『サリー・キャロル』 (2013)
※上演ご希望ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。著作権は田口アヤコ及びゼルダ・フィッツジェラルド、スコット・フィッツジェラルド、野崎孝氏に、上演権はCOLLOLに帰属します。
【上演記録】
代田橋CHUBBY
2013年9月19日(木)〜 22日(日)
http://www.COLLOL.jp/SallyCarrol/
staff:
劇作・演出:田口 アヤコ
音響・演出:江村 桂吾
研究・演出:角本 敦
制作:COLLOL
制作補:守山 亜希(tea for two)
宣伝美術:鈴木 順子
宣伝画:東京ディスティニーランド
音響協力:古川 直幸
会場協力:CHUBBY
主催:COLLOL
ことしの4月に、父親が、岩手から栃木に引っ越してきたのですが、
90近い祖母をいっしょに連れてきました。
そうか、わたしは、おばあちゃんの年齢がわからない。
痴呆がすすんでいて、
もうしゃべることもあるくこともじぶんでご飯を食べることもできず、
来て1ヶ月くらい、ゴールデンウィークのすぐあとに、亡くなりました。
うちはものすごいびんぼうなので、びんぼうだからなのかなあ、
なんでかなあ、とにかく。
お棺のお花が、きらきらのリボンで作ったお花でした。
ほんとうの花じゃあないんです。
いちばん、安いプランの、お葬式だったんだとおもいます。
最後のおわかれが、リボンのお花かあ、
たくさんたくさんもらうばかりなのかもしれません
小学校の運動会のときには、毎年、
まっくろい唐揚げと、栗ごはんをつくってきてくれました
おばあちゃんの名前は、田口ツキといいます。
月、のツキ、ではなく、次、のツキ、と聞きました。
それでは、
ごゆるりと、
あなたのための演劇を
おたのしみください。
COLLOL主宰 田口アヤコ
cast:
西尾 美鈴
杉 亜由子
松本 みゆき
山口 笑美(山の手事情社)
HIKO(GAUZE)
勝呂 隆男
東京ディスティニーランド
八ツ田 裕美
田口 アヤコ
*********
あらすじ:
わたしはモンスターになりたい。
破壊、と、なにもない時間。ひとのせいにすること。夢。
ドリーミーで、ドラッギーで、終わってて、
「おばあちゃんも、若い頃にはバレーボールをしたのよ」
『うつくしい』過去に、しがみついているだけ。
うつくしい『過去に、』しがみついているだけ。
うつくしい過去に、『しがみついて』いるだけ。
うつくしい過去に、しがみついている『だけ』。
登場人物は
・男性3人
・女性6人
男1…30代
男2…50代以上
男3…年齢設定なし。発話なし、ムーブメントのみ。
女1…20代
女2…20代もしくは30代前半
女3…20代もしくは30代
女4…20代もしくは30代以上
女5…20代もしくは30代以上
女6…20代もしくは30代、もしくはそれ以上。パフォーミングマネージャー・指揮者的な役割を担う。
登場人物たちは、上演時間中、ずっと、アクティングエリアに存在している。
ラストシーン以外の出はけ無し。
ムーブメントの指定、アクティングエリアの指定は、一部を除き、なし。
●開場時間(30分)
(全登場人物はアクティングエリア内に存在。
大友克洋のマンガ『AKIRA』全6冊を回し読んでいる。)
●オープニング
(劇が始まる。音楽がかかる。)
女5: 熱、あくび、りんご食べてる
(登場人物たち、絵から抜け出す。)
●シーン1
<18> いい夢のはなし
女3:
きょうみたゆめは、
なんだかすごいいい匂いとかしてて、
あたしも可愛い服着てて、なんかねえ、オレンジの
なんか、こどもだったり、じぶんがね、
それで、おとうさんとおかあさんとか、
ともだちとか、いとことかおじさんとかおばさんとか
近所の駄菓子屋のおばちゃんとか、
でも、むかしのはなしってわけじゃなくて、
いまのあたしになって、
それで海行ったりとか、
すごい温泉行ったりとか、
なんか、日常どんだけ抑圧されてるんだよーってかんじだけど、
なんかおふとんもふかふかしてて、
あれ?これ夢?って、
なんかまどろむ、っていうか、起きてるのかねむってるのか
わかんないかんじで、
それで、誕生日だった。ケーキ出てきて、ろうそくが35本立ったやつ、
それで、消した。
<19> オリンピックの話
(「あと7年」という台詞中の数字設定は、あくまでも「2013年上演」のためのものである。上演年により、適宜数字設定は変えられる。)
女2: なんかさあ、
オリンピックが東京になったでしょ?
