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アフェレシスとAIの繋がりについて

医療分野でのAIの利用について

AIについて

医療分野でのAI(人工知能)の利用が進展していますが、AIという用語には一様な定義がなく、専門家によって見解が異なることもあります。AIは多くの手法やアプローチから構成されており、その一例として機械学習があります。機械学習は、大量のデータから有用な情報やパターンを見つけ出し、それを用いて問題解決や予測を行います。さらに高度な形の機械学習である深層学習も存在し、これを用いれば更に複雑なデータ解析も可能です。

ただし、これらの先進的なAI技術を効果的に医療分野で活用するためには、大量かつ質の高いデータが必要です。このデータは、整理と管理が行われたデータベースに保存されるべきです。よく構築されたデータベースは、データの二次利用を促進し、より大規模なデータ解析を可能にする可能性があります。

データベースとは?

データベースっていうのは、ざっくり言うと「電子の情報収納庫」です。図書館が本をきちんと分類して棚に置いてあるように、データベースも情報を整理して、すぐに取り出せるようにしてくれます。これが医療の現場で大事なのは、医療情報って本当にたくさんあるからです。患者さんの診療の記録や検査の結果、治療の履歴といったデータが毎日どんどん増えます。これらをうまく整理してすぐ取り出せるようにすることで、医療の質も、速さも上がるんです。

これがアフェレシスという治療にも関係してきます。アフェレシスの概要は、血液をちょっと体から出して、不要なものを取り除いて、また体に戻す治療法です。この治療がどんな時に必要で、どんな膜が一番いいのかといったことも、データベースがあれば素早く正確に判断できるようになります。だから、医者や看護師がもっと正確な判断を下せるようになり、患者さんももっと安全で効果のある治療が受けられる可能性が高くなるんです。

電子カルテの重要性

電子カルテが導入されると、その裏で動いているのがデータベースです。電子カルテに書かれた情報は、データベースでしっかりと整理され、保存されます。これがあると、必要な情報をすぐに取り出せるので、医者や看護師の手間がかなり減るんです。病歴や検査結果、薬の処方など、すぐに確認できるので、診療がスムーズに行えます。

さらに、データベースがきちんと整理されていると、その情報を後で他の用途にも使えます。例えば、大量の医療データを解析して、新しい治療法や薬を開発するときにも役立ちます。医療技術もAI技術もどんどん進化しているので、そういった大量のデータを効果的に分析して効率よく次につなげることが可能となります。

2018年に出た「次世代医療基盤法」という法律によって、このデータ活用がさらに進む予定です。この法律では、医療情報を安全に使いやすくするためのルールが決まっています。それで、AIやデータ分析がもっと簡単に、そして安全に行えるようになるんです。

患者さん一人一人が持つデータは、年齢や性別、住んでいる場所、病気の種類など、いろいろな要素があります。これらをうまくデータベースで管理して、それぞれに合った最適な治療を提供することが可能になります。
もしデータベースの管理が甘いと、治療の効果がちゃんと測れなかったり、患者さんにとってリスキーな状況が増えてしまう可能性があります。

PHR(Personal Health Record、個人健康記録)

ここで重要なのがPHR(Personal Health Record、個人健康記録)とデータベースです。PHRとは、一人一人の医療情報や健康状態を自分で管理できるシステムです。例えば、何回病院に行ったか、何の薬を飲んでいるか、といった情報が自分で確認できるんです。

1つ目は、国民や患者さんが自分の医療情報を自分で管理できるように、必要なシステムや環境を整えること。これができれば、医療情報をもっと活用して、自分に合った治療やケアができるようになります。

2つ目は、この医療情報をどう活用するか。PHRやデータベースが整っていれば、医者も患者さん一人一人に合わせた治療がしやすくなります。

3つ目は、これらの医療情報を使って、新しい治療法や薬を開発する研究も進められます。質の高い医療を提供するためには、こうした研究開発が必要です。

つまり、PHRとデータベースがしっかりしていれば、医療がもっと進化しますし、患者さんも医者も、もっと効率良く、質の高い医療を受けられる・提供できるようになるんです。そのため、これからはPHRとデータベースの整備がすごく重要なんです。

参考URL https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000741661.pdf

チーム医療の重要性

復習ですが、データベースとは何かというと、医療の情報をきちんと整理して保存する大きな箱みたいなものです。この箱がしっかりしていると、医療データを簡単に探せるようになります。

次に、産学連携というのがあります。これは、大学や研究機関が企業と手を組むことで、最新の研究がすぐに医療の現場に生かされるわけです。そうすると、新しい治療法や薬がすぐに使えるようになって、患者さんの治療がより良くなります。

