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淡々と。

小津安二郎が好きだったりする。
日本の古い映画監督である。
いわゆる【何も起きないストーリー】
そういう日常を切り取ったような作品がとても好きなのである。
戦後の日本を生き生きと丁寧に描き出している。
今となんら変わることのない日本人像もあれば、ずいぶんと変わってしまった部分もあったりする。
小津監督は「今の時代の日本を記録に残しておこう」と考えて録ったわけではないと思うのだけど、それを疑うかのような作品集である。

つい最近【秋刀魚の味】という作品を観ていた。
当時の作品らしく淡々と台詞が語られる。
もしかしたら、映画ではないリアルの世界でも、そういう台詞回しだったのではないかと考えたり。
淡々と語られるまま、それが悪い冗談である、という場面がある。
まるで小津安二郎監督が現代のニンゲンにその時代の淡々を武器にしてかざしているようにさえ思えた。

他の人のことはわからないけど、飽きないのだ。
何も起きないし、淡々としてるのに、飽きないのだ。
とても演技が生き生きとしてるからなのだと思う。
考えてみると現実というものは毎度そこまでドラマチックではないし、普段の生活というのは淡々と何も起きず、且つ生き生きとしているものなのかも知れない。

今ではちょっとありえない演技というのもある。
それは現実にも存在せず、映画上の演出なのだと思う。
(自分用のメモとして残しておくと、岩下志麻氏がゆっくり振り向いたり、ゆっくり頷いたりする場面)
これは監督の指示なのだと思う。
映画というのは監督の作品であり、役者はその監督の演出に従うのが一番きれいな関係性だと思う。
監督が求めた演技を役者がどこまで応えられるか、が作品の正解だと思う。

何も言わない演技。
表情だけで見せる。
後半の笠智衆氏の演技は底知れぬ迫力があった。
あの顔、誰にでもはできないよな。

ちょうどその映画を観終わって次の日。
聞いていたラジオで映画紹介のコーナーがあった。
紹介されていた映画は公開中の作品。
【PERFECT DAYS】
ドイツのヴィム•ヴェンダースという監督の作品なのだという。
主演は名優、役所広司氏
日本を舞台とした映画。

その映画紹介を私は「小津安二郎作品みたいだな」と思いながら聞いていた。
それもそのはずでこのヴェンダース監督というのは小津安二郎監督の大ファンなのだというのだ。
これは絶対観たいと思った。

このたぎ筆は書き溜めしてあるのでこれが公開される頃には観たあとかも知れない。
久々にドキドキするくらい観たい映画だ。

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