女4: うん
女2: 2030年?2020年?
女4: 2020年でしょ
あと7年、ってみんな言ってるじゃん
女2: なんか、変わるのかなあー
女4: え、たとえば?
女2: いや、国が!
女4: 国って、でかいなー
女2: 東京は?
女4: 東京は、変わるのかなー。首都高とか、どうなんだろうねー。
あ、なんか、リニアモーターカーがどうとか、誰か言ってた。
女2: へー。あたしは、変わるのかなー。
<17> 演劇
(女全員、男1による発話。発話者指定なし)
(「(次の一段落と音的にかさなる)」という部分は、発話するテキストではなく、上演指定。)
私たちが思い出そうとしている話だと考える
演劇は今でも政治的でありうるのか?
演劇はイメージなのか?
演劇は神聖なのか?
演劇は意味の宗教のようなものか?
あたしはあのひとをささえきれるだろうか?
もしくは捨て切れるだろうか?(次の一段落と音的にかさなる)
演劇は意味をもつのか?
演劇は社会に有用なものか?
演劇は歴史にのこるか?
演劇は人を殺すか?
演劇は人を生かすか?
父を殺したのは、あなたじゃないってことだけです。
コントロールできない
コントロールしなくていい
コントロールできなくていい
それは不可能だからではなく
しないほうがよいから(次の一段落と音的にかさなる)
誰にも愛されないけれど生きることを選ぶ
誰かに愛されるために死ぬことを選ぶ
あたしたちは、別れるために出会っているのにほかならないから。
じぶんだけのものでないことに安心する
じぶんだけのものでないことに興奮する
(次の一段落と音的にかさなる)
この毒とどうつきあうか
あいしあうと書いたが
愛なんて片思いなんだと思う、
ほんとうは
ぼくの
たったひとりは
きみなのだ
と
いってもらいたいわけだ(次の一段落と音的にかさなる)
いまあなたがここにいないのは
いみがないし、
いまあなたがここにいたとしても
なんのいみもないかもしれない、
もうことばなんてあってもしょうがない、
からだ、からだはしんじられるかもしれない、
声がききたい、
なにも言わなくていい、
めをのぞきこみたい、
どうしようもない、
どうしようもない
言ってほしいともいえない
いえばいいんだろうか
くちにだせと
愛情とにくしみと
いとおしさとうらみと
大事にしたいとおもうきもちと
ぼろぼろにしてやりたいとおもうきもちと
整然としていたいというきもちと
ぐちゃぐちゃになりたいとおもうきもちと
ここにいたいとおもうことと
消えてなくなりたいとおもうことと
あいたいといえばいいのに
言ったそばから消す
可能性を消す
あしたを消す
やくそくしない
ゆびをからませない
ことばを信じない
なにもしんじないことはできない(次の一段落と音的にかさなる)
ああでもあさましくていいんだろうな
恋なんてばかばかしくあほらしく無意味で
求めることは
てにはいらないということだ
その快楽をたのしむ
てにはいらないかいらくをたのしむ
なんてぜいたくでかなしい
うつくしくありたい
うつくしいこころでありたい
善人でありたい
ひとに好かれたい
しごとができるとおもわれたい
愛されたい(あのひとに)
愛する対象が欲しい
意地で演劇をやってはいけない、
というか、
意地で
うつくしいものに近づこうとしてはいけない、
邪悪はよいが、あさましいのはいけない、
ちがう、
もっとわかりやすく
利用、利用し、利用してくれたらいいのか、
わたしは、くすりを飲まずにねむっている。
<11> わたしのしあわせ
(女6を除く女たちにより、前シーン17と同時に、舞台中央の椅子で繰り返し上演される)
わたしは自由で
お金を持っていて
おしゃれで
キレイで
才能があり
人から好かれ
子どもを持つことができ
愛されていて
人からも認められ
お金に困らず
幸運で
素直で
清らかで
家族を大事にし
しあわせに満ちている。
●シーン2
<12> 『氷の宮殿』
(女全員、発話者指定なし)
熱
あくび
りんご食べてる
どれもこれもきれいな娘に成長していて
優雅で言葉遣いのやわらかい娘たち
けだるい
結婚
あなたじゃ分りすぎてて、恋をするのも無理
成長
前進したいとも思わない
あなたの中にあって、あなたを駄目にしそうなものを、わたしはむしろ、これから先も愛し続けると思うの
睡たそうにしてる古いわたし
わたしがもうきれいでなくなったときでも
ハリー・ベラミーはサリー・キャロルの求めるものをすべて持っていた
これより雄弁に彼女を語る言葉があって?