AIについて理解していることも大切です。AIが何をできるのか、どう使えばいいのかを医療の人たちが知っていると、AIの力を最大限に活用できます。それができないと、AIのすごい能力が半分も生かされないんです。

最後に、チーム医療があります。これは、医療従事者、システムエンジニア、経営者など、いろんな専門の人が一緒になって、最高の医療を提供すること。一人一人が持っている知識やスキルをうまく組み合わせることで、医療がもっと効率的で質の高いものになるんです。

そのため、AIやPHR、データベース、そしてそれらをうまく活用できる人材がいると、医療はもっと進化します。
患者さんにとっても、医療機関にとっても、メリットがあります。

データベースとAIのしっかりした使い方ができれば、医療の質は上がるし、みんなの仕事も楽になります。

一方で開発側には、現場のニーズを把握するために、
現役の医療従事者の方の知見は非常に重要になります。

以下にアフェレシスについて基本的な内容と
AIを活用する際の一例を示したいと思います

アフェレシス(Apheresis)について

基本概要

アフェレシスは、血液を体外に取り出し、特定の病原物質を除去した後に体内に戻す治療法です。

アフェレシス治療の種類

アフェレシス治療には
血漿交換、血球成分除去療法、血液吸着療法などがあります

血漿交換における治療の種類

 単純血漿交換

 二重ろ過血漿分離交換

 免疫吸着材

血球成分除去療法

 白血球除去療法

 顆粒球除去療法

血液吸着療法

 β2 ミクログロブリン吸着カラム
 
 活性炭

 エンドトキシン吸着

 LDL及びフィブリノーゲンの吸着(今回詳細に書きます)

アフェレシスで使用される物質分離の方法

以下に、アフェレシスで一般的に使用される物質分離の主要な方法について説明します。

1. 拡散 (Diffusion)

拡散は、濃度差によって物質が高濃度から低濃度へ自然に移動する現象です。アフェレシスにおいては、拡散は主に透析に利用されます。透析膜を通して小分子の溶質(例:尿素、クレアチニン)が拡散によって除去されます。治療のクリアランスは血液流量、透析液流用、膜の性質により、規定されます。
欠点としては大分子の除去が困難であることが挙げられます。


拡散の数学的な表現はフィックの法則(Fick's Law)があります


今回の記事のタイトルにAIが記載されているということで 
数学的な視点から(AIの勉強では数学の知識が重要です)
pythonのオリジナルソースコードを載せてみます

#フィックの拡散の第一法則
#拡散の流れ(流束)Jが濃度勾配に比例するという法則をシミュレートします 
import numpy as np

def fick_first_law(D, dC_dx):
    """
    D: 拡散定数
    dC_dx: 濃度の空間勾配(単位: 濃度/距離)
    """
    J = -D * dC_dx
    return J

# 拡散定数 (例: 1.0)
D = 1.0

# 濃度の空間勾配 (例: -0.2)
dC_dx = -0.2

# 拡散の流れ(流束)を計算
J = fick_first_law(D, dC_dx)
print(f"拡散の流れ(流束)J: {J}")


#フィックの拡散の第二法則
#濃度が時間にどう変化するかをシミュレートします。この例では1次元の拡散を考えます。
#拡散の幅をシュミレート

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

def fick_second_law(D, C, dx, dt):
    dC_dt = D * (np.roll(C, -1) - 2 * C + np.roll(C, 1)) / dx**2
    C_new = C + dC_dt * dt
    return C_new

# 拡散定数
D = 0.1

# 初期濃度分布
C = np.zeros(100)
C[45:55] = 1

# 空間の刻み幅と時間の刻み幅
dx = 1.0
dt = 0.1  # 時間ステップを大きくしてみました

# シミュレーションとプロット
plt.figure()
for i in range(100):
    plt.clf()
    plt.plot(C)
    plt.ylim(0, 1)
    plt.pause(0.1)
    C = fick_second_law(D, C, dx, dt)

Fick A. Uber diffusion. Ann. Phys(ik) . 1855:94:59-86.


