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【人道支援ウガンダ】緊急医療に携わる人道支援家たちのリアル~世界はとても眩しく、醜い~

割引あり

みなさんこんにちは
人道支援家のTaichirosatoです。

日本はじめじめと熱く過ごしにくい日々が続いているのでしょうか?
僕はというと、現在はアフリカのウガンダで「緊急支援トレーニング」を受けています。
気温は25℃くらいでとてもカラッとしていて汗をかくこともなく、朝夕はエスワティニ王国(旧スワジランド)で買ったパーカーを着て過ごしています。

アフリカライフな僕ですが7日間のトレーニングコースを昨日修了し、これから日本へのフライトで帰る予定です。
トレーニング後の今の気持ちはというと、大人の学びの楽しさと自身の成長を実感したのと同時に世界中にある様々な人道的な課題を認識した期間でもありました。
そして、多くの同志に出会えた喜びと別れを経験することでなんだが自分の心がいっぱいになってきたのでnoteに想いを綴ってみることにしました。
世界は常に動き、僕らに何かを語り掛けてくるようです。
これから書く僕の等身大もまた、人道支援のリアルとして読み進めてもらえたら嬉しく思います。

緊急支援研修
去年の3月、僕はダメもとで一つの研修に応募した。
緊急支援研修。各国の緊急プロジェクトを牽引するマネージャーレベルの人たちが選抜され、緊急支援に対する知見を共有し学びを深めるこのトレーニング。これは、何年待ってもなかなか選抜されない人がほとんどという研修の一つだ。
4年間で7回の派遣経験の僕は、他のメンバーに比べると人道危機対応経験が少ないため、ダメ元で応募した。しかし、運よく選抜され今回のウガンダでの研修を受けることが出来たのだった。

研修は、世界中の緊急支援プロジェクトに携わる様々な職種のマネージャーたちが一同に集まり、7日間というボリュームで緊急支援への基本や応用を共に学ぶ。自然災害、麻疹、コレラ、髄膜炎などの特異的な疾患、厳しい環境下でのライフラインの作り方など、内容は実践的なものばかりだ。
2000年以降に僕らの団体が経験した人道危機での事例を取り上げながら対応例を徹底的にデスカッションし考察した。
プロジェクトの主軸を担うマネージャーたちが、それぞれの危機対応経験を共有したり、より多くの命を救うためにどうするべきか、意見を交わし次へのアクションを総合的に考えることは、今後の僕らの活動にいい影響を与えるだろう。
ここで僕が出会う仲間たちは、みな経験豊かで初めて会うメンバーがほとんどだったが、中には僕が各地で共に危機対応をした懐かしのメンバーもいて、僕にとっては旧友たちと思い出話を楽しんだ時間にもなったのだった。


最終日のでき事
このコースには危機対応のプロとして3人のファシリテーターが参加していた。彼らは経験を共有しつつ、僕たち参加メンバーが話し合うために必要な過去の出来事(題材)やヒントを効果的にくれ、僕たちの学びの深堀りをアシストしれくれた。
コースのファシリテートだけでなく、時に彼らは僕らの盛り上げ役として一役買ってくれ、特にメインファシリテーターであるフランス人のクレアは、輪の中心に立って歌ったり踊ったりと、コースを盛り上げてくれた一人だ。

最終日。
7日間のコースも締め括りを迎えたこの日。
休憩を挟んだ後クレアが話始めるやいなや、彼女は突然の沈黙し皆の前で泣き崩れた。
僕らは唖然とし、はじめ何が起こったのかわからなかったが、それが良からぬことだとすぐにわかったのだった。