ちがう、ちがう、わたしじゃない。美しいのは彼らの方よ。
あの人たちはこの世で最も美しいもののために死んだのよ
ハリー、ここには何かがあったのよ、
あれは子供の遊びだよ。
この町は建設されてから三代しかたってない。誰でも父親は持ってるよ。自分のじいさんのことだって、町の人間の半分ぐらいまでは知ってるはずだ。でも、そこから先へ遡ることはできないんだよ
うれしいわよ−−−とってもうれしいわよ!
彼女は彼女独特のやり方でさりげなく彼の腕の中に身体を辷り込ませながらささやいた。
それが何だか死んだものが動いてでもいるような気がして。
自分が何のために結婚するのかを承知している女性にめぐり合うと、心強い気がしますよ。女の人の九割がたは、結婚というものを、映画の夕映えの中に歩み入ってゆくみたいに考えているのでね
つまり彼女はていよくあやされていたわけで、彼女のまわりの楽しい雰囲気は、彼女自身の喜びの投影に過ぎなかったのである。
ここの女の人たちはもしも美人でなかったら、何もないに等しい。見つめていると、影が薄くなって消えて無くなってしまうみたい。
ときどき夜中に彼女は、ここには誰一人住んでいないような感じに襲われることがあった−−−人々はみんなとうにこの地を去ってしまった−−−灯をともしたまま後に残された家々は、降り積もる雪にやがては墓石のように蔽われることであろう。ああ、わたしが眠るお墓にも雪が降り積もるのであろうか! 長い冬の間、厚い雪の下にいるなんて、わたしの墓標までが、淡い影のようなものがいくつもいくつも立ち並ぶ中の一つの淡い影のような存在になってしまうのじゃないか。わたしのお墓−−−花が撒かれ、太陽を浴びたり雨に洗われたりするのが本当なのに。
その春を彼女は永遠に葬り去ろうとしている
氷は幽霊ではないのか。
分岐点に来た−−−ここだったろうか?−−−彼女は左の道を選んだ。
それから突然灯りが消えた。
厚さ40インチと言ったな−−−厚さ40インチか!
男1: 泣いてはいけない、それ以上泣いてはいけない。涙が凍ってしまう。ここではどんな涙だってみんな凍りついてしまうんだから!
(<12>のすべて 新潮文庫『フィッツジェラルド短編集』野崎孝訳より)
<6> あ つ い
(女1、女2、女5による発話。女1と女2は、お互いの声が聴こえている。
女5は、ひとりでしゃべる。)
そこにはなにもない、
わたしは追いつめられた、
ゆめだとわかっている、
崖、
プール、
ひまわり、
起きるのがめんどくさい現実がめんどくさい電車がめんどくさいランチタイムのあのひとたちがめんどくさい
卒業式がめんどくさい、
入学式がめんどくさい、
テストがこわい、
ご飯つくらなくっちゃ、夫が帰って来る、「ママ」「ママ」「ママ」っていわれてる、わたし、わたし、わたし、
わたしがいない
夢だから?
