2020へ繋がったのか? J2リーグ最終節 VS大宮アルディージャ(2019.11.24)前編【ツエーゲン金沢が強くなる為の分析】
上がる保障は無い
おまっとさんでした(愛川欣也風)ツエロスの全国三千万人の皆さん。今回は「なるほど・ザ・ワールド秋の特大スペシャル」のごとく前編・後編に分けてなんと4時間の拡大スペシャルでお送りします(しません、前編・後編は本当)
と、いう訳でとうとうシーズンも最後まで来た。クラブの歴史の中で最高の成績。最高の平均観客動員数。ここまで来るのにたくさんの人が関わり、辛い思いをしたという方も多いだろう。北陸という日本の裏側とも揶揄される地方の弱小クラブが北信越1部からJ2というカテゴリーまで上がってきた。最終節とはいえ8000人を超える観客を集められるようになったのは凄いと思う。石川県の非日常を味わうエンターテイメントで定期開催をしてここまで出来るモノは他に無いだろう。バックスタンドはさほどでもなかったがホームメインスタンドはほぼ埋め尽くされ、溢れる赤・赤・赤。かつては味わう事が出来なかった非日常が日常的になりつつある。
だからどうした。そんな気持ちも一方ではある。下を見ればさぞかし満足だろう。勝ち点61の11位。しかし、我らが目指すは遥か上。トップハーフに入ったとはいえ自動昇格とは18点差、6勝の差である。15勝16分11敗の我々にとってそれはとてつもなく大きい差。特に昨今のJ2は混沌としていてほんの少しの差の積み重ねが大きい貯金となっていく。金沢はことごとくその貯金が出来なかった。着実に歩みを続けてきたからといって来年またそれを超えられる保証は一つも無い。足を踏み外したらすぐに下のカテゴリーが待っている。
終わり良ければ全て良しだとすれば2019シーズンはそれでいいのかもしれない。けれど僕は嘘はつけない。今回の結果は1-1のドロー。相手は確かに強かった。しかしドローを勝ちに出来ない理由がこの試合にはたくさんあった。来年には全てリセットされる?現実に直面してそれを乗り越えなければJ1には行けない。
このままでは裏日本の地方クラブのままJ2以下のカテゴリーを彷徨うだろう。金沢の良さを持ったまま上へと昇る為に、足りないモノをはっきりさせよう。
スタメンからの考察
金沢の変更は1点。廣井くんに替わって出場停止明けの山本義道くんが復帰。この「消化試合」と言われても仕方ない状況下でもベストメンバーで試合に臨む柳下監督(以下ヤナ将)の狙いは積み上げてきたモノの確認と更なる進歩だと思う。
ベンチ入りは後藤・廣井・大石・梅鉢・杉浦・高安・清原。高安くんは横浜FC戦以来2度目のベンチ入り。島津・窪田・小松を向こうに回してベンチ入り出来た事の意味は大きい。(ジオ、一足お先にサヨウナラ)
一方の大宮は2点の変更。酒井→渡部とファンマ→シモヴィッチ。義道&石尾のハイタワ―コンビにも確実に勝てるシモヴィッチをスタメンに起用した高木監督。酒井弟くんは練習中に負傷したとの事。ベンチ入りは塩田・畑尾・大山・バブンスキー・富山・大前・ファンマ。ファンマorシモヴィッチがサブにいる事がどんだけ羨ましい事か・・・我が軍は外国人ガチャガチャに弱いのでもうガチャしないで欲しい(苦笑)
ちなみにプレビューはこちら。新たな試みとしてスマホで試合前に観客席でもサクサクと見られるようにしました。
ポジション用語解説図
今回からこのタギリストのnoteでのポジション表記をわかりやすくする為に以下の表記を使用します
のっけからフルスロットル
最初の15秒で二度CFシモヴィッチさん(以下シモさん)へのロングボールを放つ大宮。自動昇格するには3点差以上の勝ちが必要(横浜FCが引き分けた場合)で、いつものリーグ戦のようにただ勝つ事を考えるのとは違う試合。早く点を獲りたい気持ちがうかがえた。
