イールドカーブ・コントロールのねらいとは

日銀は10月31日に開催した金融政策決定会議で、10年国債の金利上限を1%から1%を目処に変更したことが話題になっているが、今回はイールド・カーブコントロールの狙いについて説明したい。

イールドカーブ・コントロールとは、中央銀行(日本の場合日銀)が、国債を買入れることで、その金利をある水準で一定に保つ政策のことである。

日銀によればイールドカーブ・コントロールの狙いは、①GDPギャップのプラス圏を維持して、日本における物価上昇2%の目標を達成すること、②長期的な金融緩和によるマイナスな影響を抑えること、③インフレ・オーバーシュートコミットメント※1 によってインフレ形成期待を高めることとされている。

※1 インフレオーバーシュートコミットメント
将来の物価上昇の期待を形成して、予想インフレ率の上昇を狙うこと

それぞれのメカニズムであるが、
日銀が国債の金利を一定に保つことで、金利上昇を抑えることができる。これは10年国債の金利が金融市場において大きな意味を持つためである。

10年国債は金融市場で広く追随され、長期金利のベンチマークとしての機能がある。金融機関の住宅ローンや企業の融資コストなど経済のあらゆるセクターに影響力を持っている。

そのため、10年国債の金利の上昇を意図的に抑えることで、金融機関の長期金利の上昇を抑えることにつながり、金利上昇による経済活動の鈍化を防ぐことができる。すなわち、資金の借入需要を喚起してGDPギャップのプラスを維持することに繋がるのである。

次に長期的な金融緩和によるマイナスな影響だ。長年続くデフレの影響で金融緩和政策をおこなってきた。金融緩和政策にともない、新規国債の債務残高の増加も増加する中、国債の利回りが財政圧迫のリスクとなっている。国債の金利を抑制することで、国債の利払いを抑え、リスクを逓減させる狙いがある。

さて、次の記事ではイールド・カーブコントロールの副作用やリスクの側面について考察していきたい。


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