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たぎ筆外伝【JEEP】長渕剛 考察


なぜか最近このアルバムの収録曲がよく頭に流れる。
フォーク好きの兄とよく会っているからだろうか。
リール動画に長渕剛氏のそれが頻繁に流れて来るからだろうか。
ふと口ずさむような歌、そういうものが心にあればたいていのことは大丈夫、という思想の下に生きてはいるが、私自身聴くものは洋楽やインスト曲がほとんどなので、最近それに該当する類のものは摂取できていない。
タイトル曲の【JEEP】が頭に流れたことで試しに全編歌ってみたら思いの外自分の現状と重なりなんとなくワクワクした。
ちょうど先日アルバムを締めくくる名曲【Myself】に触れる機会があったので、このアルバムを掘り返すことにした。
昔で言えば山積みになったCDラックからまさに掘り返す塩梅だったが、今はサブスク(長渕氏の音源はわりとサブスクで聴ける)で簡単に検索ができる。
普段聴きたくなったアルバムはわざわざレコードで買い求めて聴くがこちらはCDしか存在していなさそう。
レコードで再販されたら飛びついて購入するのではないかと思うが、このアルバムはCDでも良いからディスクで聴きたいと思う。そこには私のノスタルジックな感情が渦巻いていると思われる。

一曲目から歌ってみることにした。
思い立った時はサブスクもCDも聴ける環境ではなかったので空で歌う。
たぶん全曲歌詞暗記してるのじゃないか?と思ったからそれを自らテストする気持ちもあった。

1.女よ、GOMEN
アルバム一曲目に最適なノリの良いナンバー。
「100年経っても1000年経ってもおいらお前に謝りっぱなしさ」
まるで黒人のブルースの歌詞のようなありがちな歌詞かと思いきや、
「バカがつくほど正直に街の空を仰いだら
すれ違う友は俺の前から遠ざかっていった
夢と暮らしのゴッタ返しのざわめきの真ん中で
俺にはやっぱりお前しかいなかった」
など男の痛みも出てくる。
最後はちゃんと「お前しかいなかった」で締めくくってある。

2.流れもの
今回聴き直して惚れ直した一番の曲
まず、このひとは【東京】について歌うことが多い。このアルバムもほぼほぼ東京を舞台に歌っているように聴こえるし、ヒットした【とんぼ】や【しゃぼん玉】も東京が舞台となっている。
「煮詰まった一日を下手くそなカラオケですすり泣くように歌われるのはごめんだ」
このアルバムを聴いて歌っていた小学生の頃は意味がわからなかったが、このフレーズ今となればニヤリとなる。
「剛、俺もそう思うよw」と自転車漕ぎながら思った。

3.友だちがいなくなっちゃった
私のような人生を歩んでいるニンゲンはよくこの場面に遭遇する。
そして昔から知るこの状況に怯えていたりもする。
この曲の語り部もおそらくそうなのだろう。ある種開き直りのような心情がうかがえる。
そしてそれをレゲエ調に乗せるアレンジ。
より淋しさは増し、無理に明るく振る舞う男一匹が見えてくる。

4.電信柱にひっかけた夢
若い頃はこの曲がめちゃくちゃ好きでした。
今でももちろん好きだけど、やはり夢追い人はこの場面に何度も遭遇するよね。
「未練たらたらひっかけた夢」って凄いな。
しかも東中野の駅前で、電信柱に。
近々東中野行くしw
何度も泣きながら聴いた曲です。
『ヤツ』に電話する場面が最高。
この歌詞を書けるのが長渕剛氏である。

5.海
アルバム中、唯一歌詞をフル暗記してない曲でした。
てかサビくらいしか覚えてなかった。
おそらく子どもの頃からアルバム聴く時飛ばしてたんだと思います😅
いやーアルバム作る時ってこういう曲を一曲は入れたくなるものなんだと思います。
もちろん嫌いな曲じゃないし、街中の有線なんかで聴こえてきたら「お!」って思うと思うのですが。
なんとなく掴みどころのない曲ですね。いや、個人的感想です。

6.カラス
まさに『東京』のことを歌っているような。
「イラつく夜に飲んだくれ いっせいにねぐらへ戻る時 俺はただひとりで空を見上げた」
なんで『いっせいに』なのかずっと不思議だったが今日やっとわかった気がした。
もちろんカラスに例えている部分もあると思うけど『東京』を見事に表現してるような。
境遇は違えど同じような気持ちを抱えてひとり飲んでいる東京人たちがまさに『いっせいに』帰路に着く。
正解はわかりませんが、私のイメージする東京という街はそういうものなんです。

7.お家へかえろう
一度だけ観に行った大阪城ホールでのライブ、
その時に(ちょうどフォークソングが流行り出している頃だった)、「今巷じゃフォークだなんだって流行ってるみたいだけど、これぞフォークソングって曲を今から歌います」というようなことをMCで言ってこの曲が始まった。
僕はMCでこの曲だとわかったし、なぜか「ざまあみろ」と僕も思ったのでしたw