クッキーの焼ける匂い、
ひなたぼっこ、
あ つ い
起きなくちゃ、眠らなくちゃ、食べなくちゃ、くすり飲まなきゃ、でんわしなきゃ、テレビみなくっちゃ、お風呂にはいらなきゃ、話あわせなくっちゃ、
あ つ い
<13> わたしのおばあちゃん
女4:
わたしのおばあちゃんは編み物が好きで、
得意で、
もともとは小学校の先生で、
お葬式も教え子のお坊さんがやってくれた。
「ハルミ先生」って呼ばれてた。
ちいさいころにはたくさん怒られた気がする、
こわいな、怒られるのやだな、っておもってたけど、
多分すごく繊細なひとだったんだろう。
腎臓が悪くて、一日おきに透析をするために病院に通ってた。
たべものとかも気をつかってて、
なんか、ソーセージみたいな加工物とか、食べちゃいけないみたいで、
くすりもたくさん飲んでて、
何歳で死んじゃったのかな、75くらいだとおもうけど。
それがわたしが22歳くらいのときで、
おとうさんから、朝でんわが来て、
おとうさんがこんなに悲しそうなのははじめてみた、っていうか、聞いたっていうか、
おばあちゃんはおかあさんのおかあさんだけど、
おばあちゃんが死んじゃって、
おかあさんが悲しむのがおとうさんは辛かったんだろうか、
でも、ちがうかも、
わたしの喪服は、そのときにもらってきた、
おばあちゃんのお下がり。
●シーン3
<9> お葬式 A, B, C, D, Eさん
(このシーンのエピソードは、すべて、女3,4,5,6の実体験である。女3,4,5,6は、みずからの実体験においては、発話しない。女1,2を含む、女全員は、体験を語っている本人になり、死んで行く人間になり、その話を聴いている人間になる。)
A:
わたしのおじいちゃんは、鳥取に住んでいて、夏休みとか遊びに行くと、帰りに5000円おこずかいをくれて、その5000円が欲しくて行く、みたいな、そんなかんじだったんだけど、おとなになってからはいろいろ忙しくって、おとうさんとおかあさん二人で行けばいいじゃないとかそういうかんじで、わたしが東京に来てから、久しぶりに、家族で、お兄ちゃんの家族も集まって、予定合わせて、庭でバーベキューしたりして、そしたら、その1ヶ月後くらいに、おじいちゃん死んじゃって、えー、1ヶ月前に会ったじゃん!とかおもって、で、お葬式、なんかわたしもお葬式というのが初めてで、お兄ちゃんわたしより3つ上でいいおとなじゃん、っておもうんだけど、なんかお兄ちゃんもそわそわしてて、こういうの(お焼香の身振り)、「あれ、2回やるの?3回やるの?」「え、いまあの人1回しかやらなかった!」「え、あれ食べてるの?」「違うでしょ!」とか二人で言ってて、順番がまわってきて、こう(お焼香の身振り)そつなくこなしたんだけど、でも、最後の、お棺の開けて、おじいちゃんの顔をみたときに、あ、こう、正面から、ちゃんとおじいちゃんの顔見たことなかったなあ、っておもって、なんか6畳とか8畳とかの部屋でこう話してたときには、ちゃんと顔とか見てなかったなあ、って、そんなことをおもいました。
B:
わたしが大学入って最初に入った劇団が、主宰のひとが35歳くらいで、なんか新入生勧誘は大学でやってたんだけど、社会人と学生が半分半分くらいの劇団で、それで、4月、5月に入ったんだな、そしたら、半年くらいで、その35歳の主宰のひとが、「書けなくなった」って言って、解散しちゃって。その劇団って、ひとつうえとふたつうえとみっつうえの先輩、女優さんがいて、その3人ともすごくきれいなひとで、こんな綺麗なひとたちのいる劇団に入ったらさぞ楽しかろう、とおもって入ったんだけど、半年で解散しちゃって。それで、みんなそれぞれに活動してたんだけど、解散してから2年くらい経ったときに、そのひとつうえの先輩、和田さんっていうひとだったんだけど、そのひとがいきなり死んじゃって。なんか、おばさんが家に行ったら、ねむりながら死んでた、とか、心臓発作みたいな。それで、命日とかちゃんとおぼえてないんだけど、多分8月の13日で、いまでも、山梨がご実家で、毎年、みんなでご実家にお線香をあげに行くっていう、わたしは今年も行けなくって、あーっておもったんだけど、お葬式は西武線のどこかで、昼間の告別式で、遺影の顔、遺影の顔が、記憶に残るんだなあって、そのひとは21歳くらいで死んじゃったわけだから、すごく、そんなかんじです。
C:
わたしが最初に出たお葬式って、3歳か4歳くらいのときで、参列とかするわけじゃなくって、こどもたちは2階であそんでなさい、とか、そんなかんじだったんだけど、なんか、灯籠がすごくきれいで、キレイだなーって、それで、おじいちゃんのお棺に入って、花にかこまれた顔が、これもすごく綺麗で、なんか、きれいだなー、って、お葬式っていうか、きれいだなーっていう、そういうイメージがあります。
