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【TCA第5講/デザイン】見えざる氷山をデザインする

今回の内容は、先日受講したTCA第5講の備忘録です。
講義のテーマは「デザイン」で、講師はcanariaの徳田さんでした。

講義内容の中から下記4点についてまとめていきます。

①デザインとは?
②発想とクリエイティブの違い
③デザインの4つの力
④ブランディングデザインとは?

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①デザインとは?

まず、今回の講義の包括的なテーマである「デザイン」について。
徳田さんによる「デザイン」の定義は、「コンセプトを具現化すること」でした。ここで言うコンセプトとは、目的達成のための考えと計画のことです。

で、そのデザインの中でも、僕たちが日常の中でよく目にするのが「グラフィックデザイン」です。ここで言う「グラフィック」とは「審美性を持った視覚表現」なので、グラフィックデザインとは、「審美性を持った視覚表現により、対象のコンセプトを具現化すること」であると言えます。

じゃあ、このグラフィックデザインって具体的に何がすごいの?という話なんですが、そのすごさは、対象の特徴や伝えたい概念を可視化して、「パッと魅せること」にあります。
当たり前っちゃ当たり前ですが、文章だと読み手に数分かけて伝えるメッセージを、グラフィックデザインだと1秒以内に伝えることができます。

ただ、デザインにおいて可視化されるのは、実はほんの一部で、デザイナーはそのデザインに至るまでの「プロセス」に仕事のエネルギーの大部分を費やします。
ここに関しては、「表現の奥の設計=対象の何を言うか?」に膨大なエネルギーを使う、コピーライティングの制作プロセスと非常に近い部分があるなぁと感じました。

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②発想とクリエイティブの違い

そんな風に、目に見える氷山の一角である「グラフィック」だけではなく、その下に潜む巨大な氷塊である「コンセプト」をもデザインするのがデザイナーというわけですが、デザイナーとして仕事をするには「発想とクリエイティブの違い」を認識しておく必要があります。

じゃあ、その違いとは一体何でしょうか。
僕は「クリエイティブな発想」という如何にもキラキラして、シュッとしたワードが頭に浮かんだので、両者の違いが曖昧だったのですが、発想は「思いつき」のことで、クリエイティブは「唯一無二の表現をつくること」であると学びました。
発想は偶発的にパッと出てくるイメージですが、クリエイティブはそのようなものではなく、対象をどのように仕立てて伝えるか?ということをしっかりと考えます。

で、その伝え方として、「原作と演出を分けて考える」と学びました。
原作とはコアアイデアであり、演出とは表現スタイルです。
例えるなら、クラシックの名曲が指揮者や楽団によって異なる魅力を放つイメージ。同じ楽曲でもウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏すれば、保守的になるけど、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏すれば、革新的になるみたいな。

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③デザインの4つの力

ここまで見てきて、「デザインってスゲーんだなぁ」ということは何となく分かってきました。
なので、次はもう一歩踏み込んで、デザインのすごさを因数分解して考えていきます。

デザインには大きく4つの力があり、それが下記の4つです。

①未来を想像する力
②シンプルに整理する力
③魅力と価値を見つける力
④美しい形をつくる力

①は、こうなったらいいな!と、未来がよくなることを願って、ブランドのゴールを想い描くこと。

②は、情報をスクラップアンドビルドする過程で、その構成要素を断捨離することにより、本当に必要な要件をあぶり出すこと。
また、断捨離はネガティブなことではなくて、何かを削ぎ落としていくことにより、残った大切なものと、より濃密に向き合うことができることなんだなぁと気付きました。

③は、長所も短所もどちらも際立つ特徴から、他にはない価値=魅力に変えていくこと。
例に挙がっていたのは、長野県にある「日本で一番暗い村(明度的な意味で)」としてネガティブなイメージがついていた阿智村のリブランディング。
「日本で一番暗い」という短所は言い換えると、「日本で一番星がきれいに見える」という長所になります。
この転換により、阿智村への観光者は爆増しました。
#僕も素敵な彼女ができたら行きたい

④は、経営・事業・サービス&製品を、審美性をもって包括的かつ効果的に伝えること。

では、次にこれらのイケてる力をフル活用した実例として、徳田さんが過去に手掛けた「いろはす」のブランディングデザインについてみていきます。

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④ブランディングデザインとは?

まず、徳田さんによる「ブランディングデザイン」の定義は、「ブランドを醸成するための継続的な計画と実行」です。
ブランドは信頼と憧れの代名詞であり、それを刹那的ではなく、「継続的に」醸成していくということがポイントのようです。

では、実際にブランディングデザインが行われた例として、徳田さんの代表的な仕事である「いろはす」の事例をみていきます。

僕はこの講義を受けるまで知らなかったのですが、「いろはす」はそれそのものが新しく出されたわけではなく、「ミナクア」というブランドのミネラルウォーターをリブランディングする形で登場したものだったんですね。

「全然売れてないミナクアというミネラルウォーターを何とかしてくれ」というマッチョなオファーからこの仕事はスタートします。

まず、競合となる売れているミネラルウォーターをみてみると、どれも採水地が明確で、それがセールスポイントとして機能していました。サントリー天然水は南アルプスで、ボルビックはフランスのオーヴェルニュ地方といった具合です。
しかし、ミナクアは採水地がいくつかあるので、「~産」というイメージを打ち出せていませんでした。なので、ここをどう突破するかを考えていきます。

そして、日本の水について深く考える中で一つの疑問が浮かびます。
「なぜ、日本の水は豊富で品質も良いのに海外から水を輸入したりするんだろう?輸入にはタンカーとか使うし、あんまり環境に良くないよなぁ」と。

そこから環境への問題意識が芽生え、その問題意識をブランドのコンセプトへと昇華させていきます。

そこでまず、ペットボトルに使用する原油を従来の半分にしてみました。
すると当然ながら、従来よりもフニャフニャのペットボトルになります。
これは、しっかりした容器こそ正義!という当時の雰囲気に反する試みでしたが、その薄さ故に容器の透明度が増して、水が美味しそうに見えたり、容器をくしゃってして絞れるというメリットが生まれました。

この「くしゃっと絞れる」という特徴から、「絞ることによってエコへの参加意識を感じることができ、それが世界を変えることに繋がる」という商品のコアアイデアが生まれます。
キャッチコピーは「それだけで 世界を 変える水」。
言うなれば、商品を運動体にして、広告を運動広告にした感じです。

以上のようなプロセスを経て、イケてないウォーターであった「ミナクア」は、お水ヒエラルキーの頂点に君臨する「いろはす」としてリブランディングに成功しました。

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というわけで、徳田さんによるデザインの講義についてみてきました。
デザインもコピーライティングと同様に、表現の奥の設計と表現自体の設計を複合的に考えることが大切だという点が特に印象に残りました。

以降は、生活の中で気に入ったデザインに出会ったら、ただ「…いい!」と思うだけではなく、その奥のコンセプトに深く想いを馳せて、製作者の意図まで考えていきたいです。

最後までお読み頂きありがとうございました!

#広告 #デザイン #グラフィックデザイン

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