浅間山の麓から 第1話 東京脱出
東京脱出
大学以来、今までの人生の殆どを暮らしてきた東京から引っ越すことにした。いくつかの理由がある。会社を辞めたこと、60歳を過ぎたこと、コロナが蔓延したこと、身近な友人が亡くなってこれからを考えたことなどなど。引越し先は長野県軽井沢。5年ほど前から別荘を持っていたところだ。
引っ越すにあたって新しい家を建てた。軽井沢のはずれ、追分というところだ。近くには浅間サンラインがあり、上田までのすばらしいツーリングを可能にしてくれている。私の部屋からは浅間山の頂上が見える。晴れた日には火口からの煙も見え、活火山であることを教えてくれる。浅間山はこれからのパートナーだ。
私は直近の5年ほど四谷3丁目に住んでいた。気に入っていた地域と家を離れるのは後ろ髪をひかれる部分もあるが、「変化が大事」と心に言い聞かせて離れることにする。
いざ長く住んでいた東京から引っ越すことになるとやるべきことがたくさんある。自分の持っているものの見直しと断捨離だ。例えば自宅を売却しなくてはならない。サラリーマン時代の服や靴も思い切って整理する。色々な契約関係も見直し、必要なものは住所変更する。物理的な引っ越し作業もなかなか大変だった。いらないものを捨てていく。
一つ一つの所有物を確認しながら、それはどんな背景があったのか、これからも使うものかそうでないか、自分にとってどんな意味があるかを判断しながら自分の棚卸しをしていく。そうしていく中で人生の1つの区切りを感じ将来に対する自分のスタンスを作っていく。新しい生活に少し心を弾ませながら、自分は定住タイプではなく、流浪タイプだなあと思ったりする。