D:
わたしのおばあちゃんは老人病院みたいなところに入院してて、スケジュールをすごい調整して、鹿児島まで飛行機で行って、お見舞いに行ったんだけど、ああいうところって、なんかすごくへんなかんじで、なんか、死ぬのを待ってるっていうか、なんかそれがすごくいやで、親とかにも、あんなところには入れないほうがいい!とか言って、まあ、言うだけ言う、っていうか、言うは易し、っていうか、でもおばあちゃんも98で、98歳の人を入院させてくれる病院なんかほかになくって、それでしょうがないんだけど、わたしが帰るっていう日に、おばあちゃんがすごく苦しんで、それまで、「痛い」とか「暑い」とか言ったことないひとで、わたしのことをいつも心配してくれる、ってかんじだったのに、なんか、飛行機の時間がー、みたいなときに、すーごい苦しんで、痛み止めとかあげて、どうにか治まって、それで、じゃあね、また来るね、って言って、帰ってきて、でもちょうど1ヶ月後くらいに亡くなって。それでまた鹿児島に行って、お葬式がすごく立派な会場で、家とかすごいボロ屋だったのに、じぶんで、貯金して?前払い?登録?みたいなことをしてたみたいで、うちの親もぜんぜんお金ださなくて済んだくらいで、立派なお葬式、でも、いっしょに住んでたおばちゃんが、おばあちゃんのおつきあいのあるひととか全然知らなかったみたいで、連絡ができなくって、すーごい大きな会場、ほんとに広い、おーきな会場に、ぜんぜん、10人くらい?ほんとに10人くらいしかいなくって、でもすごい立派な会場で、98まで生きて、こういうかんじかあ、っておもいました。
E:
わたしの友達で、結婚しまーす!って言って、おめでとう!って言ってた子が、結婚式の1ヶ月くらい前に、おかあさんが死んじゃって、結婚式もどーする?どーする?みたいになってたんだけど、けっきょく式はちゃんと挙げて、その子はおとうさんも小さい頃に亡くなってたので、結婚式は、涙、涙、みたいな、それで、その子は高校のときの友達なんだけど、その子のいとこが中学校のときの友達で、友達っていうか、同じクラス、くらいなかんじだったんだけど、その中学校の友達がさなえちゃんていう子で、その子も結婚します!みたいな話を聞いてたら、なんか、誰かの結婚式の帰りに、交通事故で死んじゃって、それが、そのおかあさんと同じ日に死んじゃって、それで、お葬式に行ったら、お棺のなかで、顔をみたら、交通事故だから包帯とかこうぐるぐる巻きで、あー、交通事故では死なないようにしよう、っておもいました。
<18> いい夢のはなし
(女3,4,5、それぞれ3カ所のアクティングエリアにて同時発話)
きょうみたゆめは、
なんだかすごいいい匂いとかしてて、
あたしも可愛い服着てて、なんかねえ、オレンジの
なんか、こどもだったり、じぶんがね、
それで、おとうさんとおかあさんとか、
ともだちとか、いとことかおじさんとかおばさんとか
近所の駄菓子屋のおばちゃんとか、
でも、むかしのはなしってわけじゃなくて、
いまのあたしになって、
それで海行ったりとか、
すごい温泉行ったりとか、
なんか、日常どんだけ抑圧されてるんだよーってかんじだけど、
なんかおふとんもふかふかしてて、
あれ?これ夢?って、
なんかまどろむ、っていうか、起きてるのかねむってるのか
わかんないかんじで、
それで、誕生日だった。ケーキ出てきて、ろうそくが35本立ったやつ、
それで、消した。
●シーン4
<5>振り込み
(男1(A)&女3(B)、女5(A)&女2(B)のペアにて、同時発話。)
A: ああああやばい!おもいだした!
B: なにいきなり
A: やばい、きょう24だよね?
B: うん
A: あーもー、振り込みって、土日できるんだっけ?
B: え、できることはできるけど、あれじゃない、
お金が入るのは月曜日じゃない?
A: え、そうなの?
B: え、そうでしょ
A: そうかー
B: え、とりあえず、でんわとかすれば?
なんの振り込み?
<8> 4日間入院した人
(女4(A)→女2(B)、女1(A)→女4(B)、男1(A)→女3(B)、女5(A)→女2(B)の順番で、4回くり返す)
A:
ある夜、とある人に電話したら、なんか今は話せないみたいなこと言われて、なんかうわーってなって、いろんなことめんどくさくなって、もう死んじゃおう、みたいな、それで、残ってた薬わーって飲んで、首も吊ろう、っておもって、お風呂場のドアノブにベルトかけて、こう首を入れてみたんだけど、なんかそれもめんどくさくなって、ねむっちゃった。それで、けっきょく4日間入院した。
B: なんで?