8.しょっぱい三日月の夜
これは歌うの難しそうな曲ですねー。
「当たり前の男に会いたくて しかめっ面したしょっぱい三日月の夜」
アルバム収録曲どれもそうなんですが、キラーフレーズがボコボコ出てくる。その表現思いついたらすでに優勝だな、と思わせるフレーズ。
めちゃくちゃ調子良かった時期なんでしょうね。
面白いくらい上手く行ってたんじゃないかなぁ。
12枚目のアルバムでまだ枯渇しないのってすごいな。

9.浦安の黒ちゃん
これは聞いたところによると実話だそうですね。
まあ脚色はされてるんでしょうけど。
とあるアーティストが言った言葉を僕はとても大切にしてるんですが。
『歌詞は思想ではない。経験だ』
思想を詰めると野暮になるんですよ。
長渕剛氏は経験を歌にするのがとても上手い。
この曲も次の曲も、あとアルバムは違えど【東京青春朝焼物語】とか。
ホントにあったことか嘘っぱちなのか、そんなことはどうでも良くて。経験を歌詞にしたものが素晴らしい。
行間を読ませるってやつですね。
「とんがったまんまのクロちゃんの背中が大阪の街で小さく見えた」
しかも最後あの絶妙なメロディで。。。
こういう歌詞を書けるように僕も日々精進しております。

10.西新宿の親父の唄
この曲はシングルカットされてないはずなのに、多くの人が知ってる曲ですよね。
実話なのかなー?架空の話なのかなー?
昔インタビューで語っておられた気もするけど。。。忘れたなぁ。
9.からの続きで言えば。経験を語るのはね、もしかしたら難しいことじゃないかもしれない。ただ歌にはAメロとかサビとかあるわけで、ずーっと日記を語るわけにゃいかんのでね。
サビで当然強い言葉を持ってこなくちゃならない。
繰り返しても廃れない強い言葉。
この曲はそれを大成功している例でしょうね。
しかも自分の言葉ではなく、西新宿の親父の言葉ですからね。

11.JEEP
アルバムタイトル曲。
代表曲だから、というより確かにこのアルバムのタイトルはJEEPだと思う。
この歌詞の語り部が見てきた風景がアルバムに封じ込まれている。
正直なんでもない歌詞だと思う。
よく例えるのがRCサクセションの【トランジスタラジオ】もそうなんですが、なんてことない歌詞。
それが美しいのって最強だと思うんですよ。
僕なんてなんてことない歌詞を狙って、、、やっぱりなんてことないですからねw
繰り返し聴きたくなる、歌いたくなる唄って、つまりそういうものなんだと思うのです。
「重すぎると飛ばない」僕は歌に関してそう思ってます。
長渕剛氏の歌をそういう類のものだと思ってる人というのは勘違いです。ちゃんと聴いてないひと。基本的には風景を歌うひとなのです。
しかも少し淋しい風景を描くアーティストです。もちろんキャリアが長いので全部が全部そうではないでしょうが。
答え出すのが歌ではないと思うんですよね。
答えなんてなくていい。
「わからないなぁ」で終わっていいと思うんです。経験ですから。
この曲の語り部はひとりJEEP走らせて海を見に行って、なんか少し気分が晴れます。
歌ってそういうことでいいと思うのです。

12.Myself
締めくくりが名曲マイセルフ。
たぶんですけど全員が経験してる気持ちじゃないでしょうか?
サビは自分に向かって歌ってます。自分のことを「お前」と呼んでいます。
そう思って聴くとこの曲はホントに素晴らしい。
そういう曲が心に灯っていればきっと強いですね。

僕にとってこのアルバムは心象風景みたいな。
小学生で初めて聴いて、時々また思い出すようにまた聴いて刷り込んだアルバムですから。
結局歌詞は【海】以外は丸暗記でした。
自分の曲の歌詞も覚えられないのに😅

兄の部屋にこのアルバムのポスターが貼ってあって、ケンカした時に破いてやったことをいつもセットで思い出しますw
もちろん返り討ちにされましたが🤣
今回は歌詞ばかりを取り上げて書きましたが、たとえば【カラス】。
今聴き直すと冒頭テレキャス一本で歌ってるんですね。すぐピアノが追いかけてくるけど。
東京の空をカラスが舞う姿。
そりゃテレキャスですよね。ギャイ〜ン!ってテレキャスで間違いない。
そこに絡む淋しすぎるブルースハープ。
言葉なくとも東京を表現してますね。

このレコーディング楽しかっただろうなーって思うんですよ。全部うまく行ってる。
オリコンもチャート1位とか。
Wikipedia調べですが。
てか製作中に「これは一位だな」って確信あったと思うんですよね。
ホントによくできたアルバム。
次作の【JAPAN】も最高です。JAPANはすこ〜しJEEPより重いかもなぁ、テーマが。
まあJAPANについて書くつもりは今のところないですが、まあそれもわかりませんなwww

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