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おやおや、これはどうしたものかと思って、自然と足が止まった。目をこすって再確認したが、それは間違いなくそこにあった。 表紙ではメガネっ娘がチラリズムを炸裂させている。なんてハレンチで健康的で文化的なのだろう。異質の融合に心をそわそわさせられてしまった自分が憎い。死んでしまえ。 世の中には見過ごせない問題が山ほどある。それらに手をさしのべる人間なんてごくわずかで、みんな自分のことで精一杯だったりする。僕は今、試されているのだ。 さりげなくハンカチを
25時13分。 原稿の締め切りに追われ、パソコンにかじりついている。深夜の薄暗い室内にはカタカタとキーボードをたたきつける音だけが響いていた。 「もうひとふんばりだ・・」 椅子に座ったまま、両腕を高く上げて上半身をぐーっと伸ばすと、自然とあくびが出た。毎度のことながら、納期が近づくと極端に睡眠時間が減る。ギリギリまで本腰になれない私の悪い癖だ。 ・・・遠くの方から、それは微かに聞こえた。 救急車のサイレン音。その音はいつだって何の前
足が鉛筆なら、打ち寄せる波は消しゴムだ。小さな足跡も、砂浜に描いたパパとママの相合い傘も一瞬で消えてしまう。 陽向(ひなた)は砂浜で遊ぶのが好きだった。さらさらの砂の上に足の指先で絵を描いたり、名前の知らない色とりどりの貝殻を拾い集めたり、暖かい季節には泳いだり・・・。住んでいる家が海のすぐそばだったから、遠浅の砂浜は陽向にとって一番の遊び場だったのだ。 海岸線は弓のように緩やかに弧を描いている。学校の視力検査のマークみたいな形だ。砂浜の端から端まで歩い