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主夫が男性の家事育児について思うこと

2歳の息子と高学年の娘を育てるフリーライターの tagu と申します。自宅で仕事しながら家事育児を中心に担う新米主夫です。

男性の8割以上が企業で働く日本。なので、あまり馴染みのないタイプかもしれません。

働く場所こそ違いますが。ワーママ・兼業主婦と同じように、仕事と家事育児を両立する大変さを日々痛感しています。

と同時に、「男性の家事育児」について疑問を持つようになりました。

女性のほうが約4倍家事育児している

「男性の(家事)育児参加」が声高に叫ばれるようになり久しいです。

これのもとをたどってみると、2009年に改正された「育児・介護休業法」で、男性が育休を取得しやすくなったことが大きかったようです。

2010年には、厚生労働省が「イクメンプロジェクト」をスタート。男性が育児するムードをつくろうと、いろいろな取り組みが開始されました。

2022年には「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設され、子どもの出生直後から男性も育児に携わりやすくなり。

翌2023年には従業員1,000人を超える企業に「男性の育休取得率の公表(年1回)」が義務付けられ、男性の育児参加が企業イメージにも影響を与えるようになりました。

令和6年3月12日、男性の育児取得率の公表義務について、1,000人超の企業から300人超に拡大することが決まりました。

参照元 男性育休取得率、300人超企業に公表義務 法案閣議決定.日本経済新聞.2024-3-12

このような制度や取組の甲斐あってか、ここ数年で「男性の育児参加は当たり前」とされる雰囲気が社会全体に作られたように感じます。

ただ、そうは言っても、実態としてはまだまだ女性のほうが膨大な時間を家事育児に費やしているようです。

総務省の統計によれば、「6歳未満の子どもを持つ共働き世帯の家事関連時間」は、夫が1時間55分/日、妻が6時間33分/日となっています。

共働き世帯、夫・妻の家事関連時間の推移(※赤枠内)-週全体平均、6歳未満の子どもを持つ夫婦と子どもの世帯

総務省統計局|令和3年社会生活基本調査

その差は歴然で、男性に比べ女性のほうが約4倍家事育児している状況です

数年前に比べると、自転車で子どもを保育園まで送り届けたり、土日に公園で遊んだりする男性をよく見るようになりました。

一方で、平日夕方の公園で子どもと遊んでいるのはおおかた女性です。それから、小児科等の医療機関で子どもに付き添っているのも十中八九女性です。

また、保育園行事に揃って参加する夫婦をよく見ますが、小学校のPTA等になるとそこで活動しているのはやはり女性ばかりです。

「男性の育児参加は当たり前」とされる社会になってきましたが、日々のことはもちろん、肝心なところほど女性に負担が集中しているように思います。

子どもが生まれると女性は働ける時間が少なくなる

家事育児する時間が増えると、反比例するように働ける時間が少なくなります。

困ってしまうのは、それによりできる仕事の量が減ったり、責任ある仕事を受け持てなかったりすることです。

内閣府の報告では、日本は就業者に占める女性の割合が諸外国と大差ないのに、女性管理職の割合が10~30%ほど低い水準であるとされています。

諸外国の就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(令和3年)

※管理的職業従事者
就業者のうち、会社役員、課長職相当以上、管理的公務員等のこと。

参照元 内閣府|男女共同参画白書 令和4年版

日本の女性は出世意欲が低いのか?というと、決してそんなことはありません。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)の調査では、配偶者の家事育児・介護時間が長い女性ほど管理職への意向が高い、という結果を得ています。

【女性非管理職】配偶者の家事育児・介護時間(働いている日)別 現在の管理職への意向

出所:三菱UFJリサ ーチ&コンサルティング


要するに、日本の女性も、家事育児の負担が減りさえすればもっと仕事で挑戦したい、と考える傾向にあるのです。

また、キャリアに留まらず、働き方そのものも女性のほうが大きな影響を受けているようです。

先ほどの内閣府の報告をさらに見てみると、子どもが生まれたことで、男性正社員は「(働き方に)特に変化はない」の割合が圧倒的に多いのに対し、女性正社員は労働時間の短縮・仕事量の減少等、何らかの形で働き方が変化する割合が多くなっています。

