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10年後に残る仕事、その現在

世界はリセットされた。
いま選ばなければ、惰性の先にあるのは、時代に埋もれる未来。
自己啓発に勇気づけられている場合じゃ、無い。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 最近のはなし: 』

出社することも無くなり、料理が上手くなり、会議が増えて、会食が無くなり、仕事が加速し、移動が消滅し、未来が見えるようになった。
学生時代に夢見た時を、生きている実感がある。

ホテル暮らしに自宅は無いが、スタジオの編集機と配信環境に囲まれて、各国仲間の映画人たちとクラウドで共同作業をしている順調な日々。

そんな毎日に、ふと想う。
我々は“作品”を創っている。
作品はやがて、完成する。

作品は、どこに存在しているのか。

さて、はじめよう。

『 クリエイター エコノミー 』

世界、総クリエイターの時代が来た。

歌を聴く文化はやがて、歌いたい文化「カラオケ」を生んだ。情報を読む文化はやがて、情報を発信したい文化「SNS」を生んだ。作品を観賞する文化がついに、作品を発表したい文化「世界総クリエイター」を生んだわけだ。

ネット上のプラットフォームに自作をアップロード、それをSNSで拡散していた時代は、遊びであった。やがてそこに“広告業界”が食指を伸ばしたことで、反発が生まれた。広告が忖度してコミュニティと連携したことで、オンラインネイティヴのクリエイターたちを生んだ。クリエイターたちは企業と組み、“作品のメディア化”たる「YouTuber」を実現した。クリエイターの活躍は拡大し、プラットフォームが進化。クリエイター自らが“収益化”を実現するに至る。

これが、「クリエイター エコノミー」の基本構造である。
ここが現代の最上階、ペントハウスだ。
日々規模は拡大し、より最適化が進んでいる。

そんな、華やかなりしその頭上で、
風雨にさらされながら成長している新たな脈動に気にしている者は、僅か。
それは創作界ではなく、テクノロジーと経済界からやってきた。

『 NFTとは 』

「NFT」だ。
簡単に爆発的な利益を生みそうで、誰でも始められて、最新臭あるムーヴメント、というイメージだろう。全部違う。詳しくはググると良い、いくらでも立派な解説情報がある。

■ 余談:
ここ「アーティスト業界情報局」は自己啓発や、親切なレクチャー記事では無い。人生を賭して創作活動を続けている、人生を作品のための道具だと想いこんでいる非常識な同志に、ホンモノだけを端的に届ける場所だ。そのため、配慮の無い物言いや、説明不足な結論の押しつけが散見する。文脈を読み解き、不足情報程度は自分で調べる民度は推奨したい。日常的には情報を共有する相手がいない貴方用に高度な“現結果”のみを、提供していきたいと想っている。立派な学びなど、何も無い。謹んで。

アーティストに語るべき「NFT」の本質は、そこでは無い。

我々は、作品を生み出している。
作品はマーケティングを経て拡散し、権利者の元へ返る。
時には売買されながら所有権は移ろい、やがて分割され、消滅する。

異論はあれど、法が守ろうと道徳が赦さずとも、それが現実だ。

ここでわたしは、私的な想いにかられる。
クラウドで作業された完成作品は、どこにあるのか。
コピーされたマスターデータは、作品では無いのか。

「NFT」は、太古の昔より存在していたであろう“創作活動”に、小さな解をを持ち込んだと言えるのだ。NFTとは、暗号資産と同じく改変できない「記号」に「作品」をセットにした、“デジタル資産”である。

例えるなら、シリアルナンバーと、商品、だ。
ただし、“シリアルナンバー付きの商品”ではない。2つはセットにされているだけで、永久に別モノなのだ。

デジタル化された作品は常に、コピーを生成できる。
しかし、保証されている“マスター”を、指定できる。
まったく同じデータであっても、所有権を示すマスター保証が可能だと言うこと。