1ステップ


100ステップ

2. ろ過 (Filtration)

ろ過は、圧力差を利用して液体や溶質を膜を通して分離する方法です。アフェレシスにおいては、血液成分(例:血漿、血小板)を分離する際に使用されます。特定のサイズの膜孔を通過できる成分だけが分離されるため、サイズによる選択性があります。

血液ろ過透析器は透析ろ過に使用され 血液透析より大分子(20~30kDa)までの除去に優れています

一般的に血漿交換あるいは血液ろ過が適応となる疾患では一般に病原物質は自己抗体などの蛋白であるとされています


3. 吸着 (Adsorption)

吸着は、固定相(吸着材)の表面に溶質が付着する現象です。アフェレシスにおいては、特定の血液成分(例:LDLコレステロール、エンドトキシン)を除去するために使用されます。吸着材の種類や性質によって、どの成分をどれだけ効率よく除去できるかが決まります。

4.遠心 (Centrifugation)

遠心は、高速回転を利用して物質を質量や密度に基づいて分離する方法です。アフェレシスにおいては、遠心力を用いて血液成分(例:赤血球、白血球、血漿、血小板)を層に分けることが一般的です。遠心装置内で血液を高速回転させることで、各成分はその密度に応じて異なる層に分かれます。

この遠心分離法は、特に血液製剤の製造や特定の血液成分の除去・採取において非常に有用です。


上記の内容からAI応用の研究は様々なものが想像できますが
時間の都合上

今回は上記の中でも 血液吸着療法に着目しました


血液吸着療法と原理

血液吸着療法は、血液を取り出しそのまま直接カラムに通し、また血液を身体に返す治療法です。

原理には 吸着 を利用します

では吸着に影響を及ぼす特性は何でしょう?

吸着に影響を及ぼす特性

①電荷
物質の中でも陰・陽の電荷をもっているイオン化物質では、同じ電荷同士では反発するが、別の電荷同士では引き付け合うという性質があります
このため例えば陰性荷電をもった吸着剤に、血漿を流入させると血漿中の陽性電荷物質が吸着剤に吸着されます

AIを利用する際には数学的な概念の理解も重要なため
少し式で示して python のオリジナルソースコードも作成してみます

電荷とは帯電したものが持っている電気の量のことをいいます。
陽子に比べて電子が多いと-、電子が少ないと+となります。
記号はQ、単位はC(クーロン)で表します。
2つの電荷量をQ1、Q2、距離をr[m]、両電荷間に働く力をF[N]とすると、クーロンの法則は次の式で表されます。


クーロンの法則


参考URL:https://www.keyence.co.jp/ss/products/static/static-electricity/electrification/charge.jsp

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

# クーロン定数(単位を気にしない場合は1とする)
k = 1.0

# 位置の初期値(陰性荷電を持つ吸着剤は0、陽性電荷物質は1に配置)
x_adsorbent = 0  # 吸着剤(陰性電荷)
x_substance = 1  # 陽性電荷物質

# 電荷の大きさ(陰性と陽性で符号が異なる)
q_adsorbent = -5
q_substance = 2

# 時間ステップと総ステップ数
dt = 0.01
n_steps = 1000

# 結果を保存する配列
positions = []

# シミュレーション
for _ in range(n_steps):
    # 電荷間の距離
    r = np.abs(x_adsorbent - x_substance)

    # クーロン力の計算
    F = k * np.abs(q_adsorbent * q_substance) / (r ** 2)

    # 陽性電荷物質に働く力(方向に注意)
    F_substance = -np.sign(x_adsorbent - x_substance) * F

    # 陽性電荷物質の位置の更新(単純なオイラー法)
    x_substance += F_substance * dt

    # 結果を保存
    positions.append(x_substance)

# グラフの描画
plt.plot(positions)
plt.xlabel('Time step')
plt.ylabel('Position of positively charged substance')
plt.show()

このシミュレーションでは、陽性電荷物質が吸着剤に向かって動く様子が描かれます。距離が短くなるにつれて、力が大きくなり、より速く吸着剤に向かって動きます。

このモデルはかなり単純化されていますが、電荷間の基本的な相互作用を示す一例となっています。



②疎水性・親水性

水は極性を持った分子です。このため、電荷をもっていたり、極性を持っていたりする分子とは会合します。こうした物質は水との親和性が高く、親和性物質とよびます。一方極性をもたない分子では水との親和性が低く、こうした物質を疎水性物質と呼びます。

余談ですが 
細胞膜もリン脂質(親水性)や脂肪酸(疎水性)が利用されてます

細胞膜とは、細胞の外側を覆っている膜のことです。この細胞膜は特に「リン脂質」という成分と「タンパク質」という成分でできています。

リン脂質って何?と思うかもしれませんが、リン脂質は2つの大きな部分からできています。その一つは「リン酸」で、もう一つは「脂肪酸」です。

ここで大事なのは、リン酸は水によくなじむ「親水性」がありますが、脂肪酸は水になじみにくい「疎水性」があります。この親水性と疎水性の違いが、細胞膜を形作る大きな理由なんです。

細胞膜を見ると、リン脂質が2列になって横に並んでいます。これを「リン脂質二重層」といいます。親水性のリン酸部分は細胞の外側と内側に向いています。疎水性の脂肪酸部分は中央にくっついています。

