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知らないと損する!?【フリーランス新法】弁護士さん直伝!セミナーまとめ

2024年11月1日より施行される「フリーランス新法」、その正式名称をご存じですか?

それがこちら↓

特定受託事業者に係る取引の適正化などに関する法律

「フリーランス」の「フ」の字もありませんが、通称「フリーランス新法」と呼ばれています。

11月1日に施行されるこの法律は、以下のふたつを目的にしています。

①フリーランスと企業など発注事業者との取引の適正化
②フリーランスの就業環境の整備

発注事業者からフリーランスへの「業務委託」を対象とした法律で、法律を守るべきは発注者側です。

しかし…

「フリーランスの私たちが新法施行によって気をつけるべきことは?」
「この法律の重要なポイントは何??」

法律の原文を読んでも、ピンとくる方はそれほど多くはないでしょう。もちろん私も皆さんと同じです。

しかし、フリーランスとして働くのであれば、法律を熟知しておくべきですよね?

「誰か~!教えてくださーい!」

そんな折、私の心の叫びを聞いていたかのように、フリーランスの気持ちが分かる神弁護士さんがセミナーを開催してくれました。

それが、こちら。

講師は「服が作れる弁護士」中内康裕さん。文化服飾学院の非常勤講師も務めるファッションに強い弁護士さんです。

中内弁護士曰く「フリーランス新法」は、もともと「発注側が知っておくべき法律」とのこと。しかし「受注者側も知っておくことで身を守れる」そうです。

セミナーでは、重要なポイントに絞って教えていただけました。

このnoteでは、私が学んだ内容のシェアをいたしますので、フリーランスの皆さんは、ぜひ参考にしてください。

「フリーランス新法」基本的なことは3つだけ

「重要なポイントとして、3つだけ覚えておきましょう」と中内さん。それが以下の3つです。

・取引条件を事前に明示する
・60日以内に報酬を支払う
・7つの禁止行為をしない

この3つについては、あとで詳しく解説します。さて、その前に前提についておさらいです。

「フリーランス新法」の対象者は?

保護される人と守る義務がある人について整理すると…

保護される人=特定受託事業者
・いわゆるフリーランス
・一人社長

守る義務がある人
・企業
・いわゆるフリーランス

フリーランスがほかのフリーランスに発注する場合は、フリーランスでも法を守るべき側になります。

つぎに基本的な3つのことについて、順に見ていきましょう。

1.取引条件を事前に明示する

取引条件の明示義務(第3条)は、書面かメールで取引内容をフリーランスに明示することと定めています。メール以外では、SMS・SNSのメッセージ・チャットツール・ファックス・CD-R・USBメモリによる提供でも大丈夫です。

明示するのは、必ずしも書面ではなくてもよく、以下のものでもOKとのこと。

・LINE
・メール
・PDF
・スクリーンショット

フリーランス側として注意すべきポイントは、メッセージを削除されても大丈夫なように、スクリーンショットを取っておくこととのこと。

明示すべき内容には以下のようなものがあります。

・特定受託業者の名称
・業務委託した日
・給付の内容
・給付を受領または役務の提供を受ける期日
・給付を受領または役務の提供を受ける場所
・検査を完了する期日
・報酬の額・支払期日
・支払方法

不払いが起きた時のための予防策としては、相手側の住所を明示してもらうことです」と中内弁護士。

裁判する際に「住所を調べる」という弁護士の工数が増え、その分費用も増えるからとのこと。

トラブルが起きてから、相手の連絡先を調べるのではなく、契約時にきちんと把握しておきましょう。

2.発注者は受領後60日以内に支払う

期日における報酬支払義務(第4条)では、発注者が成果物を受領した日から60日以内に支払う義務があるとしています。しかも支払日は60日後ではなく、できるだけ短い適正な日です。

具体的な日を特定できるよう、以下のように明記します。

〇=●月●日支払、毎月●日締切、翌月●日支払
×=●月●日まで、●●日以内

支払期日を定めなかった場合は、①物品を実際に受領した日、もしくは②受け取った日から60日を超えた日が支払期日となります。

3.発注する側が気をつけるべき「7つの禁止行為」

さて、法律を守る義務の対象となる発注側ですが、7つの禁止行為があります。違反すれば、行政から「指導」→「命令」→「公表」→「罰金」を受けるリスクがあり、その罰金は50万円以下です。

