見出し画像

心の知能指数:EQ vol.1 #29

1.感情脳と理性脳

脳には、感情脳と理性脳があり、感情脳の発達起源は約100万年前、理性脳の発達は、たったの1万年前からだそうです。

イメージとしては、感情脳を理性脳が覆っているような感じです。

感情脳は行動を促す脳なので、この部分が正常に機能しないとやる気が起きず、人生の歓びも感じられないようです。

意思決定時に優先順位をつけて判断する時にも、感情脳との連結がないと異なる情報や記憶を比較して決めることができなくなるそうで、感情脳はとても重要な役割を担っています。

あらゆる記憶は、その時に感じた感情と紐づけされてストックされます。したがって、理性脳を使った気づきや振り返りといった学びの作業には、感情脳がポジティブに関わらないと、記憶力やアウトプットなどの知的パフォーマンスに影響を及ぼすことになるようです。

ポジティブな感情脳とは、快適さや心地よさ(ムード)、希望、楽観、自己効用(Self-efficacy)のことで、逆に怒りや不安、不快感、脅威などのネガティブな感情が感情脳を支配すると理性脳がうまく働かず、状況認識能力や記憶力、知的パフォーマンスが正常に機能しない状態になってしまうそうです。

また、感情脳は、人間社会での暮らしや人間関係にとっても欠かせない部分になっています。

にも関わらず、実際は人がどのように「感情」を使って他者とやり取りしているかはあまり意識されていません。教育の現場においてもは、知識や思考の理性脳に関するものがほとんどで、感情脳に対する学びはあまりないと思います(道徳の授業なんかはそれになるのかな?)。

頭の良し悪しは、よくIQ(intelligence quotient=知能指数)の数値で表されますが、実は、IQの高さは人生やビジネスでの成功に対してはあまり関係がないと言われいます。

ではIQでなければ、何が人生やビジネスの世界の成功に重要な役割を担っているのでしょうか?

その問いかけに対して、生まれてきた言葉がEI(Emotional Intelligence)ですが、一般的には、IQとの対比でEQ(emotional quotient:心の知能指数)と言われています(EQは、EIを表す指標のことでEIそのものではありません。)

人生の成功(収入、仕事での地位、社会での功績、達成感、交流関係)に貢献しているのはIQが20%、IQ以外が80%という統計があるそうです。

このIQ以外の80%部分には、社会階層などの要因も含みますが、その中でも特にEQの高さが大きなウェートを占めているようです。

ではこのEQとはどのようなものでしょうか?

2.EQ:心の知能指数とは

EQ理論は、エール大学エールカレッジ学長を務めるピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士によって提唱されたものです。

彼らが着目したのは、心理学の立場から、ビジネス社会における成功の要因とは何かを探ることでした。

アメリカは能力主義の世界であり、その能力を測る指標のひとつとして有力視されているのが修士や学士といった学歴です。このため、学歴が高い、すなわちIQが高い人材がビジネスでも成功すると一般的に考えられてきました。

しかし、前述のようにIQが高くともビジネス社会で成功しない人はいくらでもいます。であれば、ビジネスにおける能力とはいったい何か。IQが一定の役割を果たしていることは間違いないだろうが、それ以外に成功のためには別の能力が必要なのではないかという疑問を抱きました。

両博士は、この仮説に立って、ビジネスパーソンを対象にした広範な調査研究を行ないました。その結果、明らかになったのが、「ビジネスで成功した人は、ほぼ例外なく対人関係能力に優れている」というものでした。

それは具体的には、ビジネス社会で成功した人は「自分の感情の状態を把握し、それを上手に管理調整するだけでなく、他者の感情の状態を知覚する能力にも長けている」というものです。

このため、クライアントなど社外との関係もうまく維持調整することができ、社内的にも多くの協力者を得ることができるため、結果的にハイ・パフォーマーとしての成果を生み出していました。

これらの研究結果から、両博士が提唱したのが「感情をうまく管理し、利用できることは、ひとつの能力である」というEQ理論でした。

3.EQの5つの因子

EQという概念を考案したピーター・サロベイ博士とジョン・メイヤー博士によると、EQの五大因子は以下の通りです。

①自分の感情を正確に知る ⇒ 自己認識
②自分の感情をコントロールできる ⇒ 自己統制
③楽観的にものごとを考える、もしくは自己を動機づける ⇒ 動機づけ
④相手の感情を知る ⇒ 共感
⑤社交能力、対人関係能力 ⇒ ソーシャル・スキル

画像1

4.EQの重要性

P.F.ドラッカーは、21世紀を「協業の時代」といい、EQを使いこなせない人材や組織が増加すると次のような問題が発生しやすいと説いています。

感情をコントロールすることがうまくできない
自分を励ます、鼓舞することがうまくできない
人間関係をうまく構築できない
人間関係の問題をうまく解決できない

これでは企業などの組織では仕事が思うように進まず、成果が出ません。プライベートでは、親族、パートナー、子供、近隣間などにおいて問題が生じてしまいます。

ダニエル・ゴールマンによると、EQ能力を発揮している人は次のような人です。

自分自身を動機づけ、挫折してもしぶとく頑張れる人
衝動をコントロールし、快楽を我慢できる人
自分の気分をうまく整え、感情の乱れに思考力を阻害されない人
他人に共感し、希望を維持できる人

これらは、ビジネス現場、教育現場、家庭でも共通するものです。問題を起こさず、着実に成果をあげるためには、感情に賢く、たとえ困難にあっても、笑顔で受入れ、取り組めることが重要です。

これができれば、周囲から敵視されることなく、人間関係を構築していけます。その結果、仕事は順調に進み、プライベートも充実し、人生を楽しみながら、歩める人となります。

5.EQ=人間力

「やる気に欠ける」「社内の人間関係が悪い」「対人関係が下手」「能力はあるのに成果が上がらない」などの問題は、EQを高めることによって、解決する可能性が高くなります。

チームワークとモチベーション(自分とメンバーのやる気)が高まり、行動力がアップし、成果に繋なげることができるようになるのです。

人は、自分以外の他者との関わり合いの中で生きて行くしかありませんが、その中で感情を上手くコントロールすることが、重要だということです。

では、このEQはどうしたら高めることができるのでしょうか?

この点については、次回の投稿で考えてみたいと思います。


出展:40歳からのMBA留学:オーストラリアでビジネスを学ぶ-Chapter52 心の知能指数 EQとリーダーシップ-

引用索引
Goleman, D (1996), Emotional intelligence: Why it can matter more than IQ, Bloomsbury London.



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?