数学的に表現と pythonソースコード

親水性は一般的に表面エネルギーによって数学的に表現されることが多いです。水分子と表面との相互作用を考慮して、そのエネルギーが低いほど親水性が高いとされます。しかし、この説明はかなり専門的な話になります。

Pythonで親水性をシミュレートするというのは非常に広いトピックですが、非常に簡単なモデルとして、2次元の格子上に「水分子」と「親水性を持つ分子」を配置して、どれだけ水分子が親水性を持つ分子の周りに集まるかを見る、といったシミュレーションが考えられます。

以下はそのような非常に単純なシミュレーションのPythonコードです。
Google Colaboratory 推奨です
Google Colaboratoryとは?という方は以下を参照して下さい
https://blog.kikagaku.co.jp/google-colab-howto

from IPython.display import HTML
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import matplotlib.animation as animation

# Initialize grid: 0 for empty, 1 for water, 2 for hydrophilic molecule
grid = np.zeros((20, 20))

# Populate grid with water molecules at random positions
for _ in range(200):
    x, y = np.random.randint(0, 20, 2)
    grid[x, y] = 1

# Place hydrophilic molecules at the center
grid[9:11, 9:11] = 2

# Initialize figure and axis
fig, ax = plt.subplots()
im = ax.imshow(grid, cmap='tab10')

def update(num):
    global grid
    # Randomly move each water molecule
    for x in range(20):
        for y in range(20):
            if grid[x, y] == 1:  # if water
                dx, dy = np.random.choice([-1, 0, 1], 2)
                new_x, new_y = (x + dx) % 20, (y + dy) % 20
                
                # Increase the probability of moving if adjacent to a hydrophilic molecule
                if np.any(grid[max(0, x-1):min(20, x+2), max(0, y-1):min(20, y+2)] == 2):
                    if np.random.rand() < 0.8:
                        grid[new_x, new_y], grid[x, y] = grid[x, y], grid[new_x, new_y]
                else:
                    if np.random.rand() < 0.2:
                        grid[new_x, new_y], grid[x, y] = grid[x, y], grid[new_x, new_y]
    im.set_array(grid)
    return [im]

ani = animation.FuncAnimation(fig, update, frames=100, blit=True)

HTML(ani.to_jshtml())

通常、matplotlibのデフォルトのカラーマップ('tab10'を使用しています)には様々な色が割り当てられています。このシミュレーションでは、

  • 値が0のセル(空のセル)が青(Dark Blue)

  • 値が1のセル(水分子)が水色(Light Blue)

  • 値が2のセル(親水性の分子)が茶色(Brown)


0ステップ


100ステップ

上記のコードでは、animation.FuncAnimation関数のframes=100パラメータにより、update関数が100回呼び出される設定になっています。したがって、このシミュレーションは100ステップ繰り返されることになります。それぞれのステップ(または「フレーム」)で、update関数が実行され、グリッドが更新されます。

(親水性の分子)が茶色(Brown)が動くことにより水分子も移動して
100ステップ目で水分子の値が 
親水性の分子に引っ張られて動いたことがわかりました

今回血液吸着療法に着目したのは
LDL吸着療法で使用される
末梢動脈疾患用の吸着式血液浄化用浄化器
についてのAI応用を考えたためです

血液吸着療法とAI予測の可能性

について詳しく記事を書いてみます

最近注目されているのが
LDL吸着療法で使用される
末梢動脈疾患用の吸着式血液浄化用浄化器です

以下の特集では非常にわかりやすくまとめられています

https://www.jsao.org/files/magazine/51_1/51_55.pdf

上記の特集内容を参考に記事を作成しました


特集の特集では非常に詳しく背景より記載されておりました

末梢動脈疾患

「足の潰瘍・壊疽は糖尿病の合併症」と一般に考えられがちですが、実際には慢性腎臓病(CKD)自体が末梢動脈疾患(PAD)の独立した危険因子です。

O’Hare AM, Vittinghoff E, Hsia J, et al: Renal insufficiency and the risk of lower extremity peripheral arterial disease: r e su lts f r om t he He ar t a nd Es tr oge n/ Pr o ges ti n Replacement Study(HERS). J Am Soc Nephrol 15: 1046- 51, 2004


特に透析患者では、血管石灰化の影響が大きく、末梢側の動脈狭窄・閉塞が起こりやすいため、治療が困難です。

Ohtake T, Oka M, Ikee R, et al: Impact of lower limbs’ arterial calcification on the prevalence and severity of PAD in patients on hemodialysis. J Vasc Surg 53: 676-83, 2011

