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映画監督、という生物たち

映画監督、という職業があるらしい。
特殊生態なので、あまり見かけないかも知れない。その“職業の定義”は曖昧なので、「映画監督という生物」、その実態を俯瞰してみる。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 映画“準備”監督、という正体 』

一年の半分ものあいだ各国の仲間と陸海空を移動し続けていたかと想えば、残りの半分はスタジオにひきこもり、親族から安否確認を受ける始末。文字を書きながら独りで泣き、無精ひげで4日間風呂にも入らず、150人を率いて眠らず、年に3週間はタキシードを着る生活だ。種によって違いは、ある。

監督たちはたしかに、映画を創っている。だが、生活を正しく描写すれば「映画“準備”監督」であり、時期によっては、“不眠耐久考え事中年”、でしかない。業界にはいろいろな種が生息しているが、この生態は、変わらない。

1本の映画は、120分前後。だが建造には数年を要することも珍しくない。遅い、と怒らないで欲しい、本土と離島を結ぶ大橋だって、最初の一台を通す手間はかかる。映画は独りの観客を迎えるために、関係者100人の数年を消費する。

『 多作監督、寡作監督 』

毎年新作打ち出す天才監督に話を聞けば、取材には出向かない、のだと言う。複数のスタッフを走らせてプロデューサーまとめさせ、マーケターの検証を経た資料を、読む、のだと。「映画は、イマジネーションで創る」と。

賛否はともかく、データを命綱に自身の想いを委ねられる覚悟には、目をみはる。また、任せられるスタッフを編成し、“仕組み化”できている事実は素晴らしい。そのうち、プログラマーを動員して自動化していくのだろう。

映画業界を支え、ブランド価値を創出しているのは、多作な彼らである。
わたしは馬鹿にしているが、成果を上げている事実は、紛いない。

一方で、なかなか作品を発表しない「寡作監督」が存在する。

頑固だったり、革命家だったり、無能だったりするので一概にそれがどんな生物なのかを語ることはできないのだが、副業監督でない限り、映画を信奉する現代の殉教者である。どうか、愛してあげて欲しい。

『 ライバル、という共存関係 』

メジャーな国際映画祭では、審査員に、監督と俳優が選任されることが多い。かつて審査委員長を務められた大物女優とチャットしていたところ、「審査員の彼らと過ごす“笑顔の毎日”は、地獄だった」と語っていた。同席したことは無いが、想像に難しくない。

ちなみに監督同士は、仲が良くない。女優同士はもっと、仲が良くない。

露骨に牽制し合うのも、珍しくはない。日本人の間ではその様子が見えにくいのだが、似たようなものだ。ただし、仲良しサークルよりは数倍、意義があると想っている。互いがいてこその、ライバルだ。

『 著名な国際映画監督には、特徴がある 』

海外の監督たちのアクションは、“見切り発車”が基本だ。まだPlot(あらすじ)しか存在しないのにキャスティング ディレクターを召喚したり、予算なんて4%分しか集めていないのに、スタッフへの支払いを契約したりする。

しかしまた、帳尻を合わせる技術にも長けている。1億円の借金くらいは瞬発力で軽々と負い、プール付きの一軒家からモーテル暮らしに墜ちることも厭わない。国際映画監督たちは平然と、リスクを獲る。

それが、“チャンスを手にするマナー”だと、知っているからだ。
彼らは人生を賭して、目の前の企画に没入する。日本人も同じだ、という声が聞こえる気がするが、断じて違う。

彼らは巨額の借金をしたり企画開発の全経費を保証するために、徹底的にビジネスを学んでいる。画家やオーナー料理人も同じだ。顧問弁護士と連携し、法務にも精通している。

『 自己演出 』

アーティストとしての自身と、裕福な自身のブランドを別けて、意図的な演出を行っているのも、国際映画監督の特徴といえる。日本の映画監督はとても正直なので、自身を飾らない。それが国際メディアには、貧相に映る弱さになっている。

具体をあげると切りが無いので、あえて過去のアーティストを例にしよう。
誰もが知る画家の巨匠、「パブロ・ルイス・ピカソ」など。

この写真は、“演出”だ。
自身のブランドに相応しい、ストイックなアーティストを、演じている。
実際にはすでに成功している大富豪であり、最上級の装いで豪邸暮らしだ。

国際映画監督たちはこの、“自己演出”を、駆使している。

『 映画が変わり、監督も変わる  』

正確な順序は、逆かもしれない。映画監督の世代交代は加速しており驚くべきはそれが、“年功序列”では無い、という事実。映画監督の世代交代は、年齢に関係なく、「他業種からの参入」によって引き起こされている。

映画館に限らない視聴環境の急速な発展は、加速を続ける。その状況に伴い、それぞれのプラットフォームに特化した“映画監督”が誕生し続けている。増え続け、減らないその結果、映画の多様性は急加速し続けている。

しかし、映画誕生から126年間の継承は軽視され、テクノロジー依存な傾向は強まる一方だ。それが“進化”であり続けることを願ってわたしは、戦いに参戦する。各国の仲間たちと共に。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:Amazon、Prime VideoとMusicのコンテンツ獲得に前年比41%増加の1兆2000億円投入

Amazonは木曜日の年次報告書で、コンテンツ総支出が、前年の8,480億円に41%増加した1兆2000億円に達していることを明らかにした。コンテンツ総支出は、レンタルとデジタルサブスクリプション用のコンテンツと、Amazon Primeで会員に提供される作品のライセンス、そして、オリジナル作品の製作コストが含まれている。Amazonは映画と音楽の支出内訳を発表しなかったがそれが、ライバルのNETFLIXや競合他社への牽制なのは明らか。NETFLIXのコンテンツ総支出額はさらに800億円上回っているが、創設者のジェフ ベゾスは、2億人以上のPrime会員(有料会員)がいることを公表している。同社はパンデミック後さらに、純利益をほぼ2倍に引き上げている。 - APRIL 15, 2021 VARIETY -

『 編集後記:』

世界の映画の興行国Top3は、アメリカ、中国、日本の順位だ。
各国映画館の“スクリーン数”を観てみよう。第一位「中国:90,000screen」、第二位「アメリカ:41,000screen」、第三位「日本:3,500screen」と逆転劇を繰り広げつつ、

などという数字が消し飛ぶのが、“モバイルスクリーン”とも形容できる、サブスクリプション型配信興行。もはや“映画館”は、映画鑑賞の主では無い。更に、ストリーミングのプラットフォームは、倍々の成長を続けている。

そこには常に、“新作映画”が必要になる。その作品を全て、映画監督が提供していることを考えると、この状況が監督にとってどれだけ追い風であるかが判る。一方で、経験豊富な映画監督は激減している。

新たな環境は、新たな映画監督を生む。映画は、変わり続ける。

新作のために126年間の歴史に学ぶ、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記