いつも気さくなクレアの突然の涙の理由。
彼女は僕らに少し呼吸を整えあと、こう語り始めた。

たった今、私たちにとって残念なニュースを受け取ったの。
それは、同団体の私(クレア)の友人が緊急支援活動中に亡くなったという報告だった、と。

そして、それはコース参加メンバーの一人であるジョンの親友であるとも付け加えた。
周りを見回すと、僕の左斜め後ろに座っていたはずのジョンはそこに居なかった。

僕とジョン
ジョンはロジスティシャン。僕らにチームが世界中どんな所にいても活動が継続できるように、僕らの住む場所を確保し、建物を作り、生活用水を整え、食事など僕らの生活のすべてを作ってくれるプロだ。もちろん困難に直面し現地で生活する人たちの生活を作るのも彼のプロフェッショナリズムである。
僕とジョンは、2023年チャドで出会った。同年、スーダンの難民対応していた時、彼は僕のルームメイトで僕らはウガンダで久々の再会を喜び、この7日間は何かと思い出話に華を咲かせた。とても気さくで優しいジョン。僕なりに彼のことはよく知っているつもりでいた。その彼が、クレアの涙から少しした後、僕らのところに戻ってきたときには、真っ赤に目を腫らしていた。
あんなに悲しそうな顔をし、泣いているジョンを見たのは初めてだった。


人道危機の現場で戦いづつける僕らのリスク
世界的な人道危機に立ち向かう団体はたくさんある。それぞれに専門性を活かし、医療、食べ物、住居、水など様々な分野でそれぞれが「困難にある人達を支える」という共通の目的で今日も各所で活動をしている。

そんな僕らが永続的に抱えているリスク。
現地活動中の病気やケガ、自然災害発生や感染症、事故や事件。
僕らはたくさんのリスクと向き合いながら活動をしている。
それらを最小限にする努力をしていても、やはりゼロにはできないのが現状だ。
僕もこの活動を4年以上続けているが、僕らの仲間であるメンバーが(様々な理由によって)亡くなったという報告を受けることを時折経験した。
今年6月にウガンダにいた時も、そして今回の研修の時も。
その手の報告を受けるたび、それがなぜ起こらなければならなかったのか、想像したくなくとも想像をせざるを得ない人道危機のリアル。
たとえそれが、自然的要因であっても、人的要因であっても、僕らはそのリスクを踏まえて活動をしている。
十分に理解している。理解をしているが、目の前で友がこんなにも悲しんでいる姿を見るのは辛く、人道危機の現実をこれでもかと突きつけられているような思いだった。

国に帰れない仲間たち
今回のコースに参加しているメンバーは多国籍。フランス、イタリアなどのヨーロッパ勢、ネパール、パキスタンなどのアジア勢、カメルーン、南スーダンなどのアフリカ勢、そして、イエメン、レバノンなどの中東勢。
レバノン人のハムッドとメイサンは、僕と同じ便でエチオピアを経由して帰国する予定だった。しかし、前日にエチオピアからレバノンまでのフライトがキャンセルになる可能性があることを知らされたそうだ。

彼らは予定していたフライトでは母国のレバノンに帰れない。
数日前から、レバノンの空爆が激しさを増し、レバノン行の航空会社の運航が全欠航になったという。今後のフライトも見通しも立っていないらしい。
その後の知らせで、彼らは違うルートで国に帰れることがわかって僕は安堵したがレバノンの国の状況を考えると安心して帰れるという言葉は誰の口からも言えない状況だった。

(これ以下書く内容は、あくまでレバノン人から聞いた内容であり事実でない内容も含まれる可能性があるため、興味のある方はご自身で調べてみることをオススメする。)

イスラエルとレバノンの関係
レバノンの空爆と聞いてあまりピンとこない人もいるかもしれない。細かい内容は割愛するが、少しだけ解説を入れておく。
2023年から激化しているイスラエルとハマスの間での紛争。
紛争は日本のニュースで知り得る場所に限らない。
パレスチナに主力があるハマス組織とその隣国であるレバノン国内にある組織の一部につながりがあり、その組織もイスラエルの攻撃対象になっている。結果的に、レバノンの一部の地域ではイスラエルの攻撃を受けている。
その攻撃の一つが空爆によるものであり、ここ1週間イスラエルからレバノンへの攻撃が激化しているというのだ。