さらに、心血管疾患や脳血管疾患の合併も多く、その予後は厳しいです。

EVT治療方法

基本的な治療としては、禁煙や抗血小板薬などの薬物療法があります。重症下肢虚血(CLI)を合併した患者では、創傷ケア以外にも、バイパス手術や血管内治療(EVT)など、血流改善のための治療が必須です。

小林修三:慢性腎臓病と末梢動脈疾患の進行.日内会誌 105: 842-9, 2016


しかし、透析患者のPADの特性から、血行再建だけでは治癒は難しく、LDL-アフェレシス(LDL-A)の併用が有用であることが多いです。

Kobayashi S: Applications of LDL-apheresis in nephrology. Clin Exp Nephrol 12: 9-15, 2008

2021年に上市された全血吸着型の血液浄化器「レオカーナ」は、この点で新しい可能性を開いています。

透析患者の末梢動脈疾患

腎機能障害はPADの独立した危険因子であり、透析患者は高齢化が進んでおり、高血圧や糖尿病の合併も多いです。

O’Hare AM, Vittinghoff E, Hsia J, et al: Renal insufficiency and the risk of lower extremity peripheral arterial disease: r e su lts f r om t he He ar t a nd Es tr oge n/ Pr o ges ti n Replacement Study(HERS). J Am Soc Nephrol 15: 1046- 51, 2004

そのため、透析患者にPADの合併は多く、導入期透析患者のPAD合併頻度は21.1%、維持透析患者では41.4%と増加しています。

Ishioka K, Ohtake T, Moriya H, et al: High prevalence of peripheral arterial disease(PAD) in incident hemodialysis patients: screening by ankle-brachial index(ABI) and skin perfusion pressure(SPP) measurement. Renal Replacement Therapy 4: 27, 2018

Okamoto K, Oka M, Maesato K, et al: Peripheral arterial occlusive disease is more prevalent in patients with h e m o d i a l y s i s : c o m p a r i s o n w i t h t h e f i n d i n g s o f multidetector-row computed tomography. Am J Kidney Dis 48: 269-76, 2006

その他のリスク

透析患者の下肢切断の有病率は3.8%で、初めて減少傾向を示しています。

新田孝作,政金生人,花房規男,他:わが国の慢性透析 療法の現況(2019年12月31日現在):透析会誌 53: 579- 632, 2020

しかし、切断を受けた患者の75%は糖尿病性腎症であり、透析患者は下肢切断リスクが非常に高いです。

菊地 勘:透析患者における末梢動脈疾患の管理および 下肢血流評価に関するアンケート. 日フットケア学誌 15: 167-72, 2017
Ohmine S, Kimura Y, Saeki S, et al: Community-based survey of amputation derived from the physically disabled person's certification in Kitakyushu City, Japan. Prosthet Orthot Int 36: 196-202, 2012
Ohmine S, Kimura Y, Saeki S, et al: Community-based survey of amputation derived from the physically disabled person's certification in Kitakyushu City, Japan. Prosthet Orthot Int 36: 196-202, 2012

一度下肢切断に至ると、1年生存率が51%、5年生存率が14%と、生命予後が非常に不良です。

Aulivola B, Hile CN, Hamdan AD, et al: Major lower  extremity amputation: outcome of a modern series. Arch  Surg 139: 395-9, 2004

透析患者のPADとCLI


透析患者は高齢化が進み、高血圧や糖尿病などの危険因子を多く持つ。
PADの合併が多く、特に下肢切断のリスクが高いです。
早期発見と適切な治療が必要です。

EVTとバイパス手術の限界


EVTやバイパス手術はCLIの治療に有用だが、透析患者においては創傷治癒遅延が大きな問題であり、再狭窄も頻繁に発生します。

LDL-アフェレシス(LDL-A)と新治療法レオカーナ


LDL-Aは微小循環障害の改善や血管拡張作用などがあり、透析患者には有用であるが、装置が大きく操作が煩雑である。新治療法として2021年に登場したレオカーナは、これらの問題を解決し、更に高コレステロール血症という制限もありません。

レオカーナの特性


レオカーナはデキストラン硫酸とL-トリプトファンを固定した
セルロースビーズが充填された血液浄化器であり、体外循環血液量が大幅に低減されています。

レオカーナの基本構造

レオカーナは、デキストラン硫酸とL-トリプトファンを固定したセルロースビーズが充填されています。この構造により、体外循環血液量が大幅に低減されるという特性があります。

作用機序

静電的相互作用

デキストラン硫酸は陰性荷電を持っています。この陰性荷電が、血液中のLDLに含まれるアポ蛋白Bの陽性荷電と静電的に相互作用を起こします。この相互作用により、LDLなどのリポ蛋白が吸着されます。

