見出し画像

人のご縁とは【随想】

結婚して都会で暮らす娘がいるが、彼女が帰省した時のことだ。
高校時代からの親友Aさんと会食後に家まで遊びに行き、積もる話に時間が経ちバスもないので車で迎えに来て欲しいという。

彼女の家は、有名な某公園の傍だ。LINEでやり取りしつつ、どうにか近くのバス停前で合流できた。Aさんも、わざわざ娘をバス停まで見送りに出てきてくれていて、お礼を言って別れた。


このAさんはとても感じの良い娘さんで、以前、娘と遊びに出た時に娘のスマートフォンの電池が切れAさんが代わりに私にLINEで連絡をとってくれたことがあり、私も連絡先を知っていた。娘が都会で結婚式を挙げた時もわざわざ地元から出て来て下さると聞いて、嬉しくて私が直接LINEでお礼を送ったこともあった。普段娘の友人に対してほとんど関与しない私であるが(娘も嫌でしょうし・・)、Aさんはそれを許してくれるような寛容さと気立ての良さを持ち合わせた娘さんだと、常々思っていた。


さて、このAさん。娘が言うには、御祖父様が亡くなられて現在御祖父様の家に住んでいるという。
アレっ?その辺りに確か昔仕事でお世話になった方のご自宅がある。必要あって一度お訪ねしたことがあるけど、まさか・・と思いきや、娘の証言からどうも御祖父様がその方ではないかと推測できたので、Aさんに尋ねてもらったところ果たして正解であった。苗字が異なるので今まで気付いていなかったが、昔お世話になった方のお孫さんだったのだ。

狭い町とはいえ、車で20分ほど離れた地域で生活エリアは全く異なる。
その偶然には大変驚いた。

じつは娘の親友にもう一人、昔お世話になった方のお孫さんがいる。娘の中学時代からの親友で、結婚式にも出席して下さったYさんだ。その御祖母様は昔、趣味で社会人の合唱団で歌を唄っていた時ご一緒した方で、パート練習と称してご自宅に伺ったこともある。デュフィの絵が飾られた上品な居間で練習をしたり、クリスマスには手作りのお菓子をふるまって下さるなど可愛がっていただいた。今でもお手本にしたいような上品なマダムだった。その方の娘さんが結婚して私と同じ町内に住んでおられて、その娘さんがYさんで、中学校で同じクラスになったことを切っ掛けに私の娘と友達になったのである。御祖母様もお元気で、娘の運動会で再会することができた。


長年地方都市に住んでいるゆえこの様なことが起こるのかとも思うが、年を重ねた現在、この様なご縁は代えがたいものだと思うようになった。まず、生活圏は違っても行き来できる地域に住んでいること。私が娘を生んだこと。その娘が、縁ある方のお孫さんと同級生になること。そのお孫さんも女子で、娘と親しくなること。それらを考えると、単なる偶然の積み重ねとも思えないのである。

「袖振り合うのも多生の縁」との言葉もある。ご縁のある人とは、私の代で一度縁が切れても子世代、孫世代でまたつながることもあるだろう。その時に「あの時あの方にお世話になった」「あの方は素敵な人だった」と言われるような生き方をしたいと心から思った。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?