紛争は、A対Bという単純な構図ではなく、AとBの周りのたくさんの国や組織を巻き込み多くの被害を生んでいる。そしてそのほとんどが、日本や世界各国ででニュースに取り上げれることはなく、世界の大きな抑止力も働いていておらず、長期化している要因の一つともなっている。

僕とハムッドとメイサンは一緒に夕食を食べたが、夕食の間中、ハムッドは電話をし、いろんな部署や家族とやり取りをしていた。メイサンはTikTokとInstagramを食い入るようにチェックしては、情報を収集していた。
僕もメイサンの隣で状況を見せてもらったが、人がたくさん住む普通の市内地の建物が空爆によって破壊され、けが人・死者の数はまだ全くわからないと行きつく間もなくSNSの投稿者は叫ぶ。
あの動画と写真をみて、けが人や死者の数が小さな数で収まるということがとてもじゃないが僕には想像できなかった。

彼らは、最後の瞬間までレバノンに帰れるかわからない、家族が心配でしょうがない、と僕に話した。

TikTokやInstagramで祖国の空爆の状況を確認する日本人はおそらく一人もいないだろう。彼らにとって、InstagramやTikTokといったSNS媒体はタイムリーな情報を拾う非常に大事なツールなのだ。

決して他人ごとではない世界、想いを世界に馳せる
クレアとジョンの涙。
ハムッドとメイサンの帰国事情。
僕にとって大切な友人の痛みや悲しみ、不安は決して他人ごとではない。
目の前で泣き崩れる友を見て、不安で居ても立ってもいられない友を見て、あなたならどうするだろうか。

正直、僕には彼らにかける言葉が上手く見つからなかった。
”Sorry..” と ”It will be fine Inshallah..”
僕の感情と言葉をそれぞれに伝えた。
自分が発した言葉になんの責任も持てない僕自身が情けなくもあった。

彼らの横に座り彼らと共に時間を過ごしながら、僕はふと考える。

僕自身にも起こりうることだ。
今まで世界で出会った大切な仲間たち。
今まさに心を痛めている クレアやジョン、ハムッドやメイサン。
人道支援に関わる誰もがリスクを抱えている。

突然の別れを余儀なくされる
世界で出会う仲間たちの予期せぬ別れを知らされる瞬間が来るかもしれないなんて、想像しただけで辛い

それでも僕らが人道支援に関わる理由は何なのだろうか。


誰かにとって祖国が戦禍にまみれている場合は選択する余地もない。
僕の場合は日本という国で活動することもできる。
大切な友を失うかもしれないという、リスクや機会は今より少ないかもしれない。

それでも僕は前に進みたい。

僕の大切な仲間たちは、なぜこの活動を選んだのか
そして僕はなぜここにいるのか

それぞれにとっての解は違くとも、
行きつく先に見るものは同じなのだと思う。

未来に命をつなぐ。
困難にある人たちの希望であれ。
自身を活かし、誰かにとって大切な命を守る。
必要としている誰かのために。
自分自身は、愚真であれ。


理不尽にまみれた世界も
一人では出口のない無理難題も

仲間となら解を導けるかもしれない。
仲間となら確立をあげることが出来るかもしれない。

共に本気で学び
共に支え合い
共に実現しよう

知ることで、行動の選択肢が増え、
活用することで、もっとたくさんの命を守れる。
学ぶことを終わらせず、それらを活用する場所に自身の身を置く。

世界の人道危機で活動する僕らのシンプルな行動規範なのかもしれない。


おわりに
世界を知れば知るほど身近に感じ
出会った人たちを、そして彼らの故郷を好きになる

世界を知れば知るほど残酷な現実を知り
予期せぬ別れとどうにもならない事象に悲しくなる

僕にとっての世界は、
眩しくて、醜い

僕にできることは何か
いま一度、僕自身に問いかける。



Best,
Tai
ウガンダのホテルの一室にて

※投稿内容は全て個人の見解です。
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また次回お会いしましょう。

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