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#43 たわいのない

「褒められるの苦手だわ」


急にそんなことを言い出した彼女の顔は何かを思い出しているようだった。


「なんか、嫌な思い出でもあるの?」


「嫌な思い出というか、なんだか自分のことを言われている感じがしないんだよね。それにさ、その基準を壊しちゃいけない気がしてくるんだ。私は、そういう人間として振舞っていかなきゃいけない気がしてくる。」


「『わーすごい!素晴らしい考えをお持ちなんですね!!そんなに物事深く考えたことないから、尊敬します!!』みたいな返し嫌いそうだね。」


「それ嫌い」と言いながら、彼女はクスクスと笑っている。


「俺はねー、いい話で始まる前置きが嫌いかなー。例えばさ、告白したとするでしょ?で、、」

「あーあれでしょ、あのー『あなたっていい人だし、一緒にいて楽しいけど、』のヤツでしょ?」


「それそれ。いい人で一緒にいて楽しいなら、付き合えよ!ってならん?あの枕詞、廃止にしてくれないかな、日本全国で。」


「なんか嫌な思い出でもありそうな感じだね」とは言うものの、彼女はそれ以上聞いてこなかった。


「じゃあ、悪い話で始まる前置きは、どう?」


「例えば?」


「デートにいつも遅刻してくるし、連絡もろくにしてこないけど、、」


「けど?」


「どういうつもり?」


「いやいや、違う違う。そうじゃない。使い方間違えてる。盛大に間違えてる。」


焦った僕の顔を見ながら、彼女は楽しそうだった。




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