末子の妊娠・出産前との仕事の変化

参照元 内閣府|男女共同参画白書 令和5年版

家族としてどのように生計を立てるか、家事育児を分担するかは家庭によりけりですが。

「誰かが子どもの面倒を見なければならない」となった時に、その負担をいつも決まって女性が背負う形になっていることにすごくもやっとします。

なぜ女性に負担が集中するのか

日本では、1960年代(高度経済成長期)以降、「男性は仕事」「女性は家事育児」という価値観が強まりました。

これは、当時は経済成長に伴い男性の雇用が安定し、妻が働かなくても豊かな生活を築く見通しが持てたからだと言います(内閣府|「共同参画」2013年 6月号)。

それから50年以上が経ち、男性も家事育児するよう価値観が変わってきたのに、なぜ相変わらず女性に負担が集中するのか。

というと、その要因としては「男性」や「女性」に対する『無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)』の影響が大きいようです。

【アンコンシャスバイアスとは】
私たちは、何かを見たり、聞いたり、感じたりしたときに、「無意識に“こうだ”と思い込むこと」があります。これを、アンコンシャスバイアスといいます。日本語では、「無意識の思い込み」などとも表現されています。

参照元 一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所|アンコンシャスバイアスとは?

令和3年度、内閣府が行った「性別に関する無意識の思い込み」の調査では、男女ともに約5割が『男性は仕事をして家計を支えるべき』と回答。

約3割が『育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきでない』と回答しています。

また、2~3割が『家事育児は女性がするべきだ』とも回答しています。

参照元 内閣府|令和3年度 性別による無意識の思い込み (アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究

このような思い込みは世代により変わってくるでしょうが、潜在的にはまだまだ社会に色濃く残っているのかもしれません。

例えば、企業には時短(短時間勤務制度)や残業(所定外労働)制限など、育児と仕事を両立するためのいろいろな制度がありますが、利用者の大半が女性です

育児のための所定労働時間の短縮措置等の各制度の利用状況別事業所割合(%)

参照元 厚生労働省|令和3年度雇用均等基本調査

女性も男性も、同じように働き、同じように権利を得ている。

にも関わらず、現状では、女性が中心となって家事育児を行うことが「暗黙の了解」になっているような気がしてなりません。

男性も家事育児する時間を作るよう工夫していくべきでは

ここ数年で家事育児に参加する男性が増えました。男性の育児休業取得率を見ても、令和4年には17.13%と年々増加しています。

育児休業取得率の推移(男性)

参照元 厚生労働省|令和4年度雇用均等基本調査

たしかに、早い段階で子育てに携わることができれば育児の理解が深まったり、負担が軽減できたり、得られるメリットが多いです。

その一方で、時短や就業形態変更など、男性側の働き方を根本的に変える話があまり出てこないことに違和感を感じます

内閣府が報告する「就業状態別割合」では、共働き世帯が増えたものの、その約4割は妻がパート勤務となっています。

夫婦と子どもから成る世帯の妻の就業状態別割合(妻の年齢階級別)

参照元 内閣府|男女共同参画白書 令和4年版

もしかすると、「できる限り家事育児に専念したい」と考える女性が多い可能性もありますが。

肌感覚としては、フルタイム以外の働き方を選択せざるを得なかった女性も少なくないように感じます。

例えば、子どもが小さいうちは女性がフルタイムで働き、男性が時短勤務するとか。女性の職場復帰に合わせて、男性が残業の少ない職場に転職するなど。

「男性の(家事)育児参加」というなら、共働きの女性がそうしているように、男性も家事育児する時間を作るよう工夫していくべきではないでしょうか





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