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2021 J2リーグ第24節 ツエーゲン金沢 VS V・ファーレン長崎 ゴールまでの距離は遠い

 コーチングは大事。ピッチ内で選手を動かせるようにできれば、もっと味方を助けられるじゃないか。前半はいつものことだけど、最終ラインがずっと後ろにいるので前線がボールを奪いにいったときにスペースができてそこを使われている。そこはやれるようにしてほしい。
庄司(朋乃也)も久しぶりのゲームだった。本当は90分やらせるつもりはなかったが、いろいろなことが起こったのでやらせた。フィジカル的な心配があったのでアップダウンできなかったのか。(稲葉)楽はまだまだ学ぶところがたくさんある。攻撃はここにスペースができるよということをやった。みんなに共通意識を持たせたつもりだったけど、なかなか出せなかった。その1回はビッグチャンスになりかけた。コントロールミスでチャンスにならなかったが。もう少し狙いがお互いに合えばチャンスができる。
クロスの精度はずっと言っているけど、トレーニングして上げていかないと得点にはならない。まだまだやることはたくさんあるけど、勝点を取れるように戦う準備をしていく。
--前半は前への選択肢が少ないように思えたが?
選択肢はあるけど、ここにたくさんスペースができるよと。なんでやらないのかなと思う。1回(松田)陸からセヌ(瀬沼 優司)に出したボール、あれはフリー。あそこにスペースはできるよとピッチでもミーティングでも言っていた。(金沢・柳下監督試合後コメント Jリーグ公式HPより抜粋)

前回の磐田戦やこの試合を見ていて、結局前半戦と変わっていないという事がわかった。と、いうか再確認出来たと言ったほうが正しいだろうか。5シーズン見てきた金沢は「やり方を変える」という事は基本的に無い。磐田のような特別な相手に対しては手を変える事もあるが、「いかに今までやってきた事の精度を上げるか」という事が一番であり、上のコメントを見てもお分かりだろう。

しかし、このコメントと同じような事は今シーズン何度も耳にしてきた。もっと言えば昨シーズンも、一昨シーズンも。

コメントに裏打ちされた詰めの甘さ

ここにたくさんスペースができるよと。なんでやらないのかなと思う。1回(松田)陸からセヌ(瀬沼 優司)に出したボール、あれはフリー。あそこにスペースはできるよとピッチでもミーティングでも言っていた。

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38分40秒。ヤンツーさんが言っていたシーンである。「ここにスペースができるよ」というのは赤い波線で示したSB-CB間だという意味であると僕は捉えている。このシーンはヤンツーさんが少し前でコメントしているように

その1回はビッグチャンスになりかけた。コントロールミスでチャンスにならなかったが。もう少し狙いがお互いに合えばチャンスができる。

という通り、瀬沼くんが大きくトラップしてしまった為にシュートに持ち込む事が出来なかった。

というヤンツーさんの考えがそもそも間違いだと僕は思っている。

このシーンで瀬沼くんがボールにタッチするのはPAの少し手前。コントロールミスしてゴール右側に移動していったとしても、それで攻撃が終わりではない。しかし、このヤンツーさんの攻撃の考え方では攻撃はこれで終わりなのだ。

だから、瀬沼くんが上手くトラップしてシュートをしないと奪われて相手ボールになり反撃される。

さらに深い攻撃への指示を

ファイナルサードの攻撃の形を提示できていない事が大きな問題なのだ。実際崩して得点出来たのは、直近だと6月13日の愛媛戦くらいまでさかのぼらないといけない。

ファイナルサードでの崩しが出来ないから、その前の攻撃の形で勝負しているという見方も出来るが、そこを突き詰めていないところが攻撃に厚みが無い原因である。

この38分40秒の攻撃は瀬沼くんがコントロールミスをしてボールがゴール右へと流れる。

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その時の配置がこれ。しかし実際は松田・大石が来たのは瀬沼・丹羽・嶋田の攻撃がどうしようも無くなってからだ。要するにスペースにクロスを上げる時点で、仕事は終わっており攻撃が続かない。

それはそうだろう。そこまでしか教わっていないのだとしたら。あとは個々の能力の問題なのだ。

教えているのに出来ないから仕方ない。そう思っているだけで、実際選手にそこから先の攻撃を丸投げしているのに気がついていない。これは相当重症だ。

ちなみに8分45秒、19分40秒、41分51秒は右の松田くんから、44分27秒は左の渡邊くんから同様のクロスが放たれているがいずれも成功せず相手ボールになってしまっている。

