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福田恆存を読む―はじめに―

 これからしばらくの間、『福田恆存全集』(全八巻・文藝春秋社)を熟読していこうと思う。福田恆存さんは私に落ち着いて生きることを教えて下さった人生の師と呼べるような人物である。

私が福田さんを初めて読んだのは、大学の時であった。『保守とは何か』(福田恆存著・浜崎洋介編/文藝春秋社)を手にして読んだのが始まりである。

その中のどの文章も印象深く心に訴えかけてきたのだが、特に『一匹と九十九匹と』や『近代の宿命』、『絶対者の役割』といった文章は熱心に繰り返し読み返したものであった。

先ほども書いたが、福田さんが私に教えてくれたことを一言で述べるなら、「落ち着いて生きること」であった。福田さんは、当時なぜだか生き急いでいた私を、力強く戒めてくれたような存在である。

福田さんは実際の生き方の上だけではなく、知的な態度においても私を戒めた。進歩的文化人批判論などで繰り返される、何でも分かったような顔をして話すな、という氏の説教は、そのまま私自身に言っているようにすら感じた。

これから改めて『福田恆存全集』を熟読していきたい。次回はまず『理解といふこと』(福田恆存全集第二巻)を読んでいきたいと思う。

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