<4> 引っ越し
(女1(A)&女4(B)、男1(A)&女3(B)、女5(A)&女2(B)の組み合わせ、3カ所のアクティングエリアで同時発話)
A: あのね
おもいだしたんだけど、
B: うん
A: 多分ね、来年、引っ越さないといけないんだよ
B: え
ま、来年って、まだ日にちあるからいいけど、え、でもいつごろ?
A: わかんない
B: あ、そう
A: うーん
B: なに、会社でなんか言われたの?
A: いや、ちがくて、うちのあれで
B: あ、そう、
<1> きのうきょうあした2
男2:
(きのうの次に今日が来て、今日のつぎにあしたが来て、あしたの次に明後日が来て、いつかわたしは忘れるんだろうか?)
きのうきのうきのうきょう、
きょうきょうあした、
あした、きのう、あさって、
あした、きょう、あさって、
あさって、きょう、あした、
あした、わすれる。
<7> 水を飲む
(男3を含む全員。即興的に以下他そこにある「〜な水」の身振りをしながら、その「〜な水」ということばを発話。
基本的には、さまざまな水を飲む身振りとことば。)
水
水道の水じゃない水
流れる水
たまる水
降る水
ほか
●シーン5
<21> 大木裕之はどんな夢をみるか
(男1,2、女全員。発話者指定なし。)
わたしの大きさはこれくらい
ポジティブなつまづき
信じること
ハッピーエンド
たいくつさ、むなしさとせつなさ、
あのひとのことをおもうと
ポジティブなつまづき。
そこに光があった。
光あれ、と神は言った
あなたの中に根を張っている
たいくつさ、むなしさとせつなさ、
ハッピーエンド
終わったこと
あなたにみえているわたし
わたしの大きさはこれくらい
無力感
不可逆的
本気になってしまう
いとおしさ
人は自分につごうのよい一面しか見えない
人は自分につごうのよい一面しか見えない
人は自分につごうのよい一面しか見えない
光あれ、と神は言った。
きみが大事だ
わたしの大きさはこれくらい
ちょっとずつまちがっている
理性
転換点
ハッピーエンド
不可逆的
無力感
ゆるやかに許していく
なにもかも
依存
幸せ?
このように存在したい
依存
幸せ?
豊かさ
殺意
言語化
重さ
軽さ
よろこび
ふしだらなわたし
精液、を飲む、
なめる、
100人の女の子たちが、
恋人
わたしのもの
わたしの恋人
商品
なにかが全然ちがう
ふしだらなわたし
豊かさ
ハッピーエンド
骨を洗う
弱さ
わたしの
骨を洗う
わたしについての記憶
才能
ほんとうのこと、うそのこと
あなたのことを忘れる
「事実」と「フィクション」
世界の終わり
世界の始まり
(自分以外の出演俳優の実名を入れる)はどんな夢をみるか
長い夜
骨を洗う
わいざつな
長い夜
知恵
別の愛し方
才能
ほんとうのこと、うそのこと
わたしについての記憶
ほんとうのこと、うそのこと
愛していたもの
愛していたこと
愛していた道
愛していた人
愛していた何か
愛していた
長い夜
あなたの一人称
わたしの、
世界の終わり
世界の始まり
ゆるやかに許していく
幸せ?
●シーン6
<14> カウントアップ、カウントダウン
(女3を除く女全員。以下数字のほか、パフォーマー本人にとって意味のある数字から、数字を一つずつカウントアップしていく。
例えば、13,14,15,16,17,18,19,という数字の羅列。いつまでも続く。始まりの数字は突然変化し、その変化により発話の方向、身体も変わる。)
13
65
137
368
735
1260
2013
3568
14029
<16> 耳鬼1
(前シーン<14>と重なって発話。<14>の数字は、まるでノイズの渦巻のようであり、そのなかで<16>を聞かせることは、もしかしたらとても困難なことかもしれない。しかし、女3は発話しつづける。
このシーンの途中で、前シーン<14>は、カウントアップからカウントダウンに変わる。例えば、13,12,11,10,9,7,8,という数字の羅列。このシーンの最後には、それぞれのパフォーマーにおいて、全てのカウントは1に戻り、
無音がおとずれる。)
女3:
もしオレが
オレの耳がきこえなくなったら、
たぶん、
目もいっしょにつぶすとおもう。
ヘレン・ケラー?