疎水性相互作用

L-トリプトファンは疎水性のアミノ酸です。この疎水性が、フィブリノーゲンと疎水性相互作用を起こし、吸着されます。

LDL-アフェレシス(LDL-A)との比較

LDL-AもPADの治療に用いられますが、装置が大きく操作が煩雑であり、体外循環血液量も多いという問題があります。しかし、レオカーナはこれらの問題を解決し、さらに高コレステロール血症という制限もありません。

診療報酬

レオカーナは、潰瘍を有する、または血行再建術が不適応または不応答である閉塞性動脈硬化症(ASO)に対して使用する場合、診療報酬の算定が可能です。令和4年診療報酬点数表K000創傷処理の2の1,680点を準用し、原則として一連につき3ヶ月間に限って24回まで算定できます。回路に関しては別に算定できません。

保険適用

参照URL

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000727214.pdf

11,12ページに記載があります

禁忌

  • ACE阻害薬を服用している患者(急激な血圧低下のリスクがある)。

  • 抗凝固薬が使用禁忌である患者。

注意事項

  • 降圧薬(カルシウム拮抗薬、β遮断薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬など)を服用している患者でも血圧が低下する可能性がある。

  • 抗凝固作用、抗血小板作用を有する薬剤を併用する場合、出血助長や止血不良に注意が必要。

  • 治療日には、趾切断、抜歯、観血的なデブリードマンなどは避けることが望ましい。

抗血小板薬

一般的な作用

抗血小板薬は血液の凝固を抑制し、血栓の形成を防ぐために使用されます。これにより、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの疾患の予防と治療が可能です。

患者様の多様な状況

抗血小板薬や抗凝固剤を使用する場合、患者様は透析患者なのか、それともペースメーカーが埋め込まれているのかといった多様な状況があります。このような状況を考慮するためには、電子カルテやオンライン資格確認、電子処方箋などのデータが効率よく蓄積される仕組みが必要です。

アフェレイシス領域でAIが必要な理由


日本の医療の課題

日本の医療は、人口減少、高齢化、地域格差、医療従事者の労働環境、高騰する医療費といった多くの課題に直面しています。特に、2024年4月からは医師の働き方改革によって、時間外労働に上限規制が適用される可能性があります。

AIの活用の期待

このような状況下で、AIモデルの活用は医療従事者の負担軽減と医療の質向上に寄与すると期待されています。電子カルテやオンライン資格確認、電子処方箋、HL7など、多角的なデータ収集が進行中です。

データ活用とAIの進展

これらのデータを効率よく分析し、データが増えるほど、医療従事者の負担軽減につながる精度の高いAIモデルの構築が必要です。そのためには、医療従事者が最終判断を下せるようなシステムの開発が急募されています。
以上の点から、アフェレイシス領域においてもAIの活用が非常に重要であると言えます。

電子カルテやシステムの整備

このプロセスにおいて、電子カルテやシステム等の整備が不十分であれば、治療の効果を正確に評価することが困難となります。さらに、薬物の副作用や治療におけるリスク要因を見過ごす可能性が高まり、結果として患者に不利益をもたらすリスクが増大します。

AI応用

医療分野でのAIの活用は急速に進展しています。特に、抗凝固療法や抗血小板療法においては、患者の状態に応じて最適な薬剤やその量を決定することが非常に重要です。本記事では、出血傾向のない治療中の患者に対して、凝固剤の指摘量を予想するAIの開発の可能性について考察します。

出血傾向と凝固剤

抗凝固作用や抗血小板作用を有する薬剤の併用は、出血助長や止血不良のリスクがあります。特に、心房細動やペースメーカー埋め込み後の患者、透析患者などは、これらのリスクが高まる可能性があります。

レオカーナとその他の治療法

レオカーナでは、LDL-Cとフィブリノーゲンの吸着除去が行われ、下肢末梢血液循環の改善や下肢潰瘍の治癒が期待されています。一方で、フィブリノーゲンの吸着効果があるため、透析患者では抗凝固材の種類や持続量や透析のタイミングが重要となります。

AIの役割

一見同じような背景の患者でも、出血傾向や凝固因子のレベルは大きく変わる可能性があります。このような状況で、AIが患者のデータを解析し、出血傾向のない状態での凝固剤の最適な指摘量を予想することは、治療の質を高める大きなステップとなるでしょう。

以下のようにAIモデルはだれでも簡単に作れるようになりました

import torch
import torch.nn as nn
import torch.optim as optim
from torch.utils.data import DataLoader, TensorDataset
from sklearn.model_selection import train_test_split
import numpy as np

