を設定しておらず、毎度飲み放題価格を変更する場合」や「突発的な飲み放題の価格変更に対応する場合」を想定してこの機能を提供しています。
このようなユースケースを考慮して搭載した機能ですが、このお客様にとっては不要であり、むしろ消して欲しいという要望を納会の場でオーナーから直接いただいたのです。

[定性分析] その意見は、誰が言っているのか?

ダイニーに正式に入社した私は、この要望について早速取り組むことにいたしました。
私としてはユーザーが困っており、かつ上場企業のオーナーからの要望ということで対象店舗も多数であり、対応によって救われる人も多いと踏み、要望の通り昨日の表示のON/OFFを切り替えられる機能を作る方向で他PdMの意見を募りました。

しかし、他のPdMからは本当にその意思決定が最適なのか?という意見が飛び交いました。
特に、「オーナー自身はハンディをそこまで使う立場になく、その要望が本当に課題なのかは疑問が残る。もっと課題を見極めてほしい」という声が上がりました。

指摘された通り、上場企業のオーナーからの要望ということで、規模の大きな顧客の声を特段の疑いもなく「正しいもの」として捉えてしまいましたが、実際にハンディを使うのは店舗のスタッフであり、オーナーからの意見が正しいとは限りません。安易に解決に動こうとしてしまったことは、自分として大きな反省点でした。

この失敗を踏まえて、改めて課題の見極めに取り組むことにしました。

[定量分析] データで分かること、分からないこと

まず、定量分析から行いました。
実際に本機能が使われているかについてデータを調査したところ、ダイニー導入店舗の20%以上で定常的に使われている機能であり十分利用頻度が高い機能であることがわかりました。

この調査より、多くの店舗で使われていることから、あえて非表示にする機能を開発しても意味がないという判断に至りました。
開発リソースの最適化という観点で、無駄な機能開発を避けることができ、正しい意思決定ができたと考えています。
一方で、データ分析の過程で、当該機能を使用した後に利用キャンセルを行なっているケースを一定数発見しました。

飲み放題が注文された回数に対して、利用キャンセルを行う回数が極めて多い店舗が複数存在しており、これらの店舗については我々が意図する使い方をしていない可能性が高いのではと考えました。
ただ、データから把握できる情報は限られており、「なぜこのような利用キャンセルが頻度高く行なわれているか」まで読み取ることはできません。データ分析で分かることはここまでです。

[もう一度定性分析] 事件は会議室じゃない、現場で起きてんだ!!

ということでデータと向き合うことはそこまでとし、事件が起きている現場(飲食店)に急行することにしました。何か確認したいことがあったら、すぐにユーザーに確認に行けるのが、飲食店をお客様とするダイニーの面白さであり強みでもあります。(会議室もとっても大事です)

実際にお伺いした店舗の写真。ご飯もお酒も美味しいです。

実際にお店に行き、美味しい食事に舌鼓しつつ、店舗スタッフに声をかけさせていただきました。
スタッフさんに立場と事情を説明し、「ハンディを操作しているところを見させて欲しい」とお願いしたところ、快く引き受けていただきました。

実際に操作の確認をさせていただく際には、私から操作に対して指示を出すのではなく、ただいつも通りの操作をしていただくようにお願いしました。
また、操作いただく際には、その様子を動画に撮らせていただき、実際にいつでも振り返って確認できるようにしました。

操作している場面を動画に撮らせていただきました

実際の操作の様子を確認・撮影させていただいたところ、驚いたことに「適切なハンディの設定がされていない」ことが一目でわかりました。
『価格を変更して飲み放題プランを開始する機能』は、本来適切な設定がされていればこの機能を使うことなく、決められた価格で飲み放題を開始することができます。
ただ、設定によっては、毎度『価格を変更して飲み放題プランを開始する機能』ボタンを押下し、金額を入力しないと飲み放題を開始できない仕様にしています。
この店舗は設定が誤っていたことにより、飲み放題を開始する際に必ず金額を入力しなければならないオペレーションになっていました。これにより金額を誤って入力してしまう頻度が増えてしまい、その度に飲み放題のキャンセルを行なっていたのです。
つまり、この飲食店にとって最適な設定がされていなかったことが、今回の事象が起きている原因でした。
このように、現場検証をしたことにより、ハンディ設定の誤りが、オペレーションのミスを引き起こしているという事実を発見することに繋がったのです。これは実際に現場に行って確認をしないと分かり得ない事象でした。
この発見をきっかけに

  • 短期:そのお店に関してはその場で正しい設定に修正

  • 長期:顧客オンボーディングフローの見直しによる設定漏れの予防策実行

を行いました。

まとめ

今回の失敗と学びをまとめると下記です。

失敗

  • ユーザーの声を盲目に信じた結果、無駄な開発をしてしまうところだった

学び

  • 「定性確認」↔︎「定量分析 」の往復により、深い意思決定を行える

  • 動画を撮って観察することで、より実態を捉えることができる

ダイニーはモバイルオーダーやレジなど幅広くプロダクト提供を行っていることから、顧客からのVoCも非常に多く、且つ多様です。
だからこそ、一つ一つのVoCに真摯に向き合いながらも、その取り扱い方や検証の仕方については十分注意する必要があると感じています。
これを読まれている方々もお客様やステークホルダーの声をたくさん見聞きするかと思いますが、それらをどう取り扱うか悩まれた際には参考にしていただけると大変嬉しいです。

ぜひダイニーへ!

ダイニーはプロダクトマネージャーをはじめとしてまだまだ仲間を募集しています。
本記事を読んで少しでもダイニーに興味を持っていただけたら、ぜひ気軽にお話ししましょう!

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