いや、でも口だけはあって
しゃべりつづける
そして酒を飲む
のめないけど、すぐきもちわるくなるけど、
世界にはたくさんの情報がうずまいていて、
ゴウゴウと、
ゴウゴウと、
でもそれがオレにきこえないんだとしたら、
情報?
目と、耳と、どっちが大事か、
どっちかをなくすのだったら
目も、耳も、どっちもなくしてしまいたい、
それでもキミだけをえらぶことはないのだとおもう、
オレはキミのことをとても大切におもっているけれど
オレはキミにとてもひかれているのだけれど
目と耳がなくって、口だけがあって、
なんかあれだ、女の穴のような気分だ、
それで酒を飲む、その口で
そしてしゃべりつづける、
もししゃべることがあるとすれば。
<16> 耳鬼2
(男1および女1&女2による発話。女1と女2は、このことばを「分け合う」。)
きみがめのまえにいて、
でも、みえなくなる。
きみがそこにいるけれども、
きこえなくなる。
きみは、「情報」ではない。
世界にはたくさんの情報が渦巻いていて、
ごうごう、ごうごう、ごうごう、ごうごう、
おとをたてる
それが、
もし、
聴こえなくなったら。
目と、耳と、どっちが大事か、
どっちかをなくすのだったら
もし、きみがそこにいるけれども、
きこえなくなったら、
目も、耳も、どっちもなくしてしまいたい。
目も、耳も、目も、耳も、
傲慢だなあ。傲慢だ。
目も、耳も。
目と耳がなくって、口だけがあって、
それで酒を飲む、
のめないけど、すぐきもちわるくなるけど、
そしてしゃべりつづける、
だれか、聞いているんだろうか、
じぶんには聴こえない、
しゃべりつづける、
もししゃべることがあるとすれば。
<1> きのうきょうあした2
女4:
(きのうの次に今日が来て、今日のつぎにあしたが来て、あしたの次に明後日が来て、いつかわたしは忘れるんだろうか?)
きのうきのうきのうきょう、
きょうきょうあした、
あした、きのう、あさって、
あした、きょう、あさって、
あさって、きょう、あした、
あした、わすれる。
●シーン6
<23> ゼルダ・フィッツジェラルドの手紙
(女6によるゼルダ・フィッツジェラルドの手紙、40ページ(要約)を含む、即興的シーン。男1と女4は罵倒し合い、女1が踊る。)
親愛なるスコット
ニューマンに来てほしいとさっき手紙を書きました。あなたはこのところずっと昔のことを考えていると言いましたね。あたしも、三、四時間以上眠れないのが数週間つづいていて、包帯でぐるぐる巻きなので本も読めないから、ずっと考えていました。
たとえば、
不思議に興奮させるニューヨーク、記者、匂いのこもった息苦しいホテルのロビー、窓の桟を照らすまぶしい太陽、晩春のちくちくする埃、印象的だったファウラー家、プリンストンでのたくさんのお茶とダンスとあたしの奇行。それから、タウンゼントの青い目、ラドローのゴム、匂い袋のようなトランク、ビルトモア・ホテルのマシュマロの匂い。それから、いつもいっしょだったラドローとタウンゼントとアレックスとビル・マッキーとあなたとあたし。あたしたちは女たちが好きじゃなくて、楽しかった。
あたしたちは五十九丁目に引っ越した。あたしたちは喧嘩して、あなたはバスルームのドアをこわし、あたしの目を怪我させた。たくさん芝居に行ったので、あなたはそれを所得税から控除させた。プラザ・ホテルでの舞踏会のあと雪のセントラルパークをよろよろ歩いた、あたしはボッティチェリのことでブレヴァートでゾイと喧嘩し、彼女とデイヴィット・ベラスコのコートを買いに行った。バーボンをのみ、デヴィット・ハムを食べ、オヴァーマンのところでクリスマスをして、ラファイエットでたっぷり食べた。それから、トム・スミス、かれの家の壁紙、メンケン、ヴァレンタインのパーティ、アレックスと一晩中踊った、モラッツでジョンと食事した、スケートをした、妊娠した、あなたは『美しく呪われたものたち』を書いた。あたしたちはヨーロッパへ来て、あたしは病気になり、いつも文句ばかり言っていた。それから、ロンドン、シェイン・レズリーとの殴り合い、レディ・ランドルフ・チャーチルのところでいただいたトマトくらい大きいイチゴ。