# 仮のデータ(NumPy配列)
X = np.random.rand(100, 8)  # 100サンプル, 8特徴量
y = np.random.rand(100, 1)  # 100サンプル, 1目的変数

# NumPy配列をPyTorchのテンソルに変換
X_tensor = torch.FloatTensor(X)
y_tensor = torch.FloatTensor(y)

# データを訓練用とテスト用に分割
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(X_tensor, y_tensor, test_size=0.2, random_state=42)

# DataLoaderの作成
train_data = TensorDataset(X_train, y_train)
train_loader = DataLoader(train_data, batch_size=32, shuffle=True)

# ネットワークの定義
class Net(nn.Module):
    def __init__(self):
        super(Net, self).__init__()
        self.fc1 = nn.Linear(8, 16)
        self.fc2 = nn.Linear(16, 1)

    def forward(self, x):
        x = torch.relu(self.fc1(x))
        x = self.fc2(x)
        return x

# モデル、損失関数、最適化手法の定義
model = Net()
criterion = nn.MSELoss()
optimizer = optim.Adam(model.parameters(), lr=0.001)

# 訓練ループ
for epoch in range(100):
    for batch_X, batch_y in train_loader:
        # 勾配をゼロに初期化
        optimizer.zero_grad()
        # 順伝播
        output = model(batch_X)
        # 損失の計算
        loss = criterion(output, batch_y)
        # 逆伝播
        loss.backward()
        # パラメータの更新
        optimizer.step()

    # エポックごとに損失を表示
    print(f"Epoch {epoch+1}, Loss: {loss.item()}")

# テストデータで評価(ここでは訓練データと同じものを使用)
test_output = model(X_test)
test_loss = criterion(test_output, y_test)
print(f"Test Loss: {test_loss.item()}")

シュミレーションデータを活用する場合であれば
google colabo を使用すればいいですし

セキュリティを考えてローカルPCでの環境構築も
システム管理室の方と話せるほどの知識は必要ですが
pythonライブラリの充実等から
以前よりは敷居が低くなっております

一方で本格的な開発はAIに対する数学的な概念や 
ガイドライン等の理解も必要なため
PCが苦手な方は
非常に学習コストがかかるデメリットもあります


また、薬事承認を取得した医療AI機器(プログラム医療機器)
は増えてきておりますし、今後も増えることが予想されます

参考URL:
https://www.dental-oral-surgery.com/ai-medical-devices/


重要なのは医療に精通する方々の知見

現場ではどのような課題があり何を予想したら課題解決につながるか? 今回紹介した抗凝固材の流量予測などはあくまでも一例ですが、では 上記のソースコードの 8つの 特徴量 は一体何に設定したらいいでしょうか? 開始前ACT? 併用の抗血小板薬? 透析患者かどうか? 心疾患の有無? 上記以外にも様々な 特徴量 が思いつくと思われます

特徴量とは?

特徴量は、機械学習モデルが「学ぶ」ためのデータの各要素です。これは、疾患の診断、治療計画、薬の投与量など、問題に対する「答え」をより正確に導き出すために使われます。

なぜ特徴量は重要か?

抗凝固材の流量を予測する際に、多くの変数が関係してきます。これらの変数を正確に把握し、それぞれがどの程度影響を与えるのかを理解することで、より精度の高い予測が可能となります。

現場での課題

  1. 個々の患者に合った抗凝固材の適切な投与量を迅速に見つけること

  2. 多様な病状や治療法との相互作用を考慮する必要性

  3. 持病や他の薬物との相互作用による副作用のリスク

有望な特徴量の例とその説明

今回紹介した流量予測のモデルに適用できる特徴量は多く、それぞれの特徴量がどのように抗凝固材の効果に影響するかを理解することが重要です。

  1. 開始前ACT(活性化凝固時間): 抗凝固状態を反映し、投与量の初期値を決定するために重要。

  2. 併用の抗血小板薬: 抗血小板薬と抗凝固材の相互作用がある場合、その影響を理解する必要がある。

  3. 透析患者かどうか: 透析患者は一般的に抗凝固材に対する感受性が高く、それを考慮に入れる必要がある。

  4. 心疾患の有無: 心疾患がある場合、抗凝固治療の危険性と利点が変わる可能性がある。

  5. 年齢: 高齢者は抗凝固材に対する感受性が高くなることが多い。

  6. 体重: 投与量はしばしば体重に基づいて調整される。

  7. 肝機能: 抗凝固薬の代謝に影響を与える可能性がある。

  8. 持病とその他の薬: 持病やその他の薬が抗凝固材の効果に与える影響を考慮する。

以上のような特徴量を網羅的に、そして個々の患者の状態に応じて選ぶことが、より精度の高い抗凝固材の流量予測と治療につながります。このようなアプローチが、医療現場での課題解決に大きく貢献するでしょう。


