GROW Model #64
新しいスキルを習得するためのステップとして、次の単語の頭文字をとった「GROWモデル」というのがあります。今回はそれを紹介します。
Goal(目標)→Reality(現状)→Options(選択肢)→Way forward(前進)→次のサイクルへ
人材育成を行う際、これらのステップを意識しながら問いかけをするのが効果的だと言われています。そうすることで、より生産的な会話となります。
Goal:はじめのゴールでは、具体的で、達成可能な目標をイメージしてもらう
Reality:2つめの現状ステップでは、ゴールとのギャップがわかるようにゴールに対する現在の進捗状況・ステータスを確認してもらう
Options:3つめの選択肢ステップでは、ゴールに向けての選択肢を挙げてもらう。この時には、できるできないなどをあまり評価をせず、いろいろと挙げてもらう
Way Forward:4つめの前進の段階で選択肢から行動に移す内容を見定める。このときには何をもって達成かを明確にして、まず何から始めるか、にフォーカスする
4段階を経た後は、また、ゴール設定のステップに戻って来ます。この時には、実際に達成できたこととできなかったことを明確化して、また更なるゴールを調整し、新たなサイクルをスタートさせます。
これらのステップは、相手にそれぞれの内容を具体的に思い描けるような問いかけをすることで進めていきますが、自分自身で行う場合もこの「質問」のかたちを取った方がより効果的になります。
また、「GROWモデル」をベースに生産的な会話を促すツールとして、「スケーリング」というのがあります。
これは、下から上へ10段階のマス目をつくり、この10段階のスケールをもとに、目指したいゴールを設定し、そこまで到達するにはどうしたらいいのかを、一段階づつのマス目ごとに考えてもらうような問いかけをしていくものです。
STEP1:ゴールをひとつだけ決めてもらう
「今回どのようなことを改善したいですか?」という問いかけをして、具体的なゴールを決めてもらいます(例えば、「会議で思ったことを発言する」など)。
STEP2:10段階到達の状態をイメージしてもらう
10段階到達とは、本人にとってどのような状態かを問いかけてみます。
「2週間後、自分が10段階まで到達できたとして、それは、どのような状態だと思いますか?」
「それを達成したときにどう感じるでしょうか?」
「周りで参考になる同僚や上司は、どのようなところが自分とは違いますか?」
などを問いかけます。
例えば、「怖気付くことなく、自信を持って発言している状態」などの回答を引き出します。
STEP3:現状を把握する
10段階中今は何段階ぐらいだと思うかを相手に聞いてみます。
「今のあなたは、10段階中何段階くらいだと思いますか?」
「なぜ、その段階だと思うのか、もう少し詳しく教えてもらえますか?」
「今でもできていると思う部分は〇〇でしょう?逆にできてないなと思う部分は?」
などを問いかけます。
相手の答えがネガティブな部分にばかりフォーカスしている場合は、できていることなどポジティブな答えを引き出すような問いかけをします。
例えば、「現状は6段階くらい。クリティカルでない場合は発言できるが、緊張して冷や汗が出る」などの回答を引き出します。
STEP 4:それぞれの段階について考える
「それでは、1段階上のレベルに行くには、どうしたらいいと思いますか?」
「それぞれの段階を上がるためにやったらよいと思うこと、やめたほうがよいと思うことは?」
などを問いかけ、段階ごとの到達目標を設定していきます。
例えば、次の段階(7段階)では、「分からないことを質問する」、その次の段階(8段階)では、「クリティカルな内容でも発言する」などの回答を引き出していきます。
10段階に行くまでの過程を細分化して、小さな目標に分解することのメリットとしては、最終的な到達点が遠くに見えて、達成できそうにないと尻込みしてしまいそうなゴールでも、達成できそうな目の前のゴールをいくつも設定すれば、モチベーションを失うことなく、勇気を持って前進することができるところにあります。
ちなみにこれは、いわゆる「鯨千分法」と呼ばれるものと同じ発想だと思います。「鯨千分法」とは、
鯨1頭を一度に食べようとしても食べられないが、毎日少しずつに分けて食べれば食べられる
ということを表し、ここから、一見こなし切れそうにない大量の仕事も、細切れの仕事に細分化して、一つ一つ処理していけば、最終的には終わらせることができる、ということを示すものです。
この「こなし切れない大量の仕事」を「困難そうに見える目標」に置き換えれば、それを細かい目標に細分化して(マイルストーン化)、目標への道筋を立てることで、最終的に達成可能になる、という風に捉えることもできると思います。
また、こうすることで、何から手を付けるべきかの優先順位をはっきりさせることができ、最終的な到達点への道のりをより明確にすることができるようになります。
この場合、10段階までのすべての段階の定義づけを一度にやる必要はありません。
最初の2段階くらいの内容が決まれば、まずは最初の1段階アップを目指して、その期限を決め、最初の1歩を踏み出すことができます。
それから先は、定期的なフォローアップでまた再検討することで、より効率的な成果を期待することができるようになります。
この「GROWモデル」を活用して、人材育成や自分自身の課題解決に取り組んでみてはいかがでしょうか。
出展・引用:40歳からのMBA留学〜オーストラリアでビジネスを学ぶ〜
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