それから、アラバマ、耐えられない熱さ、あやうく買いそうになった家。それからセントポールに行き、何百人もひとが来た。それから、インディアンの森、月をながめながらのポーチでの居眠り、あたしは体重が増え、嵐が恐かった。それから、スコッティが生まれた、クリスマスパーティにはぜんぶ出た、どこかの男がサンディに「太ったお友だちは?」と聞いた。雪がすべてをおおった。あたしたちはインフルエンザにかかった。
それから、それから、それから、
だんだんわかってきたけど、セックスと感情はほとんど関係がない。去年の冬、あなたのところに二回行って、やり直しましょうと言ったけど、あのときは、真剣にそんな気持ちになっていたし、道徳的に実際的に向いていないようでも、心の準備ができていると思った。あなたが知っているジゴロの歌、もしもあれがあたしの頭に入っていたら、パリには、ストゥーディオ以外に、三つ、解決の道があった。
アルモンヴィルでの面倒な昼食のあと、あたしはあなたの前に半病人であらわれた、あなたは、手遅れになるまで、ギャランティ・トラストの前であたしを待たせた。
サンティのちっぽけなろうそくはあまりもたなかったけれど、一週間も酔っぱらっているあなたよりははるかによかった。あなたは気にしなかった。だから、あたしはつづけた−−−ひとりで踊った、なにが起きようとも、心のなかではわかっているわ。これは神のいないきたないゲームなのよ、愛は苦い、それだけのこと、あとはこの世の感情の乞食どものもの、きたない葉書で興奮できるひとたちと大差ない−−−
(新潮社『ゼルダ・フィッツジェラルド全作品』ゼルダ・フィッツジェラルド著より、一部抜粋)
<10> 子ども
(女全員。それぞれのアクティングエリアで「みえない子ども(たち)」を見ながら発話。)
走ってる
ママ
ママ!
と と と
と、と、と、と、と、と、と
水
未来
みなもと
と、
おいしそー
飲む、飲んでる、
ぱ、く、ぱ、く、
あ 走った
転んだ
あ
泣いた。。。。
あ
ころがって、
つち、土は食べちゃだめ!
どろんこ、水、
わらった
<2> 夏
女全員:
むぎわらぼうしがとんだ、夏みかん、
かきごおり味のアイスバー、プール、
ひまわり、たちあおい、サンダル、砂
すいか、とうもろこし、お盆が終わる。
●シーン8
<20> 世紀末まであと87年
(このシーンの数字設定は、あくまでも「2013年上演」のためのものである。女2の実年齢、また、上演年により、適宜数字設定は変えられる。)
女2:
なんかね、
あたし、世紀末まで、あと87年なんだなー、っておもって、
87年って、なんかびみょうじゃない?
にんげんは87歳まで生きられるのか、とか、
いやー、でもあれかなー
あたしが、いま37歳で、あと87年っていったら、
114歳?
あ、、、生きてそう。生きてるかも。生きてそうだねー。
あたし、生きてるわ。
いや、わかんないけど。
えーでも、なにしよう。
87年か。ほぼ100年だよね。
ぼけたりするのやだな。
世紀末かー。え、つぎ、3000年?
あ、ちがうわ、2100年か。
あれかー、ミレニアムじゃあないんだ。
あたし、わりと、1900年代って好きだったんだけど、
そうだよね、いま、2013年なんだよね。
<22> 春夏秋冬
(男1,2,3を含む全員、以下テキストを繰り返しながら、会場の外へ、一人一人出て行く。)
・春、夏、秋、冬
・あれ?これ夢?
・熱
・長い冬
・その春を彼女は永遠に葬り去ろうとしている
・崖、プール、ひまわり、
・「ハルミ先生」(なつ子先生、明代先生、冬美先生)
・きのうきのうきのうきょう、
きょうきょうあした、
あした、きのう、あさって、
あした、きょう、あさって、
あさって、きょう、あした、
(男2のみ、アクティングエリア中央に一人残る。)
男2: あした、わすれる。
(おしまい。)
ここから先は
¥ 500
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?