今回の特徴量は一部の例ですが 

本当に重要な特徴量は現場の方でないとわからない項目があると思います

医療従事者の皆様と、エンジニアの皆様との共同研究などが
これらの問題の解決につながるかもしれません

電子カルテの普及により良質なデータベースは増えることが予想されます
これらのデータを解析して 臨床現場に活かす
データサイエンティストの様な方が必要だとも思います

電子カルテとAIの活用で医療現場を効率化

電子カルテの効果

電子カルテが導入された際には、データの標準化やその蓄積が進むことで、医療従事者の皆様が効率よく情報を管理・活用できるようになります。これが現場の負担軽減とミスの削減に寄与すると考えられます。

政府の取り組み

政府は「医療DX推進本部」を設置し、2030年までにほぼ全ての医療機関で電子カルテが導入されるように計画しています。特に、2024年度には医療機関同士での電子カルテ情報の共有を開始する予定です。

全国医療情報プラットフォーム

新たに創設される「全国医療情報プラットフォーム」では、地方自治体の健診情報や医療機関の電子カルテなどの医療情報を共有できるようにする計画があります。

電子カルテの普及状況

現在、特に病床数の少ない病院や診療所では電子カルテの普及が進んでいない状況です。そのため、国が標準型電子カルテを開発・提供することも検討されています。

コスト負担の問題

医療機関のコスト負担が高く、電子カルテの導入が進まないという声もあります。そのため、標準型電子カルテの整備によって、医療機関のコスト負担が軽減されることが重要とされています。

AI活用の範囲は広い

今回はアフェレシスの中でも吸着療法における
抗凝固剤の適正投与量を予想するという非常に狭い範囲の
AIモデルの構築を提案しました
一方で 今回の内容を研究する場合でも

透析や循環器、消化器疾患等、総合的な視点が必要ですし
それぞれの領域から 特徴量を選択し予想を実施することで

これまで統計で行われていた研究が
統計とAIどちらも活用する研究が増えてくることが予想されます

例えばこれまで統計解析していた内容で機械学習を実施し

評価を実施する


それらの知見は他の領域でも活用できると思います

研究から製品化につながると多くの医療現場で効率的な
AIモデルが活用されて
これまで以上に効率的に大量のデータから適正な
治療法を選択できるようになっていくことでしょう

電子カルテのデータをAIで効率よく2次利用することが、
今後の医療現場でますます重要になってきます。
医療従事者が最終判断を下せるようなシステムの開発が急募されています。

以上のように、電子カルテとAIの活用は、多くの課題を抱える医療現場において、非常に有望な解決策と言えるでしょう。

アフェレシスとAIの繋がりについてまとめ

本記事では、アフェレシス治療とAIの繋がりについて詳しく解説しました。アフェレシスは多様な治療法を提供しており、その中でも特にLDL吸着療法が注目してAIモデルの構築を提案してみました。患者様の多様な状況、日本の医療の課題、そしてAIの活用の期待についても触れました。

政府の取り組みとしては、2030年までにほぼ全ての医療機関で電子カルテが導入されるように計画が進められています。これにより、医療データの効率的な蓄積と共有が可能になり、AIの活用範囲も広がるでしょう。

特に、AIの活用は医療従事者の負担軽減と医療の質向上に大いに寄与すると期待されています。今後は、統計とAIを組み合わせた研究が増え、多くの医療現場で効率的なAIモデルが活用されることで、大量のデータから適正な治療法を選択できるようになると考えられます。

このような技術進展にアフェレシス領域で対応するためには、アフェレシスの専門知識を持つ方々が、AIの概念を理解し、活用されることが重要だと思われます。

将来的には AIモデル と 医療従事者の役割 オンライン連携のメリットがアフェレシス領域でも加速することを 切望します
以下のような役割になると思われます

AIモデルの役割

  • 大量の医療データを迅速に処理し、患者の病状やリスク要因を分析。

  • 最適な治療方針や予後を予測するモデルを提供。

医療従事者の役割

  • 患者と直接対話し、症状や心情、生活状況などQOLに影響する要素を把握。

  • AIが提供するデータと組み合わせ、より包括的な治療計画を作成。

オンライン連携のメリット

  • 時間と場所を問わずに専門家同士、または専門家と患者が連携できる。

  • AIの解析結果をリアルタイムで共有し、即座に治療計画に反映。

最後に、電子カルテの普及とAIの進化は、高齢化、医師不足、診療時間の短縮など、多くの課題に対する有望な解決策を提供しています。これらの技術がアフェレシス領域にどのように組み合わさって、日本の医療システムを改善するのか、その進展が大いに期待されます。

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