大宮は金沢のボール保持時は金沢のように前線から強くプレッシャーを掛けてきた。最初から落ち着く局面があまり無くトランジション(攻⇔守の切り替わりの局面)の攻防で開始10分で両軍合わせて3度のコーナーキック。(それだけゴール前にボールを運べているという事)観る側もやる側もハラハラする展開だ。
最初にペースを握ったのは金沢。2:34頃に自陣右サイドから金沢SB小島くんが金沢ST山根くん(以下永遠くん)へロングパス。シュートまでは持って行けなかったがナイスパスで大宮PAに進入。また3:44には中盤でのボールの奪い合いを制した金沢CF垣田くんから金沢CH大橋くん、さらには永遠くんに渡りミドルシュート。前がかりになっている大宮は第2プレッシャーラインと最終ラインの間が空いていて金沢は積極的にそこを使っていく。
5:06には金沢左サイドから展開し金沢CH藤村くんから垣田くんへクロス。ニアを狙うがボールは枠に入らない。
対する大宮はシモさんにボールを当てセカンドボール狙いに出るが
高さではシモさんに勝てないのでその後の処理に重点を置いた対応。もちろん金沢CB山本義道くんがガッツリ競っていた。(あんまりボール取れないですけどね)
先制は大宮、余裕すら見え
しかしこの時もだが、金沢から見て左サイドの大宮WBイッペイさんをやや気にしてそちら側はしっかり対応しているが右サイドのケアが弱かった金沢。失点シーンはそこを狙われた。
クロスをダイレクトにシモさんにパスしようとしていた大宮右WB渡部くん。思い切り良く蹴ったボールは金沢SB小島くんの右肩に当たりゴールへ。
ボールが大宮CH石川くんに渡った時チラッとだけ渡部くんを確認した小島くんだったが、少し意識が左サイドに行き過ぎていた。
先制逃げ切りが大の得意の大宮。早い時間で点が入ってまさに理想的。
前半の大宮の狙い
その後ようやく後方からのビルドアップの形が見えた大宮
こうしておくと中盤でボールを奪われずに済みますし、ボールをファイナルサードに持って行く事で金沢の選手全体を押し込みカウンターの威力を弱める事ができます。実際17:12の金沢のカウンターでは人数を掛けられず永遠くんのパスに垣田くんが間に合いません。
18:00のシーンでは大宮右サイド奥深くに流れたボールを大宮OMF茨田くんがキープし大宮右WBイッペイさんへ。そこからシモさんへクロス。
シモさんが収めて蹴ったボールはゴールバーに跳ね返りましたが、その前に収めた時にハンドがありピンチは逃れました。
それからは大宮右サイドと金沢左サイドがストロングポイントのはずがイッペイさん対加藤くんの譲れない戦いが繰り広げられ、ボールの行方は逆サイド側に。
前半のヒートマップを見てもその傾向は明らかだった。(データ参照:Football LAB)
大宮の前半ボール非保持の形は下図のように5-2-2-1で構え、点を獲ってからは前線から積極的にプレッシャーには行きませんでした。金沢2CBに対して大宮は1CF2シャドーで数的不利になるので主に金沢CH大橋くんが降りてパスを受け左右のSBにボールを渡し、ボールが前進したら大橋くんも一段上がります。
第一プレッシャーラインを越えたら積極的にボールホルダーにプレッシャーを掛ける大宮ディフェンス。陣形を整えた相手になかなか崩す術を持たない金沢。5バックとくれば特に。
20:14には金沢SB小島くんから金沢SH金子くんへのパス。惜しくもカットされるがコーナーキックを得たし、22:10くらいには右サイドでの金子⇔永遠のワンツーが見られた。
しかし大宮のPA内に入って決定機を作れない金沢に対し大宮には余裕すら感じられた。それは先制点のせい。それが良かったのか悪かったのか分からないが、いつでも決められる、いつか決められてしまうのでは、という感じでジリジリと金沢陣内に迫ってくる。
27:00ごろからの大宮の波状攻撃は決定的な所にまでは持ち込まれないながらもセカンドボールをことごとく拾われ自陣に押し込まれてしまう金沢。
