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日本の労働生産性が低い本当の理由を考える

「日本は労働生産性が諸外国に比べて低い。これは日本人の仕事の効率が悪いからだ。」あるいは、「諸外国に比べてデジタル化が遅れているからだ」といったことを耳にしたことはないでしょうか。しかし、これは本当に主たる要因なのでしょうか。今回は労働生産性が低い理由を考察していきます。

まず、国際比較で用いられる労働生産性は GDP/労働人口 で求められます。
つまり、労働生産性が向上しないのは、ほぼGDPが伸びていないからだということに等しいのです。

また、財務省による定義にあてはめると、労働生産性とは、従業員一人当たりの付加価値額を言う事であり、
労働生産性=付加価値 / 就労者数
で表すことができます。

つまり、付加価値を増やすか、就労者数を減らすことにより、労働生産性を向上させることができるのです。

就労者数をはじめにみていきます。

総務省の人口統計によると、日本の労働人口は2012年から比較して増加しています。2012年の6565万人から2022年の6,902万人と増加しています。一方で、生産年齢人口は2012年に8,018万人であるのに対し,2022年は7496万人と減少しています。つまり、生産年齢人口が減少しているのにも関わらず、それ以上に労働人口は増加しているのです。

つまり、労働生産性の分母である就労者数においては、増加しているということになります。

次に付加価値です。付加価値は以下の計算で表すことができます。

付加価値額
=人件費*+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益

すなわち、人件費や営業利益が付加価値に大きく寄与しているのです。

ここで注目したいのが、営業純益の部分です。
営業純益は簡単にいうと売上からコストを差し引くことで求められます。

すなわち、労働純益を高めるには、売上を増加させるorコストを削減して、高利益を生み出すことが不可欠なのです。コストを減少させるには、オートメーション化や作業効率化等があげられます。これは生産性向上の議論の際によく取り上げられます。

しかし、生産性の向上でむしろ重視すべきなのは、収益性の向上です。すなわち商品単価を向上させることです。商品単価をあげる(あがる)要因は様々ですが、供給量の減少やインフレのような外的要因、そして、高付加価値商品の提供や輸出強化などの内的要因に分けられます。

もちろん、日本国民の給料があがり、自然に単価が上昇していくことによって、企業の収益性が向上していくのが理想ですが、そもそも賃金上昇を実現するためには先に企業の収益を上げていけなければいけないともいえます。

そこで注目したいのは後者です。イノベーションにより高付加価値商品を作ることで、利益率を向上させること。そして、より物価の高い国や日本製品が高く売れる国に物を売ることで、収益性を向上させることができます。

例えばインバウンド消費も輸出のひとつであり、有効な手段です。労働生産性が低い飲食業やホテル業は、外国人に特化したサービスやプランを開発して、高単価で提供することで収益性を向上させることができるかもしれません。

このように、労働生産性とは単にDXや業務効率化、あるいは長時間労働の弊害という側面がよく取り上げられますが、実は「(高付加価値の)商品やサービスを高く売り、高収益を得る」といった観点が重要であるということがわかります。

総務省:
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index.pdf


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