そのクロスを放つタイミングを見ると、決してスペースが空いていないにも関わらずボールを出している。

僕は先ほど言った通りSB-CB間が空くと捉えているのだが、そう見て取れない場面も上記に挙げた場面のいくつかにはある。

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これは先ほどの38分40秒の図だが、囮(おとり)となる丹羽・嶋田が斜めに走って敵ディフェンスを外に誘導してこそ初めてSB-CB間が空いてスペースが出来る。

41分51秒などは前線の動き出しが不十分なのにクロスを出してしまい、簡単に相手に落下地点に入られ奪われる。

他の8分45秒、19分40秒、44分27秒のシーンも同じ。チャンスが少ないにも関わらず、動きの統一やスペース自体の意識も統一されていない。言葉・場所・動き、それぞれにチーム内統一が無いと、どの場所にどの動きでボールを貰うのか、どうやってボールを出すのか、囮の動き方をどうするのかがあやふやになる。

複数得点が出来ない原因は「○○選手の動きが悪い」とか「覇気が無い」とかの前に

「あいまいな表現」でポイントを教えられる事によって生じる「迷い」

と言っても言い過ぎでは無い。さらに言えば前節の瀬沼くんのゴラッソや、琉球戦終了間際の大石くんのゴールなど、チームの連携とあまり関係の無いところでのゴールが多いのは、選手個々が頑張っている証拠といえる。

末期症状を回復させる荒療治

かつて岡田ジャパンがワールドカップ前に選手だけでミーティングをした時のように、選手が集まって個々の意見を話し合う事があっても良いのかもしれない。これからも選手のプレーの精度やテクニックのせいにしてしまうのは変わらないだろう。それで終わってしまったらあまりにも選手の努力が報われない。

選手の頑張りでなんとか勝てた時も同じ。やっぱりヤンツーさんを信じて良かった、となって今までの事はリセット。選手の頑張りはどこへやらだ。

サイド攻めにも同じ現象が

40分16秒のシーンは左サイドで渡邊くんから大石くんにボールが渡りクロスを上げるシーン。

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図でいう上から2つ目のレーン「ハーフスペース」ががっつりと空いている(PA内の)が、ここは以前から全く使われないスペース。渡邊くんもボールを出してハーフスペースに入る事も無いし、藤村くんが攻め上がるわけでもない。

ここでも前にボールを出した時点で前の選手に攻撃を任せてしまっている。場面が変わっても根本的な問題は変わらない。

中は5対3で数的不利。大石くんはクロスを上げるしかなく、簡単に跳ね返される。

中は5対3で大石くんには2人ボールを奪いに来ている訳だから、後方は3対6で圧倒的に人数が余っているはずである。

良いシーンも

15分24秒に庄司→嶋田→松田→瀬沼→丹羽→松田とショートパスで繋いで低空クロスを打つが跳ね返えされる。千葉戦の前半で見せたようなワンタッチでのパスほどキレイではなかったが、あんなパスを繋げられる連携があるのなら他の場面でも問題無さそうなのに、と思ってしまうグッドプレー。

後半はエジカルさん以外は、ほぼファイナルサードでディフェンスをする長崎の対応もあり攻撃のシーンが増えた金沢。右サイドを松田ー藤村ー嶋田で崩しにかかる47分26秒のシーンや、同じく右サイドを松田ー藤村ー大谷で深くえぐる狙いの74分58秒のシーンや、左サイドも金子くんがPA脇を狙う場面、カットインシュートも見られ各々が持ち味を出した。

もっとも惜しかったのは63分48秒のコンドゥクシオン庄司→金子のピンポイントクロスからの一連の攻撃。一度はボールを奪われるが、力安くんがサイドに追ってボールを奪い返したり、松田くんがハーフスペースから左足でフリーの丹羽くんを見つけてクロスを出し、丹羽くんが左足でシュートする。

必要なのは選手を当てはめるのではなく、選手の特徴を生かす事

練習で用意したプレーの精度を上げる事も必要かもしれないが、選手の頑張り・ひらめきも当然だが良いものが沢山ある。毎試合でこれらのプレーが再現性を持って出来ている訳では無いので、今後どうやって個々の特徴を生かすのかを考える事が必要だと思う。

今は監督が思う選手をポジションに配置しているに過ぎない。それでも勝てるのはビエルサくらいストイックな監督のみだ。このままではゴールまでの距離は縮まらない。

結果

ハイライト

おまけ

サムネを何故ジョー・ゴメスにしたかというと、瀬沼くんがあまり見ない顎ひげを生やしていたからだ。おしゃれなのか何かのゲン担ぎなのか。伸びきったらジョー・ゴメスみたいになりそうなひげなので、その時はセヌ・ゴメスと呼びたいと思う。目が離せない男だ(笑)




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