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【人道支援チャド】あんただれ、どっからきた?~ジャポネが救急受診をする時~

みなさんこんにちは
人道支援家のTaichiroSatoです

健康が一番!
国際看護師として海外で活動する上で、口から入るものには常々気を使って生活をしているものです。ですが、気を配りながらにしても、体調が崩れることもあります。
何を隠そう、僕は派手に体調を崩しました。ひどい消化器症状に苦しみました。
ここは、チャド。5月は灼熱の外気温、45℃。
そこに嘔吐と下痢(以後ピーコらピーコらと表現します)のコンビネーションで、ド脱水になりました。そして、チャドの救急を受診することになったのです。今回はそんなチャドでの受診での一幕を紹介していきます。

モダンホスピタル ルネサンス
連日の消化器症状で脱水。ヘロっヘロ。
ヨチヨチ歩きをしながら車に乗り込みモダンホスピタル ルネサンスの救急に到着。
救急室に着くや否や、救急ストレッチャーに僕は倒れ込んだ。
すると奥から、のっそのっそと一人の大男が登場し、僕に近づく。

大男は、つやのある肌にアルパカのような目。190㎝はゆうに超えている。果たして屈むことが可能なのだろうかと、こちらが心配になるほどきれいに丸く突出したおなか。どうやらERのボスらしい。
大男から僕への問診が始まった。

ちなみにチャドの平均身長はかなり高い。自分の周りを見回すと180㎝以上ある人がほとんどで、190㎝台がいても珍しくはないほど。

06/2023 Taichiro調べ

大男 VS 僕
どーしたんだ?

・・・嘔吐と下痢が連日止まらなくって。

そうか。とりあえず、血液検査と点滴だ。

・・・よろしく頼みます(ぐったり)。

んで、あんたは、だれ?どこから来たんだ?

・・・僕はタイ。 タイ、サトウ。
・・・ジャポンからきたんだ。

OK、パスポートをみせてくれ。

大男はくいっくいっと僕に手を差し出す。
僕はカバンの中から、赤いボロボロのパスポートを大男に手渡す。
連日の吐き気とピーコらピーコらにより残りHPが少なかった僕は
「パスポートを手渡す」という行動に残りのすべての力を使い、
ここでゲームオーバー。 ボクハ チカラツキタ。

されるがままに手の甲から採血され、点滴が始まる。

点滴直後の僕の脳内を可視化する。説明は不要かと思うので省略する。

雨よ、水よ。乾いた体を満たしたまえ。

僕のカラッカラの身体に、水が浸透していくのがわかる。
おぉぉ。
元気は全く出ないが、少しばかり僕のテンションが高くなる。
そう思ったのもつかの間、ピーコらピーコらの疲れもあったのか、
気が付くと僕は目をつぶり、漆黒の世界へと入っていった。

しばらくして、
暗闇の中にいながらも右へ左へと揺れていることに気付く。
うっすら目を開け、視界に天井と点滴のボトルが入ってくる。
点滴はちょうど空っぽになるところ。
どうやら大男が僕をゆすりながら、声をかけているようだ。

点滴開始

ムシュー、ムシュー。
(※フランス語でMonsieur英語で言うとMr.という意味)
低く地鳴りのような声が頭に響く。

ムシュー トーキョー。

・・・う、うぃ?

ムシュー トーキョーは、 あっちの部屋に移動だ。

・・・う、うぃ。

ストレッチャーで違う部屋に搬送される僕。

ムシュー トーキョー、 ムシュー トーキョー
ティアン サ。(これ、どうぞ)

手渡された処方箋

大男は一枚の紙きれを差し出す。
付き添ってくれていた同僚のマグロアが処方箋を1度見ては僕の顔を覗き込み、もう一度処方箋を見ては、また僕の顔を覗き込む。
一瞬、ふわっと間が空いた後、マグロアは笑い転げた。

テキトー、かつ、的確
タイ!
今日から君は「ムシュー トーキョー」だ!

マグロアはまだ笑い転げている。

僕は、ぼやぼやしていて全く気にならなかったが、
病院中の皆が僕のことを
ムシュー トーキョー と呼んでいるではないか。

なんと大雑把でテキトーな処方箋か。
しかし、ムシュー トーキョー は、確実に僕個人を特定している。
これほどにテキトーかつ的確なネーミングは他にないだろう。
おそらくここチャドで、ムシュートーキョーといえば、
100人が100人僕を指さすだろう。

何も処方箋に限ったことではない。
処方箋、検査表、領収書。。
すべてのドキュメントが
トーキョー サトウ になっているではないか。

これはノンフィクションです。

こんなに大量の書類ができるまで、何カ所もの部署を通しているわけだが、
ここに至るまでに誰も何とも思わなかったのだろうか。

医療サービス本質を問う
本当に体調が悪いとき、人は笑う余裕がない。
しかし
ホスピタル ルネサンスは、
あの大男は、
僕に笑う余白を作ってくれた。
僕の想像をはるかに超えたところに
ホスピタル ルネサンスのサービスはあるのだろう。
無茶苦茶だが、面白い。
無茶苦茶のようだが、的確である。
僕は確実に元気になった。

日本から来た一般人の体調不良者は、
ホスピタル ルネサンスに来て、一瞬にして日本の首都になった。
よく市役所や銀行で目にする申し込み用紙の例。

 例)ニッポン タロウ のように、
僕は、トーキョー サトウ になったのだ。

心も体も 人を元気にする。
そんなことができる大男になりたいと
僕は思ったのだった。


あとがき

このあと僕は、
これじゃ医療保険がおりないじゃないか!!と非常に焦り、
でも面白いから書類はどうしてもとっておきたくて、
保険書類だけ正しい物に修正をしてもらった。
病院事務担当者と僕とマグロアの3人は、
修正している間も書類を見ては、笑いがおさまることはなかったのだった。

海外での活動は、ネタの宝庫である。
だから、飽きない、面白い。

Best,
Tai

※投稿内容はノンフィクションです。
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