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完成度高い完璧な作品、ダサい風潮

気のせいだ。そんなことは断じて無い。
そう否定して欲しいしかし、数字が、情報が、実例が、「完成度」という創作者のプライドを全力で否定している。求められているのはもう、“完成”ですら無いのだから。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 最近のはなし: 』

より雑事に捕らわれることなく作業に集中するためにも、あらゆる生活環境のスマートホーム化を徹底している。ワーク フロム ホーム用に開設した個人用スタジオの最適化は既に、純利益でソフトバンクGに抜かれて事業転換を目しているであろうトヨタが社運を賭している未来都市計画「Woven City」を、ライバル視している。

告白してしまえばしかし、
わたしは未だ、クリアできない問題を抱えている。
「クリーニングを出しに行くタイミング」、だ。

前回に出していた分と、交換したいのだ。
だが、受け取ってしまうとその後は荷物と共に行動せねばならない。では一日の終わりに受け取ることにすると、それまでの時間、クリーニングに出す分の洗濯物を持ち歩くことになってしまう。

答えをみつけねば、未来都市に勝てないのだ。

徒歩数分の位置関係なのだから、2回出向けば良い。
そもそも宅配や、ホテルのルームサービスを使えば済む。
だがそれでは昭和以来の変わらぬ生活でありまたは、ソリューションにすぎない。目的は進化であり、未来への最適化だ。
「クリーニングの受け取りと提出の同時交換」という最適化を実現できたならそれは、タイヤと傘の再発明に匹敵する未来への解なのだ。

いや、待て。

この難題は解決できないために、わたしの気持ちを離さない。
“わたし”という存在は常に、世界中どこのクリーニング店をも目撃する度にどんな仕事にも優先して、このことを考えるように機能している。しかもクリーニングは都度、何らかの形で毎週、収め、受け取れている。

この再現性のない日常にこそ、
目新しくもないクリーニング店舗があらゆる創作思考に優先される、そんなギミックが内包されているのではないだろうか。

再現性のない行動に、巨大な価値を感じている。
今日こそ、クリーニングを出す。そして受け取る。

さて、はじめよう。

『 完成度が高い、ダサさ 』

「事業モデルの価値は、再現性で決まる。」そんな、昔話があった。

再現できてこそ、設計と計画が機能する、というファンタジーだ。
だが、客は、人は、人間は、それほど間抜けではない。
時代は、「再現性の先」にある。

ギリギリまで磨き上げた製品を発売し、やがて否定し、また新製品を発売する。そんな消費経済は過ぎ去り現在において製品は、発売後にユーザのフィードバックを受けながらファームウェアをアップデートされるのが当然だ。

そこから生まれたのが、「再現性」という保険である。

再現性とは、分業や技術向上、連続起業にまで、便利この上ない安心材料だ。しかし人々は、商品や完成形を求めるまでの課程に課金する、体験型経済モデル「プロセス エコノミー」に馴染みはじめた。

そこではむしろ、
再現可能な完成度を否定する、“不完全信仰”が芽生えている。

古くはウォルト ディズニーがディズニーランド建設工事の大幅な遅れと資金難から発した苦肉の傑作コピー、「永遠に完成しない、それが夢の国だ。ディズニーランドは、進化し続ける。」に懐かしい。


『 再現性がない、という価値 』

不完全なままに完成を求めるプロセス エコノミーが、新たな価値を創出している。「再現性が無い」という価値だ。

人は、オリジナリティーを唱えながら、同調圧力に負ける生き物だ。
そんななか、社会に後ろ指を指されることも厭わず、独自の価値観を尊重し、時流を無視して突き進むエネルギーが存在する。

アーティストたち、だ。

彼らの原動力はそれぞれながら、現代、彼らの独自の価値観は輝きを増すばかり。気付けば「再現性が無い」という彼らの目的までもが、“価値化”されはじめているのだ。

ワーク フロム ホームの定着から必然、カメラの前に立つことも自らの声を発信することにも抵抗がなくなった人々はいよいよ、「世界総アーティスト化」にむけて、前傾姿勢の重心移動を開始している。

みなさん自身も、感じていることだろう。「自ら発信」しなければならない状況を。そんな時間、世界が停止した社会の中で嬉々として創作活動に没頭する彼らアーティストこそ、総アーティストの先人、
表現のプロフェッショナルである。

無から作品という価値を創出するアーティストたちこそが、
既存の社会が求めた「完成度」とは異なる、現代の価値を創造するファクトリーなのだ。世界をリードする企業たちは、気付いている。

アーティストが、世界に求められている。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:YouTubeが新たなゴールドラッシュを引き起こすか:新サービス「YouTubeショート」への参加クリエイターに1億ドル(110億円)の寄付を表明

YouTubeは、すでに爆発的な成長を遂げている新サービス「YouTubeショート」について、クリエイターたちに1億ドルの寄付を発表した。同社は「YouTube Shorts Fund」を創設、2021年秋の始動を目している。詳細は、今後の発表となる。現在まだ収益化されていない“YouTubeショート”は、広告のテストを含めて今年中に、収益化実験を開始する。TikTokに代表されるこの“ショート動画分野”は昨年秋にインドで開始され、本年3月には米国で開始された。グローバル パートナーシップ イネーブルメント ディレクターであるエイミー シンガー氏が語る。「わたしたちはクリエイターの収益化、報酬を検討してきました。最も多くのエンゲージメントと視聴回数を獲得した数千人のクリエイターに直接連絡を取りながら、複数のクリエイターに毎月、報酬を支払う意向です」同社の親会社Google/AlphabetのCEOのSundar Pichai氏は、第1四半期の決算説明会に登壇。YouTubeショートの1日の再生回数は、2020年末の35億回から、(米国に上陸した後の)3月には65億回になったと発表。「YouTubeはクリエイター、アーティスト、メディア企業に対して過去3年間で300億ドル(3兆300億円)を支払い、創作活動の手助けをしてきました。“YouTube Shorts Fund”は、今後設定される長期的な収益化モデルへの第一歩に過ぎません」YouTubeショートには、新しい機能が次々と追加されている。 - MAY 11, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

YouTubeが60秒以内の“縦型動画”用にβ版を提供している、新たなチャネルだ。このニュースの裏には、ストリーミング企業とのせめぎ合いが存在している。本ニュースの内容は、YouTubeが大きな方向転換を図ったことを示す、最初のアクションだ。

サブスクリプションで収益を得て、会員獲得と繋ぎ止めのためにオリジナルコンテンツの囲い込みを強化する他社ストリーマー。一方、Google傘下のYouTubeは長編映画配信において失敗し、今年以内に、オリジナル長編作品からの撤退を発表している。そこでYouTubeは、“個人クリエイター用プラットフォーマー”として、本来の事業モデルに帰結した格好だ。

時代は、クリエイターが企業を頼らずに直接プラットフォームを駆使してマネタイズする「クリエイターエコノミー」の時代。先鋒だったYouTubeが、加速する。

温故知新ならぬ新旧両方を成立させるべく今日も、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記