前節から学んでいない
そこから金沢CH藤村のミドル、金沢SH加藤のグラウンダーのシュートなどはあったが前半の終わりにかけては大宮の猛攻に耐える羽目に。その変わり目はここだったのでは。
35:45からミドルサード右サイドでボールをもらう小島くん。金子くんが前に貰いにきてパスを出す。
この後、小島くんにボールが戻され藤村くんへパス。必要以上に前へ出た藤村くんのクロスはカットされ
ここまでならまだ良かったのだが
元々左サイドよりも緩いマークの受け渡しになっていた右サイド
さほど守備の意識の無い金子くんが渡部くんのドフリーに気がつくはずも無く
ここでも対応するのは大橋・藤村コンビ
ボールを奪ってからもまだそこにいる。藤村の予防的カバーリングに行こうともしないのだ。
後ろを向いてもいるはずの小島くんがいない。かと言って他のカバーリングの意識の無さもどうかと思いますが・・・もちろんボールは失いました。
このシーンがきっかけかどうかは分かりませんが、一番悪かった小島くんが前半終了でOUT。めっちゃ怒られてたみたいですが・・・。(でも小島くんだけでもないわ、これ)
リズムを自ら失った金沢は39:21大ピンチに
大宮OMF奥抜くんへのパスをカットしようとした大橋くんが振り切られ
この後、藤村くんも躱され石川くん→シモさんとボールが渡りフリーでシュートを打たれます。
(もう右サイドが酷いので本文中で触れたくもない・・・)
その後大宮のコーナーキックが続き、集中が切れてきたのかボールキープの鬼・藤村くんがボールを奪われ、パスコースの開拓者・大橋くんがパスミスする異常事態に
そして44:18石川くんのシュートは
という訳で、0-3くらいでも全然おかしく無いところを0-1で奇跡的に終了した前半。
ってな具合だよね・・・
前半終了スタッツから考察
文中ではあえてあまり触れなかったが金沢のシュートは5/8がミドル。ファイナルサードまでは持ち込むも決定的な場面はほぼ無し。対する大宮はチャンスは多かったがアンラッキーな面と2シャドーの茨田・奥抜が抑えこまれていたのが大きかったと思われます。だが支配率・点差以上に実力の差があると感じた前半。
スーパーノヴァ、フライングゲット
金沢は右サイドに現役興國高校生のSB高安くんがデビュー。
大宮は渡部くんとイッペイさんが位置替え。ということでいきなりJ1級の選手とのマッチアップとなった高安くんだが素晴らしい動きを見せる。
後半は一転、大宮のボール非保持時は5-?の可変ブロックを行ってきた。最終ラインは3CBと2WBで普通に組むが、その前のラインは石川・三門に状況に応じて奥抜が入ったり茨田が入ったりという形。あまり前がかりになって失点する事を後半の入りは防ぎたかったのだろう。2ライン間に金沢の選手が入ると捕まえに行き、前に出ていくと大宮CH石川がそこを穴埋めに行く。
高安くんのサッカーIQと判断力が高いと思わされるのはこの後だ。
今までのサイドからのクロスは垣田くんや永遠くんという標的に狙いを定めるクロスが主だった。しかし高安くんのクロスは「良いところに出すから飛び込めよ」という天才肌の相手を呼び込むクロス。しかも一瞬の判断。これがプロ入り初のボールタッチ。もしかしてこれはスーパーノヴァ(超新星)の誕生なのではないでしょうか。
さらに56:08のところではPAラインギリギリのところでイッペイさんを削りに行くスライディングを見せ度胸を発揮。
58:40のクロスも素晴らしかった。
完全に枠を捉えていた永遠くんのダイビングヘッドは笠原くんがさすがのスーパーセーブ。交代してわずか数分で違いを見せた高安くん。高校・大学の内定者が多いツエーゲン。来年のスターをフライングゲットした気持ちです。
大明神、休暇前のひと頑張り
