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Apocrypha / Molecule Plane (2022)

待望の新作。

聴き始めた時、西洋宗教を彷彿とさせるイメージであったが、時折東洋的なそれの響きにすら聞こえてくる。東西に通底する、人間がすがる「超越的精神性」にアプローチされているような気がする。

フェスやコンサート企画のための作成された楽曲たちであるとのこと。ここ数年、BandCampなどで発表されてきた楽曲たちとは、また違うインパクトがある(とくに前半の曲たち)。BandCampの作品は未来的というか「生み出されている尖端」からのエネルギーを感じるが、この前半の曲たちは、歴史的建造物のような重厚な構造性からもたらされる、偉大さとエネルギーを感じる。人々によって、ずっと祈りが捧げられきた歴史をもつ大教会の存在が、音により示されているような。地に足がついている文化、というか、その土地に根付いているような信仰、というか。そう、つぶやかな音たちの重なりを聞いてると、その”場”にいる、という感じが強まってくる、という感じがする。それが文化的(歴史的?)重厚感として、自分には聞こえるのだろう。

後半の曲たちは、Bandcampで発表されたものたちとの連続性を感じる。エッジが明確であるが、過去作とまったく同じではない。このアルバムならではの串がささっているように思う。それはやはり、重心の低さ、というのか。Pseudepigraphaが、とくにこれまでの連続性と、この重さを感じられていい。

以降、雑感である。

収録楽曲はどれも電子音楽フェスティバルやコンサート企画のために制作されたものであり、元々はアルバム化の構想を持って制作されたものではなかったが、今回のアルバムリリースのオファーに際しこれらの楽曲群にひとまとまりのアルバムとしての価値が見出され、ミックスの再調整や音色レイヤーの再構成によって本作が生み出された。いわばこれらの楽曲は、「正典」に対する「外典=Apocrypha」として存在している。

http://studiowarp.jp/shrine/srsw-501-molecule-plane%E3%80%8Eapocrypha%E3%80%8F/

谷川俊太郎さんだったか、どなただったか覚えていないが、人から依頼された作品作りがあることの大事さを語られていた姿をみた記憶が在る。内発的な衝動で作られるものとは違う力がそこに働き、生まれてくるものが在る、みたいな話をされていたような記憶を思い出す…(要出典。間違っていたらごめんなさい)

依頼されたテーマ性に取り組むうちに、これまで考えなかったことが見えてくることってあるのだろうか。与えられたテーマ性は、”制約”や”しばり”のように感じられるけど、それが逆に”足がかり”になって、結果、思わぬ高みから望めるような感じがあるのだろうか。なんとなく、このアルバムを聞き紹介文を読みながら、昔であった上述の話題とその時の感想をふと思い出した。

大塚さんの他の作品とつながっているけど、ちょっと違う。
その違いを、自分なりに腑に落としたい、という気持ちになっている。
過去作と対比させながら、これからも聴き込んでいきたい。

ミュージックと個人的には簡単にくくれない、「作品性」を感じる非常に興味深いアルバムである。

気づいたことがあったら、また記録してみたい。

領収書にもメッセージとサインが。うれしい。

追記(2022/11/29)
雑感部分など読み返してみると、本アルバムに収録された作品が、テーマ性が設定された上での依頼を受け、作られてものという書き方をしてしまっているが、実際のアルバムの紹介文では、「企画のための制作」のみの文言であり、そこにテーマ性などの縛りが合ったかどうかは不明であることに気づく。

いろいろ思い込みで、雑感を述べていたいました。
「もしセーマ性などの依頼があったとしたら」という仮定での雑感でした。紛らわしくて申し訳ありませんでした。

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