告白

「日本人ってさ、あんまり『好きだ』とか『愛している』とか言わないって言われてるけど、あれってなんでなんだろうね」


「恥ずかしいからじゃね?」


「私もそう思うんだけど、でも本当にそれだけなのかな?」


僕が考えもしないような質問を彼女は時々僕に投げかけてくる。昔っからそうだ。僕はその度に新しい世界を垣間見ている気がしている。意識して見ないと見えないこともこの世の中にはたくさんあるのかもしれない。


「そうだなぁお前さ、英語の授業覚えてる?中学校の時の。先生がさ、『How are you?』って言ったらさ、みんなで『Fine. Thank you. And you?』って返すヤツ」


「覚えてるよ」


「あれって、授業始まる時に絶対やらされてたじゃん?んでさ、俺途中からもう『はうあーゆー』って聞こえたら『ふぁいんせんきゅーえんどゆー』って条件反射で言ってたんだよね。意味なんて考えずに。つまりさ、俺にとっちゃあのやりとりは何の意味もないただの”音”になってしまったんだ。慣れは意味を失わせてしまうのかもしれないなって俺は思う。」


彼女の腑に落ちた笑顔は、僕らが同じ世界を垣間見ていることを告げていた。


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