金沢のゴール前への侵攻によって、同時進行の横浜FCが勝っているのを知ってか知らずか、後半開始5分くらいから大宮は前に出るリスクを承知で攻めに出る。前半より下がってボールを受けるようになったシモさん。
しかし、これが直接シュートに結びつくというより跳ね返ったボールを二次攻撃に移されピンチを招いた我が軍。51:30の大宮CH三門くんの強烈ミドルや57:08の大宮WBイッペイさんの弾丸ミドルなども最終節後に出雲の国に休暇に行くであろう白井大明神様がボールを弾き出しあそばされ追加点をお許しになられませんでしたとさ。
思いを乗せて繋がるボール
大宮の10番・ST大前くんが満を持して登場。その後SHバブンスキー(以下バブちゃん)も投入し4-4-2に変更しよりサイドの厚みを持たせる大宮。金沢は今シーズン出番の少なかったミスターツエーゲン清原くんを送り出す。前日に契約満了の発表がクラブからあったばかり。両サポーターのチャント合戦もボルテージ最高潮。
どちらも同じ陣形ということで机上は
こうなる。やはり普段4-4-2で守り慣れている金沢は疲れは見えたものの自分達の距離感で試合が出来ていい方向に働いた。今までシモさんと2シャドーの対応に追われていた金沢CB義道くん。前が空いて最初に放った縦パスが僕らの思いを乗せてキヨまで繋がっていく。
永遠くんがその縦パスをスルーした動きで前にいた三門くんを剥がす。パスを受けた垣田くんがすぐ永遠くんへ。若干、形は違うが丁度レイオフのようになり永遠くんがドリブル、垣田くんは先ほどボールを奪いにスライディングにきた大宮CB河本くんより先に起きて走る。左に垣田くん右にキヨと共にゴール前へ、相手CBと3対2の状況を作る。垣田くんが大宮HV櫛引くんを引き連れ永遠くんは大宮HV河面くんと1対1。河面くんをなるべく自分に引き寄せて最高のパスを7番へと出した。
この瞬間、ゴール裏で見ていた私はちょうどキヨがシュートを打つのが正面に見えた。人生で何度あるか分からない時が止まったように思えた瞬間だった。
キヨに関してはレビューを書く前に区切りをつける意味で書いたモノがありますのでお時間ありましたらご覧ください。
最終兵器・ファンマ
同点となり大宮がCFファンマさんを投入した残り15分。支配率はほぼ変わらなかったが金沢が多くのチャンスを作り出す。(再びFootball LABより)
金沢はキヨが勝ちたい思いを込めてシュートを放った。垣田くんのヘッドも笠原くんに止められた。大宮も大前くんがミドルなどを放つが、中盤やサイドで無尽蔵のスタミナを誇る狩人・大橋くんのプレッシャーと金沢ディフェンスの囲い込みによるボールロストが増えていた。そこから2バック化していた大宮ディフェンスへのカウンター。しかし、金沢の攻撃もあと一歩、あと一つのプレーが出ない。
大宮は横浜FC戦の勝敗がどちらになろうとも、時間を考えると心が折れていてもおかしくない時間だった。それでも86:00ごろに三門くんと石川くんが執念で奪ったボールがファンマ→大前に渡るもシュートは枠を捉えられなかった。
茨田くんが足を攣らせる、垣田くんがボールに反応したくても足が出ない。お互い全てを出しきった末のドロー
試合終了・スタッツ
ボール支配率はいつもこんなもんですが、やはりシュートをこれだけ打っていて1点というのは寂しすぎる。セットプレーもいつもより多かったのにあわやという場面が見られませんでした。大宮はセットプレーに対して強いというのはデータであるのですが、それにしても精度を欠いていました。敵陣内でのプレー数がこれだけ多いのも珍しいです。それだけ大宮がリスクを承知で前がかりになっていたという事でしょう。
さて、ここまではいつものレビューですが、今節は最終戦。前編はこれでおしまいです。後編はこの試合で見えた足りないモノ、来シーズンに必要なモノを書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします!