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【創作リスク】ゼロにできないリスクに責任を負うアーティスト術

非日常を扱う以上にどんなクリエイティヴにも、小さくないリスクが潜む。決して避けられないトラブルに責任を負うことは、アーティストの責務である。このトピックでは、「リスク管理と対処方法」を、知ることができる。ポジティヴで楽観主義で幸せで挫折知らずな危機的アーティストの、ために書く。

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アーティスト情報局:太一監督
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 危険回避方法など、無い。 』

回避できるなら危機ではない。

回避できない危機に直面したとき、アーティストの危機管理能力が問われる。“責任者”任せの法的な責任ばかりが問題ではない、相互に精神的なダメージもまた見過ごせない危機である。

それが、想像を遥かに超える事態、人生をも左右する問題だったなら貴方は対処できるだろうか。危険は、回避などできないのだ。

そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際ニュース:新作映画の撮影中、俳優のアレック ボールドウィンが発射した小道具の拳銃による事故で、撮影監督死亡。監督が重体

捜査は進行中で、告訴はされていない。

サンタフェ郡保安官事務所によると、映画「ラスト」の撮影現場でアレック ボールドウィンが小道具の銃を放った結果、撮影監督が死亡、監督が負傷。

撮影監督のハリナ ハッチンス(42歳)は、西部劇映画のプロデューサー兼主演のボールドウィンによって小道具の銃が「発射」されて負傷。ハッチンスはヘリコプターでニューメキシコ大学病院に搬送されていたが、死亡が確認された。

映画の広報担当は声明で次のように述べている。「今日の悲劇には、キャストとスタッフ全員が大きなショックを受けており、ハリナさんのご家族や愛する方々に深い哀悼の意を表しています。私たちは、不確定な期間、映画の制作を中止し、サンタフェ警察の捜査に全面的に協力しています。私たちは、この恐ろしい出来事を処理するために、この映画に関係するすべての人にカウンセリングサービスを提供する予定です」

さらに、2人目の犠牲者は、この映画の監督であるジョエル ソウザ(48)。救急車で運ばれたが、危篤状態にある。

全米監督協会のレスリー・リンカ・グラッター会長は、ハッチンス氏の死とソウザ氏の負傷を聞いて、DGAは「信じられないほどの悲しみ」を感じていると声明を発表しました。「さらなる詳細と完全な調査を待ちたいと思います。ハリナさんのご家族、ジョエルさん、そして関係者の皆様に心よりお悔やみ申し上げます」と述べている。

「捜査官によると、撮影されていたシーンでは小道具の銃が使用され、それにもかかわらずに発射されたようです」と保安官事務所が声明。を出しています。「刑事は、どのようにして、どのような種類の弾丸が発射されたかを調査しています。事故は空砲を使った小道具の誤射だったとされる。「当面の間、制作を中止します。出演者とスタッフの安全を最優先に考えています」との声明を発表しました。

ハリウッドの撮影現場での銃器事故は極めて稀だが、複数の死亡事故も発生している。1993年には有名な格闘技スター、ブルース リーの息子であるブランドン リーが、同様の事故で射殺された。

ブランドン ブルース リーの公式ツイッターが投稿した。「ご遺族、関わったすべての方々に心よりお悔やみ申し上げます。映画の撮影現場で誰もが殺されることがあってはならない。」 - OCTOBER 21, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 ニュースのよみかた: 』

ハリウッド映画の撮影現場で撮影監督が不慮の事故死。監督が危篤。撃った本人が主演でプロデューサーの映画だった、という記事。

当然に“不慮の事故”でありしかし、その現実は変わらない。映画が継続される見込みはなくそれ以前に、プロデューサーであり撃った本人の精神的なダメージは計り知れないだろう。都度に想う。

起こらない事故は無い。

『 非日常というクリエイティヴのリスク 』

無理をするのだから、事故は起こる。
ここ「アーティスト情報局」はアーティストびいきの具体ソリューションを提供する場であるので、無理をしない、危機回避の安全生活などという綺麗事は無視する。映画の撮影現場は言うに及ばず、アーティストは日常を越えて無理をするのだから。

交通法規を破る、道徳に反する、社会ルールから逸脱することも選択肢の一つだと想いこむ。電車を停める、首都高に意図的な交通渋滞を発生させる、無許可道路封鎖を禁止しに来た警察車両の侵入を阻止する、申請の10倍のガソリンを爆発させて消防ヘリを出動させる、全身血塗れな扮装で秋葉原無許可路上撮影、制作用揮発性溶剤大量保管、撮影用偽造紙幣を数百枚紛失する、撮影済みの高精度な遺体ダミー造形物を一般ゴミに出す、突き出したカメラレンズの埃を取り除くためだけに民間地にヘリで緊急着陸し、高精細写真からシリコン製人工皮膚を作成して認証突破をテストするなんてことは良くないがすべてはわたしが遭遇した人生の一場面。事実だ。

その瞬間のアーティストはそれを、悪事だとは認識していない。事故は起きる。

『 リスク管理 』

リスクの管理習慣が重要だ。
トラブルや事故が起こる前提で生きることを推奨している。楽観の真逆を生きると言うことだ。自己啓発には逆行するがアーティストなのだから、幸福な日常を最優先する理由はない。

リスクを管理するためには、2次被害を最小限に抑え込む準備をするわけだ。社会信用がゼロになることを、シミュレーションしながら生きているだろうか。親族に迷惑をかけ、交友関係一切を失い、世間から指さされながら生きる準備はできているだろうか。人生の資産すべてを失った上で健康を失い家族に捨てられ、継続的な創作活動が不可能になり絶望する自分と向き合っているだろうか。

そのすべてに“想像ではない実証”を繰り返しながら覚悟することが、リスク管理である。トラブルや事故はファンタジーではなく、日常の出来事。最低限度の人間的生活をも失う覚悟で挑む創作活動が、アーティストの生き方だ。社会人として正しい常識的な人生を護るならクリエイターとして生き、アーティストを名乗らない方がいい。わたしは、アーティストだ。

『 対処方法 』

起きた事故への対処方法は、シンプルだ。
すべてを自身の責任として引き受け、リスクを負うことにつきる。保険や弁護士、カウンセラーの精鋭に協力頂くことは技術であり、覚悟とは関係がない。精神的な事故を含めてアーティストの対処とは、受け止め、耐え抜くことだ。傷つかない方法を選ぼうなんて、おこがましい。

『 編集後記:』

銀座の夜、ギャラリーで働く精鋭たちを癒やすのは、いつも眩いコンビニだ。今夜は運良く、ベルギーワッフルの店舗が開いていた。不慣れな店員の丁寧すぎるテイクアウェイのレジは、ワッフル8個とカフェラテ5つなのに紙袋4つ。まるで15人分を運ぶかのようで。朝から頑張る空腹のクルーたちはしかし、そんな質素にも喜んでくれる。

早すぎる冷たい雨は音もなく、静かな街は今夜も穏やかで美しい。

人々の心を映した断片に近未来を投影しながら、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記