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がんばらない

私は大学受験で2年間、浪人生活をしていた。
これを話すと美大に入るのに頑張ったんですね。といわれるが、浪人生活の内訳を話すと1年目は化学系の学部を志望し、2年目から美大の建築や工芸を志望していた。正直、美大に入ることができれば学部はなんでもいいや、くらいに思っていた。

2浪目からは、名古屋にある河合塾の美術予備校に通って、毎日デッサンやら立体構成やら、夜は水彩で色の研究をしてみたり、文章も書けるようにと小論文の講座も受講したり、学科試験の対策もしたり・・・と、やっていると意外になんとかなっていくもので、デッサンなど全くの初心者だったが、始めて9か月くらい経った頃か、わりと受験用の絵の描き方が身についた。ここまではあまり頑張ってやったような感覚はなかった。

が、しかし、それは気づかないうちに忍び寄っていた。
やたら頭を使っていたのか、甘いものを欲し、手短にあった寒天をバカ食いしたら腸がつまって腹の激痛。入院。浣腸されて経過観察。
センター試験(現・共通試験)の2週間前だった。しかも、願書の提出期限も迫っていた。
とりあえず1週間くらいで退院できて、入院中も願書作成などして過ごし、無事ことなきを得た。

このとき思った。
知らず知らずのうちに身体が勝手に頑張っていた。無自覚のがんばりが身体を弱らせ、寒天ごときで腸閉塞になるような状態にまで陥っていた。
この全く自覚できていない「がんばり」は、ほんとうに怖いと思った。

それからというもの「がんばらない」ことをモットーに生きている。
これを言うとだいたい「ふしだらな」人間と思われるが、実際にふしだらに生きているのでどう思われようとどうでもよいと思っている。

それからもついつい頑張ってしまうことがあるが、やはり何度経験しても頑張ってやったことで何かうまくいったことなど何もない。体調も悪くなるし、結果も悪い。良いことがなにもない。よく「肩の力を抜いて」というが、まったくその通りで、肩の力どころか全身ダラダラで、寝転がって何かしているほうが良い。

よく過労による自殺など話を聞くが、1つにはこの「無自覚ながんばり」も理由にあるのだろうな、と思っている。

もし近くにいる人が頑張りすぎていたら、「頑張りすぎだよ」とそっと教えてあげることで、救えることもあるのだと思う。

頑張らない。
だらしなく生きる。

※ちなみに今でも「寒天」を見ると「浣腸」を思い出します。寒天は大好きです。

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