ところで、お気づきだろうか。

『 NFT、凶器か武器か 』

作品は売買されながらも、アーティストの手元から失われることは無い。
売買されているのは所有権であるが、アーティストは現物や原盤権を失うわけでは無い。設定は、創作主のアーティスト本人に委ねられるのだ。

つまり、「作品=価値」だったのは過去のこと。
NFTを介すれば、「所有権=価値」であり、
「作品」は永久に、「価値を生み続ける資産」となる。

まるで作品と魂が、別々に評価されいるようではないか。

購入者たちが今まで通り、独占的な所有欲を満たすならNFTは、
作品を殺しアーティスト葬る凶器になる。

しかし、

作品をアーティストの手元に残しながらその“価値”だけを売買し始めたならそれは、人類が生み出した最強の武器となる。

人類はいよいよ、「文化を共有する」意味を知る。

10年後に残る仕事とは、実体に依存しない「価値」を生み出す仕事。
すなわち、創作活動である。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:クリエイターとコンテンツ会社のための「NFT」、5つのヒント


世界的な法律事務所であるCovington & Burling LLPのニューヨーク・オフィスよりエイドリアン・ペリー氏と、ワシントンD.C.オフィスの金融サービス規制プラクティスより、ジェニー コンコ氏が解説する。NFT(ノンファンジブル・トークン)とは、ブロックチェーンを介して追跡、評価されるデジタル資産のこと。NFTがコンテンツと結びつくことで、所有者や制作者、配信者に有益な収益機会がもたらされる。エンターテインメントの世界におけるNFTの適応例を紹介する。①:「トークンとそれに関連するコンテンツの間には本質的な関係はない」NFTとは、デジタル台帳に登録される“トークン”と“付属するコンテンツ”の2つからなる。NFTというひとつの魔法コンテンツではない。②:「NFTに付随するコンテンツが偽造品や侵害品で無いという証明にはならない」コンテンツとは別に発行されるトークンゆえに、発行者はコンテンツの権利を保障する必要がある。③:「 NFTプラットフォームのパートナーは永遠ではないかもしれないがバイヤーはNFTに永続性を期待する」デジタルであろうコンテンツの、保管方法だ。権利が永続的に証明されるNFTにとっての核となるコンテンツを、誰が、どのように、永続的に管理保守運用できるのかが未知数であり、保証段階の懸念になる。④:「NFTを発行する権利は、NFTに関連するコンテンツの権利と結びついている可能性が高い」誰もが発行できるNFTに対して、付随させるコンテンツの権利が保障されている必要がある。そこで、コンテンツの権利一切を保証するために、一般的なコンテンツ権利確認のプロセスが必須となる。⑤:「 NFTはコンテンツ産業にとって馴染みのないビジネス規制を考慮する必要がある」NFTは有価証券なのか、それとも商品なのか。このシンプルな問いに対しても答えは、「場合による」となる。複雑な状況判断を踏まえた運用が重要だ。NFTがコンテンツ産業の永続的な収益源となるかどうかは、市場参加者が課題の解決に投資するかどうか、にかかっていると言える。
 - MAY 04, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

がんばって、理解した方がいい。
NFTを発行して既に中くらいの収益を上げている日本人アーティストたちも登場しているがその実、「NFT自体とその管理運用課題」を理解している者は少ない。経理庶務に即答できた日本人には独りも出逢ったことがなく、法務に至ってはまさに“ざる”。つまり、いまが好機。

がんばって、理解してみよう。
実のところそれほど難しいことではなくむしろ、中央集権型のコンテンツ市場に風穴をあける「クリエイター エコノミー」でありながら、作品のみならず、アーティストという“本人の価値”を資産化することが可能な、エンパワーメントである。
「クラウドファンディングで製作費を集めて――」などという見当違いな妄言を無視して、学んだ方が良い。そして、「正しい専門家」と組んだ方が良い。NFTの発行は、簡単だしかし、もしも俄な自力で離陸しようものなら、着地は無い。自力運用は、命取り。必ず、“正しい専門家”と組むべきだ。

NFTが、貴方の創作人生を変える。

デジタル台帳には決して記されない活動を積み上げながら、実態としての映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

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