「行政は、あまり動いてくれないのでは?」

そのような不安を感じているかもしれませんが、今回の改正に際して、公正取引委員会のなかでも人員&リソースを確保しているとのこと。

「もしかして、小さな事業者でも「見せしめ」として取り締まりを受ける可能性があるかもしれません。」

中内弁護士談

そう思うと、発注側も内容を熟知し、法に触れないように気をつけなければならないでしょう。

7つの禁止行為には、以下のようなものがあります。

厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

・受領拒否
・報酬の減額
・返品
・買いたたき
・購入・利用強制
・不当な経済上の利益の提供要請
・不当な給付内容の変更・やり直し

参照:厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

1.受領拒否

厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

×勝手に「いらなくなった」「うれなくなった」という理由で受け取らない

2.報酬の減額

厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

×報酬から振込手数料を差し引いて振り込む
×業績が悪化したらら報酬を減らす

3.返品

厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

×売れ残ったから返品する

4.買いたたき

厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

×不要に安く報酬をねぎる
×納期を大幅に短縮して発注したにもかかわらず見積額は一緒

5.購入・利用強制

厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

×発注する代わりにイベントチケット買ってね

6.不当な経済上の利益の提供要請

厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

×運送のみの契約なのに荷物の積み下ろしも強制した
×いくつか楽曲を作ってもらい採用しなかったボツ曲も無償でもらい受けた

7・不当な給付内容の変更・やり直し

厚生労働省|フリーランス新法パンフレットより

×発注はキャンセルするから支払いはなしね
×こちらが納得がいくまで何度でも修正してね

※修正回数を取引条件に盛り込むべき

「フリーランス新法」は「下請法」と何が違う?

さて「フリーランス新法は下請法に似ているな」と思った方も少なくありませんよね。その違いは何でしょうか。

いわゆる下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは、親事業者による下請け事業者に対する不当な扱いを防止する法律です。

その内容は以下です。

・買いたたき
・代金の減額
・代金の支払い遅延
・受容拒否
・不当返品
・物の購入強制・役務の利益強制
・報復措置
・有償支給原材料等の対価の早期決済
・割引困難な手形の交付
・不当な経済上の利益の提供要請
・不当な給付内容の変更や不当なやり直し

参照:政府広報オンライン

下請法でも十分に思えますが、実は親事業者と下請事業者の資本金規模による規制があり、法の対象の範囲が狭いといった問題があるとのこと。

そのため、フリーランスが対象外になることもあるのです。

フリーランス法の対象となる取引は?

フリーランス新法のほうが、下請法よりも取引や義務の対象が広がっています。対象となる取引は、事業者からフリーランスへの委託、つまりB to Bが対象です。単純にものを販売する行為(to C)は対象外となります。

なぜ受注側が知っておくべきか?

下請法と同様、発注側が守るべきことを定めたのがフリーランス新法です。

ただ…

「フリーランス新法は、万能ツールではありません。」

と中内弁護士。

「結局、契約時には自分で条件交渉をしないといけないんです」

一度契約してしまった場合、フリーランス新法が契約の上書きをしてくれるわけではないとのこと。労働法との比較で考えみると、違いが分かるそうです。

例えば、あるアルバイト募集が時給900円だったとします。しかし、東京都の最低賃金は時給1,163円(2024年10月以降)です。これは、労働法違反ということになり、労働者は法律を楯に最低賃金以上の時給を請求できます。

しかし、フリーランス新法の場合は…

事例①
本当は5万円の報酬が妥当な仕事を1万円で買いたたかれたとしても、法律を楯に、あとから報酬10万円を請求できない。

事例②
支払期限3ヶ月で契約していたが、フリーランス新法が施行されて自動的に60日になるわけではない。

「結局、フリーランス新法を楯に契約交渉しなければならないんです」
「応じてくれなければ、公正取引委員会に報告しましょう」

とのことでした。

いま締結中の契約内容を変えたいのであれば、発注側と交渉して再び新しく合意・契約しなければならなりません。

つまり、私たちフリーランスは、フリーランス新法により「交渉の材料を得た」と考えると良いそうです。

フリーランス法が施行される11月までにやっておくこと

フリーランス新法は、交渉の根拠として利用するとして、私たちフリーランスは、何をすべきかについてもアドバイスを頂きました。

「契約条件などテンプレートを作っておくと良いですよ」

例えば…

・この金額以下では仕事を請けない
・特急料金を決めておく
・修正回数を決めておく

受注者側も取引条件をまとめておくことが重要とのこと。

契約時には、自分から取引条件を提案するようにし、自分に有利な契約合意に持っていくようにしましょう。

質疑応答

最後に質疑応答がありました。そのまま掲載します。

【質問1】
契約書の件で質問です。A社とA案件の契約書を交わし仕事を完了させたのち、続けて別件Bの依頼をいただきました。この場合、新たにBについての契約を結びなおす必要がありますか?

【返答】
マスターの契約書を作っておくとよい
どのような受発注でも適応するルールを決めておく

【質問2】
この法律は遡及しますか?
(※遡及:さかのぼって過去のことまで効力をおよぼすこと)

【返答】
遡及しません。過去にさかのぼって遡及できません。
11月以降であれば、公正取引委員会に訴えることができます。

【質問3】
事務代行など付随行為が多い包括的受注で内容明示の列挙が難しい案件では、基本契約書+都度明示の形が最善ですか?

【返答】その通りです。

今回の学びをもとに条件交渉してみた

実は、このセミナーを受講した時、私は新しいクライアントさんと契約書を交わそうとしていました。そのなかで気になる文言があったため、私も質問させていただきました。

それがこちらです。

第11条(損害賠償)
1.甲又は乙は、本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、当該損害を賠償しなければならない。
2.本契約に関連して、乙の責めに帰すべき事由により第三者が損害を被った場合、乙は、直ちに損害の拡大防止に尽力するとともに、当該第三者からのクレーム防止のために責任をもって対応する。甲が、本契約に関連して乙の責めに帰すべき事由により損害を被った場合には、乙はその損害金の全額を負担することとする。

「1000万円の損害が出た」と言われたら、その全額を負担しなければならないのでしょうか?

この質問に対して「全額ではなく【報酬の限度額】とすると良いですよ」と、アドバイスを頂きました。

そこで、クライアントさんに「文言を【全額】ではなく【報酬の限度額】に変更してください」と申し入れしました。すると「いいですよ!」と了解を得られたのです。

ほかにも…

第8条(競業避止義務) 
乙は、甲の事前の書面による承諾がない限り、本契約期間中及び本契約の終了後1年間は甲と競合する事業を行う者に対し、本件業務と同一又は同種の業務を提供してはならない。

そもそも、すでに似たようなメディアさんと契約していました。そこで「この文言があると御社と契約できません」とお伝えしたところ、第8条自体を削除してもらうこととなりました。

中内弁護士曰く「雑誌など紙媒体の世界では一般的だったのですが、Webでは、この条件が当てはまらなくなってきています」とのこと。

クライアントさんも雛形をポンと渡してきた感じで、交渉したら「あ、そうですね。わかりました!」といった返答でした。

フリーランス新法を熟知し、自分の身は自分で守ろう!

今回は、中内弁護士およびセミナー主催者・久保田幹也さんのおかげで、新規契約を結ぶ直前に重要な学びの機会をいただけました。

今までの私は、契約書を渡されても、よくわからなくて、そのままサインをするという情弱の典型みたいな行為を何度もしていたんです。

しかし、どこを見て、何に気をつければよいかの解像度が、かなり上がった気がします。

フリーランスの皆さんも、フリーランス新法の中身を熟知し、知識を持って自分の身を守るための楯としましょう!

このnoteがその助けとなれば幸いです。

さらに中内弁護士は、報酬未払いなどのトラブルに巻き込まれた際、内容証明や督促の手続きを一般的な価格よりも安く請け負ってくれるとのこと。

これは、フリーランスの立場を守りたいといった純粋な想いや厚意によるサポート案だそうです。

「どこに相談して良いかわからない」
「弁護士に相談なんて、敷居が高すぎる…」
「弁護士は費用が高そうで、問い合わせするのが怖い」

こんな方も、中内弁護士なら大丈夫!
私も「困ったときには、中内弁護士に相談しよう」と心強く感じています。

※3万円で内容証明・3万円で督促・5万円で両方

▼このnote書いた人▼

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